附子はどんな生薬?附子を配合した漢方薬と効能とは

漢方薬には温める効果に優れた処方が多くありますが、その中でも「附子」はよく用いられる生薬です。漢方薬は体質によって使い分ける必要がありますが、附子は体の弱った人にも使うことができます。

一般的にはあまり耳慣れない「附子」とはどんな生薬なのでしょうか?附子の効能と副作用、配合された漢方薬についても紹介していきます。

附子とはどんな生薬?

附子はキンポウゲ科トリカブト(日本ではハナトリカブトまたはオクトリカブト)の子根を乾燥させたものです。トリカブトというと毒というイメージがある方も多いのではないでしょうか?トリカブトは有毒植物である一方で、美しい花を咲かせることで観賞用としても知られています。

主に中国・韓国・日本に生息している植物です。漢方では大きな母根を烏頭(ウズ)、その横に付いている小さな子根を附子(ブシ)といいます。狂言の話で附子を間違って食した者の顔が引きつって醜かったことから、「ブス」という語源になったとも言われています。

もちろん漢方薬に使うものは毒性を弱めたものであり、さまざまな薬効を持っています。附子を主薬として配合した処方のことを「附子剤」とも呼び、特に体力が低下したり、四肢が冷えてエネルギーが少ない人に対応します。

附子の効能・効果

附子には温める作用があり、新陳代謝を高めたり、利尿、強心、鎮痛、鎮静なども目的で漢方薬に配合されています。体の内部の意味をもつ「裏」まで「寒邪」が入り込んで、強い冷えを抱えているような人、冷えて体が弱っている人に対応する「温熱薬」としての役目をもちます。新陳代謝を高めて、血流を改善する効果もあり、冷えによる症状に対応します。

附子を主薬として配合した「附子剤」を用いる場合は、手足の強い冷え、体力の低下があるかどうかが判断の基準になります。他、附子には次のような様々な効能があります。

  • 虚弱体質の人の腹痛・下痢
  • 神経痛・関節痛
  • 代謝機能の低下
  • 遺精(性行為以外のときに無意識に精液が漏れる)

附子の副作用

生薬の附子を通常の量を摂取する限り、強い毒性が現れることはまずありません。しかし、体質に合わない場合や強く作用が出ることにより副作用が現れることはあります。例えば、動悸、のぼせ、舌のしびれ、悪心などの報告があるので、症状に気づいた時には早めに医師や薬剤師に相談するようにしてください。

附子を配合した漢方薬の使い方

附子を配合した漢方薬は非常にさまざまな種類があります。ここでは主薬として配合された「附子剤」の一部をご紹介します。

真武湯(しんぶとう)

附子剤の中でも最も代表的な漢方薬であり、冷えて体力が低下している人、冷えて下痢や腹痛のする人に向く処方です。真武湯は「水」の溜まった状態を改善する効果があり、めまいやふらつき、むくみがあるかどうかも使用する指標になります。風邪をひいて全身の衰弱が見られる場合や倦怠感が強い時、回復するエネルギーが足りない時にも対応します。冷えを伴う風邪、冷えによる下痢、めまいなど幅広く用いられる漢方薬です。

麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)

寒気や悪寒が強い風邪のときに用いられる漢方薬です。麻黄湯よりも体力が弱い人にも使用することができ、冷えて歯がガクガクと震えるような時に対応します。喉の痛み、頭痛、関節痛などの症状を緩和する効果もあります。主に高齢者や比較的体力がない虚証の人に用いられ、鼻水や冷え、倦怠感は数時間以内に改善することも多い即効性に優れた漢方薬です。

桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)

関節痛や神経痛、関節リウマチなどの疼痛があるときに用いられる漢方薬です。患部に炎症や熱などはなく、慢性的な痛みに対応します。麻痺やしびれがある場合にも用いることができます。体力があまりない人に用いられることが多い処方です。桂枝にも体を温める効果があり、気のめぐりを改善し、陽気の不足、水の滞りを改善する作用があります。服用後は発汗しやすくなるので、拭って体を冷やさないようにすることが大事です。

八味地黄丸(はちみじおうがん)

足腰の冷えや痛み、夜間頻尿、倦怠感、排尿困難から女性の更年期障害まで幅広く用いられる漢方薬です。陽が不足して冷えている状態を改善します。主に高齢者に用いられることが多いですが、腎陽虚のある婦人の更年期障害や不妊にも用いられる場合があります。腎の陽気の不足による水の滞り、全身の気の不足を改善してくれる漢方薬です。ただし、地黄が含まれているため、胃腸が弱い方は使用できない場合があります。

附子のパワーを取り入れて体の内部から元気を目指そう

体が弱ってしまった時、冷えきってしまった時など、冷えて体の不調が起きている場合には「附子」の出番です。附子はさまざまな漢方薬に用いられていて、特に体が弱った人や冷えの強い人でも使える温め作用に優れた生薬となります。附子を含む漢方薬はそれぞれに他の生薬との組み合わせで、効果や適応も違います。どんな漢方薬が適しているか見極めて、自分にあった漢方薬を活用してみましょう。体の内側から元気を取り戻したい時に漢方薬が力になってくれることでしょう。

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