パーキンソン病とは別の病気?大脳皮質基底核変性症の症状
大脳皮質基底核変性症という言葉を聞いたことありますか? 大脳皮質基底核変性症はパーキンソン病と症状が似ていますが、別の病気です。ここでは大脳皮質基底核変性症について解説します。
パーキンソン病の症状
パーキンソン病とは、脳の神経細胞に障害が生じることによって、体の動きに問題が生じる病気です。
本来であれば人間の体は、大脳皮質からの指令が筋肉に伝わることで動いています。スムーズに体を動かせるように運動調節の指令役を担っているものが、神経伝達物質であるドパミンです。パーキンソン病では、このドパミン神経細胞が壊れることで、ドパミンの生成量が減少して発症します。
パーキンソン病には特徴的な症状として、以下に示すものがあります。
無動
動きがすばやくできなくなる症状です。歩く時に足が出なくなったり、話し方に抑揚がなくなって声が小さくなったりします。
安静時振戦
何もしていないときに震えが起こる症状です。片方の手や足の震えから発生することが多いです。睡眠中は震えが収まります。1秒間に4~6回ほどの震えが特徴です。
筋固縮
肩、膝、指などの筋肉がかたくなり、スムーズに動かしにくくなります。顔の筋肉がこわばって無表情に感じられるようになり、痛みを感じることもあります。
姿勢反射障害
体のバランスがとりにくくなり、転びやすくなります。歩いていると止まれなくなり、方向転換するのが難しいなどの症状が特徴です。日本での有病率は10万人に対して100〜300人程度と言われています。
パーキンソン症候群とは
パーキンソン病と同様の症状を呈しながら、別の病院に関連している疾患をまとめてパーキンソン症候群と呼んでいます。
原因として脳血管性パーキンソニズム、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症などの変性疾患以外の疾患もありますが、特定疾患に認定されているのは進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症だけです。
パーキンソン病とは別の病気?大脳皮質基底核変性症とは
大脳皮質基底核変性症は名前のとおり、大脳基底核および大脳皮質の神経細胞が脱落し、タウ蛋白という異常なたんぱくが蓄積する変性疾患です。
そのため、大脳基底核の症状であるパーキンソン病様の運動症状と大脳皮質の症状の両者を併せ持つことが特徴となります。身体の左右一方に症状が出ることも特徴的ですが、典型的ではない症状が見られることもあり、診断が難しい場合も少なくありません。
根本の発症原因は不明であり、発症年齢は40〜80歳代が中心で、平均は60歳代であり、10万人あたり数人程度のまれな疾患とされています。アルツハイマー病や進行性核上性麻痺などでも同様の症状がみられます。発症に男女差はなく、一般的には遺伝しません。
大脳皮質基底核変性症の症状
大脳皮質基底核変性症の症状にはパーキンソン様症状、大脳皮質症状、認知機能障害があります。
パーキンソン様症状
多くの場合、大脳皮質基底核変性症ではパーキンソン病で出現するような以下のような症状が出現します。
・巧緻動作障害:指先の細かい運動が困難になる。
・安静時振戦:安静にしている時に手指の震えがみられる。
・固縮:筋肉が固くなり、手足が動かしづらくなる。
・歩行障害:転びやすくなったり、歩行の際に足が出しづらくなったりする。
大脳皮質症状
大脳皮質が障害されることによって、以下のような症状の出現も見られるようになります。
・筋肉の緊張の異常:手足に持続的に力が入って異常な姿勢を継続するジストニアや、腕を動かすときにぴくつきがみられるミオクローヌスなどが出現する。
・他人の手兆候:自分の意思とは関係なく、手が勝手に動いてしまう。
・半側空間無視:目は見えているのに、片方の空間を見落とす。
・失行:動きや感覚には問題がないのに、目的にあった動作や行動が行えなくなる。
・構成失行:描画、立方体の構成など空間的把握が困難になる。
・把握反射:手に触れたものを反射的につかむ
認知機能障害
症状は左右どちらかの手や足に出現し、次に同側の足や手に広がり、その後反対側の手足にも症状が出現するようになります。
初期に自覚しやすいのは、片方の手足の動きがぎこちなくなることや、動きの緩慢さなどです。加えて症状に左右差がみられます。
進行すると、構音障害、嚥下障害、眼球運動障害がみられることもあります。予後は悪く、発症から5〜10年ほどで寝たきりになり、誤嚥性肺炎や、寝たきりに伴う全身衰弱が死因の多くを占めます。そのため生命を脅かすような転倒・骨折、誤嚥性肺炎といった重大な合併症の予防が重要になってきます。
いかがでしたでしょうか。大脳皮質基底核変性症はパーキンソン病と似ていますが、実際は違う疾患となります。症状が似ているため、パーキンソン病と診断されてしまう人もいます。病気の進行を止める方法は、現在のところないため、対症療法が基本となります。少しでも合併症のリスクを下げるためにリハビリなども必要となってきます。