突然の蕁麻疹(じんましん)の多くは原因不明?症状を和らげる方法

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突然蕁麻疹ができて困ったことはないでしょうか。蕁麻疹ができると痒くて仕方がないという人も多くいます。ここではどのような原因で蕁麻疹が起こるのか、そして、蕁麻疹の症状を和らげるためにどのように対処すればよいのかについて解説します。

突然の蕁麻疹(じんましん)の約7割は原因不明?

蕁麻疹とはどのようなものなのでしょうか。なぜ蕁麻疹が起こってくるのか、何が原因になるのかについて解説しましょう。

ヒスタミンとの関係

蕁麻疹は皮膚の真皮層の浮腫です。皮膚は表皮層、真皮層、皮下組織の三相構造からなっています。

真皮層には皮膚の機能を保つ様々なものが存在しています。痛みや触った感じを感じるようなセンサーもありますし、血管も走っています。皮膚の細胞を作る元となる細胞も真皮の層にはあります。様々な構造があるので、真皮層は非常に密度の高い構造をしているのです。

この真皮層には、ヒスタミンという物質が含まれる顆粒が詰まった肥満細胞と呼ばれる細胞が存在します。ここに何らかの原因で刺激が加わると、肥満細胞の中からヒスタミンが出てきます。

ヒスタミンは、血管に作用することで効果を発揮します。ヒスタミンが血管に作用すると、血管は膨れ、中から血漿と呼ばれる血液の成分が血管の外に漏れ出てきます。密度の高い真皮の中に液体がどんどん溢れてきますからプクーッと膨れてきます。血漿自体は赤みを帯びていますから、蕁麻疹がおこっている場所も赤みを帯びてきます。

ヒスタミンが神経に作用すると痒みの症状が出てきます。蕁麻疹ができているところが痒くなるのはそのためです。

ヒスタミンの作用は長くは続きません。そのため突然体の一部に現れたと思うと、数時間で何事もなかったように消えてしまうのも特徴の一つです。

約7割は原因不明?

どのような原因で肥満細胞が刺激されてヒスタミンが放出されるのでしょうか。蕁麻疹の15%くらいは物理的刺激によるものです。汗によるものやアレルギーによるものが5%前後で、その他の原因によるものを合わせても3割に満たないのです。

ですのでほとんどの蕁麻疹の場合には原因がわからないということになります。

原因が分からないというのは厄介なもので、毎日のように症状が繰り返されることがあります。1か月以内に完全に症状がなくなるものを急性蕁麻疹、1か月以上出たり消えたりを繰り返すのを慢性蕁麻疹というように区別されています。

食品が原因になるケース

一般的にアレルギーを引き起こすような食品が、蕁麻疹の原因となることがあります。いわゆる5大アレルギー成分と呼ばれる小麦、そば、乳製品、卵、落花生などが原因となることが多いですし、その他にもエビやカニなどの甲殻類、青魚などの魚介類など様々なものが原因となります。

食品だけではなく食品添加物も原因になることがあるので注意が必要です。多くの場合、特定の食品を食べたら、数分から遅くとも1時間以内には症状が出てきます。体全体に広い範囲に蕁麻疹ができることも少なくありません。

皮膚への刺激が原因になるケース

皮膚に直接刺激が与えられることによって蕁麻疹が出てくることもあります。

物理性蕁麻疹と呼ばれるものは、摩擦や温熱、寒冷、日光や圧迫などの刺激が皮膚に加わることで蕁麻疹が現れてきます。この蕁麻疹の場合、触れている場所に症状が出てきやすいという特徴があります。

またコリン性蕁麻疹という蕁麻疹もあります。コリンというのはアセチルコリンのことで、アセチルコリンというのは汗を分泌する刺激を伝えるための伝達物質のことです。汗が出過ぎることによって、皮膚に刺激となり、蕁麻疹が出てくるのです。この蕁麻疹の場合、一つ一つの蕁麻疹の大きさが3~5ミリ程度と小さいのが特徴です。

ストレスが原因になるケース

人の体はもともと、体に毒素が溜まった時に発汗や排泄で体の外に出そうとする機能が備わっています。しかしその機能が何らかの原因で達成されないと、体に対するストレスとして反応し、皮膚の症状として蕁麻疹が出てきやすくなります。

蕁麻疹の症状を和らげる方法

では蕁麻疹が出てきたらどのように対処すればいいのでしょうか。症状を和らげるための対処法を紹介します。

蕁麻疹の原因になる食品や刺激を避ける

まずは蕁麻疹の原因となる食品や、刺激を避けるようにしましょう。

何が原因で蕁麻疹が起こるか分かっている場合には、その物質を避け、加えて体に対して刺激になるような食品を避けることも大事です。

具体的には動物性のタンパク質や油、チョコレートや辛いもの、アルコールなどは体への刺激となりますから、蕁麻疹をひどくしてしまう可能性があります。蕁麻疹が出ている時には避けるようにしましょう。

また皮膚に対して何らかの刺激があるような場合にはその刺激を避けることも大事です。汗が出ているのであれば丁寧に拭って、熱を持っているようであれば冷やしてあげましょう。

ストレスがある場合にはストレスを避け、また体自体がダメージを受けていると蕁麻疹が出やすくなりますからなるべく体を休めるようにしましょう。睡眠をしっかりとり、適切に休息をとることで体をストレスから守るようにしましょう。

内服薬を服用する

蕁麻疹の治療では薬を内服することも必要となってくることが多いです。先ほど説明したように蕁麻疹の原因としてヒスタミンという物質が関わっていますから、ヒスタミンの活動を抑えるような抗ヒスタミン薬の内服が必要となってきます。

また漢方薬も蕁麻疹に対して有効な場合があります。漢方の考え方では、蕁麻疹は水と熱のバランスが崩れた時に起こってくるとされています。十味敗毒湯(じゅうみはいどうくとう)という漢方薬は肌の水と熱のバランスを正常な状態に導く薬として、蕁麻疹に効果が認められることがあります。

市販の薬も活用できますが、原因が分からずに長い期間続いている場合などには、皮膚科を受診するようにしましょう。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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