腰が痛いのは大腸がんのせい?腰痛の原因になる内臓疾患
腰に痛みが生じたとき、原因としてまず思い浮かぶのは骨や筋肉、神経等の異常ではないでしょうか。中には、大腸がんをはじめとする内臓の病気によって腰痛が生じているケースもあります。ここでは腰痛の原因になることがある内臓疾患を取り上げ、症状の特徴について解説します。
大腸がんで腰痛になることも?
肺がんや胃がんなどさまざまな種類のがんがありますが、大腸がんはなかでも罹患率がもっとも高いがんの種類であり、男性の11人に1人、女性の13人に1人が生涯のうちに大腸がんと診断されているほど身近な疾患です。
大腸がんとは、大腸にできるがんのことであり、大腸とひとくちに言うことが多いですが、実はさまざまな部位が存在し、大腸の入り口である回盲部から順に盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、上部直腸、下部直腸、肛門管と別れています。
そして、大腸がんができる場所によっては腰痛の症状が出ることがあります。
一般的に、大腸がんの症状が腰痛として表れることはそう多くは見られませんが、長く続く腰痛症状には注意が必要です
大腸がんが疑われる腰痛の特徴
「体を動かしたときだけ痛い」、あるいは「同じ姿勢をしていると痛みが強くなる」など、痛いときと痛くないときの強弱がある場合は大腸がんの可能性は低いと考えられます。
動作や姿勢に関係なく腰痛が出る場合は、大腸がんが原因である可能性が否定できません。
また、腰痛症状だけでなく体重減少や血便、貧血などが見られる場合は、内臓に何かしらの問題が起きている可能性があります。
大腸がんで体重減少が見られることは多くありませんが、完全に否定できるわけではありませんので、腰痛に加えて体重減少など随伴症状も見られる場合は、体に何か異常が起きているサインと捉えて専門医を受診しましょう。
腰痛の原因になる内臓疾患
大腸がんに限らず、内臓疾患が腰痛の症状を引き起こすことがあります。代表的な疾患としては次のものが挙げられます。
急性膵炎
男女ともに比較的中高年に多くみられる急性膵炎は、年々増加傾向にあります。
「突然始まる激しい腹痛」が特徴で、重症化すると合併症を起こしてショック症状に陥ることもある病気です。
急性膵炎は、何らかの原因によって膵臓に炎症が起こってしまう病気です。
膵臓は胃の裏側に位置し、血糖調節ホルモン(インスリン・グルカゴン)・膵液の消化酵素を分泌する働きを持っています。
消化酵素には、アミラーゼ(デンプン分解)・リパーゼ(脂肪分解)・トリプシン(タンパク質分解)があり、本来はその消化酵素が膵臓自体を消化しないように安全に機能していますが、何らかの原因によって正常に機能しなくなると、膵臓の消化酵素は異常に活性化して膵臓そのものを消化してしまうのです。
その結果、膵臓に炎症が起き、腹痛・吐き気、腰痛などのさまざまな症状が出現します。
急性膵炎が起こった場合は、絶食して肝臓を休ませ、薬物療法で水分補充・炎症改善・消化酵素分泌抑制などを行います。
重症化すると、炎症は膵臓だけにとどまらずに肺・腎臓・肝臓などへも影響を及ぼす場合があるため、早めに適切な治療を行うことが大切です。
日本における急性膵炎の発症は、年々増加傾向にあり、女性より男性に多く、その比は約2倍であり、発症年齢では女性70歳代・男性60歳代の方が多いことがわかっています。
急性膵炎の症状
急性膵炎で最も多い症状は、上腹部の痛みですが、膵臓は胃の裏側に位置しているため、背中の痛みや腰痛を訴える方もいます。
非常に強い痛みが突然現れるのが特徴ですし、食後に痛みが現れる場合もあり、胃痛だと自己判断してしまうケースもあるので注意しましょう。
その他の症状としては、多い順に嘔吐・発熱・食欲低下・腹部の張り・全身のだるさなどがあり、状態が悪化すると、重症化して周囲の臓器へも炎症が進み、黄疸・意識障害・ショックなどを引き起こして、全身状態悪化の危険もありますので注意が必要です。
これらの症状がある場合は、自己判断せずに早めに受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
腎盂腎炎
腎盂腎炎とは、腎盂や腎杯さらに腎実質が細菌性によって炎症を起こしている状態です。
主な原因として細菌が膀胱から尿の流れとは逆行性に侵入することによって生じる感染症です。
いわゆる腎盂と呼ばれる部位は、腎臓と尿管の接続部分のことを指します。本来であれば、健康な人は膀胱から尿管、腎盂には細菌そのものが存在しません。しかし、何らかの原因で尿路に細菌が侵入して炎症を起こす場合があります。
細菌の侵入経路で、もっとも多いのは尿道の出口から侵入した細菌が尿の通り道である尿管を遡って腎盂に達して起こるケースと言われています。
稀に、血管を通って血行性に腎臓領域に感染伝播することもあります。
原因菌となるのは主に大腸菌、緑膿菌などグラム陰性桿菌と腸球菌が多いです。そのなかでも、特に大腸菌による感染が約9割にも達します。
統計では、腎盂腎炎は女性に多く発生する傾向があります。理由としては、女性の方の場合には大腸菌などが存在する肛門と尿道の距離が近いこと、そして尿道が男性と比して物理的に短いことなどが考えられます。
一般的には腎臓で作られた尿は腎杯を経由して腎盂に集まり、さらに尿管から膀胱へと流れていきますが、通常は無菌状態です。
ところが、腎盂腎炎では膀胱炎の後に起こることが多く、多くは左右対にある腎臓のうち、片方に細菌が繁殖して起こります。
急性腎盂腎炎と慢性腎盂腎炎
腰痛や発熱などの症状を呈して、急激に発症し、臨床症状や炎症所見が強いものを急性腎盂腎炎と診断します。
一方で、比較的症状が軽く微熱や食欲不振などが主症状であるため経過が長く続くものを慢性腎盂腎炎と呼びます。
慢性腎盂腎炎は目立った症状がないことも多いですが、腰痛を自覚するケースもあり、進行すると慢性腎不全に移行することもあるために注意が必要です。
子宮内膜症
子宮内膜症は、本来なら子宮の内腔にしか存在しないはずの子宮内膜組織が子宮内腔以外の場所に発生し、増殖することによって発症し、主に女性ホルモンの作用によって引き起こされると考えられています。
また、初潮時期が早い、妊娠回数が少ない、性周期が短いなど、月経を経験する回数が多い方ほど子宮内膜症の発症率が高くなると指摘されています。
主な症状としては、早期の段階では月経中を中心に下腹部の痛みが強くなり、進行すると周囲の組織と癒着を引き起こして月経痛が悪化するのみならず、慢性的な腰痛や下腹部痛、性交時の痛みなどが出現します。
胃潰瘍
胃潰瘍は、胃の粘膜に炎症が起きている状態を指しています。
健康な方の場合、胃酸や消化酵素から胃を守るための物質が産生されていますが、胃を守る力が弱まったり胃酸の量が増えたりすると胃がダメージを受けて炎症を起こしてしまって胃潰瘍を発症します。
特に、胃潰瘍が背中側にできた場合は、腰痛の症状が出る場合があります。
まとめ
これまで、腰が痛いのは大腸がんの可能性があること、そして腰痛の原因になる内臓疾患などを中心に解説してきました。
大腸がんと聞くと、腹痛や下血など腹部症状を想像される人が多いかも知れませんが、大腸がんでは、ほかにもさまざまな症状が見られます。
腰痛は日常的に見られることも多く、見過ごされてしまうことが多くあり、特に大腸がんの前兆を見逃さないために注意したいのが腰痛です。
腰痛は大腸がんだけでなく、胃潰瘍、子宮内膜症、急性膵炎、腎盂腎炎などほかの内臓の病気でも起こりますので、腰痛症状が長引く際には適切な医療機関を受診するように意識しましょう。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。