脂質異常症「低HDLコレステロール血症」のリスクと対策

血液中の脂質は一定の量に保たれるようにバランスが取られていますが、食事から摂取される脂質の量が多かったり、身体の中で上手に脂質を処理できなくなったりすると基準値から大きく外れた状態になってしまいます。

ここでは脂質異常症の中でも特に低HDLコレステロール血症を取り上げ、リスクと対策について解説します。

脂質異常症の種類と基準

血液中の脂質の値が基準値から外れた状態を脂質異常症と呼んでおり、その中にはLDLコレステロール（悪玉コレステロール）、HDLコレステロール（善玉コレステロール）、トリグリセライド（中性脂肪）の血中濃度測定値の異常があることが知られています。

日本動脈硬化学会では、近年増え続けている動脈硬化性疾患の予防を目的とした脂質異常症の診断基準、治療方法などを含めてガイドラインを提示しており、脂質異常症の診断基準値はスクリーニングのために行い、空腹時採血を原則とするとされています。

脂質異常症の基準を確認しましょう。

高LDLコレステロール血症

ガイドラインによると、採血結果にて、LDLコレステロールが140mg/dL以上の場合に「高LDLコレステロール血症」、120～139mg/dLの場合に「境界域高LDLコレステロール血症」と考えられています。

低HDLコレステロール血症

低HDLコレステロール血症は体の中の脂質のバランスがくずれる脂質異常症のひとつであり、採血の検査でHDL40mg/dl以下を低HDLコレステロール血症と診断します。

これは、生活習慣病の代表格ともいえるメタボリックシンドロームの診断項目のひとつにも含まれていて、HDL値が低くても特に症状がでないため、採血をして初めて診断することができます。

低コレステロール血症の原因は原発性と続発性の大きくふたつに分類されていて、原発性というのは生まれつきのもの、続発性は成長してから発症した病気によるものや生活習慣によるものなどが考えられます。

多くは続発性にふくまれますが、HDL20mg/dlなど極端に数値が低い場合には原発性の可能性があります。

高トリグリセリド血症

トリグリセリドとは、肉や魚・食用油など食品中の脂質や、体脂肪の大部分を占める物質であり、その構成成分である脂肪酸は、動物性脂肪では飽和脂肪酸が多く、バターやラードのように常温では固体として存在します。

中性脂肪そのものは、人にとって重要なエネルギー源であり、脂溶性ビタミンや必須脂肪酸の摂取にも必要不可欠な要素ですが、過剰に摂取すると体脂肪として蓄えられて肥満を招き、さまざまな生活習慣病を引き起こします。

採血結果にて、トリグリセライドが150mg/dL以上の場合に高トリグリセライド血症と診断されます。高トリグリセライド血症は、血液の中の中性脂肪の量が基準より多い状態です。

低HDLコレステロール血症のリスクとは

コレステロールは人の体内に存在している脂質であり、タンパク質などと結合してリポタンパク質として血液中に溶け込んでおり、そのリポタンパク質のひとつにHDL（High Density Lipoprotein、高比重リポタンパク）があります。

HDLによって血中を運搬されるコレステロール成分をHDLコレステロールといい、HDLコレステロールは血管や末梢組織に蓄積した余剰コレステロールを引き抜いて肝臓に運搬して最終的に糞便として排泄する役割を担っています。

体内に溜まったコレステロール成分を肝臓に運ぶ代謝的な役割を持つ観点から、HDLコレステロールは善玉コレステロールとも呼称されています。

基準値の範囲はそれぞれの医療機関や医師の見解によって異なることもありますが、基本的には40mg/dlより値が少ないと低HDLコレステロール血症であり、中性脂肪が高い人や運動不足の人などに多い脂質異常症の状態であると考えられています。

通常では、男性に比べて女性の方が約10mg/dL程度多い値を示すことが多いですが、HDLコレステロールが100mg/dL以上と著明に高値になると心血管系疾患の発症リスクが上昇することが判明してきました。

一方で、特に、脂質異常症の中でも要注意だと認識されているのは、低HDLコレステロール血症の場合です。

低HDLコレステロール血症が認められる際には心筋梗塞や脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などの動脈硬化に関連した疾患を引き起こします。

動脈硬化性疾患は一度発症すると日常生活に支障が出るのみならず総死亡数の約2割強を占める重篤な病気です。

低HDLコレステロール血症の対策

低HDLコレステロール血症を改善するには、食生活、運動習慣、禁煙が重要になります。

食生活を見直す

食事療法では、総カロリー数を適正値に抑える、野菜や果物を多く摂取するよう心がける、肉類を控えて青魚を摂取するようにする、悪玉コレステロールが高い場合には、卵・マヨネーズ・レバー・すじこなどを控えるなどが挙げられます。

また、中性脂肪が高い場合には、炭水化物やアルコールを控えることが重要です。

食事では栄養バランスを考え、コレステロールを控えた食事を摂取する必要があります。例えば、豚肉、牛肉、バター、チーズ、卵黄、チョコレート、マヨネーズ、魚卵、レバー、揚げ物などを過剰に摂取することは控えましょう。

青魚、野菜、海藻類、大豆製品、豆腐、果物などは積極的に摂取しましょう。

洋食よりも和食中心の食事がおすすめですが、和食中心の食事は塩分量が多くなりやすいので、その点は注意してください。

運動を取り入れる

脂質異常症は治療できる病気ですが、長期間継続的に生活習慣を改善し続ける必要があります。特に、持続的に運動するよう求められます。

例えば、ウォーキング・ジョギング・水泳といった有酸素運動を1回につき30分以上、週3回から4回行うよう推奨されています。

禁煙する

日本心臓財団によれば、コレステロール値が高い場合や脂質異常症と診断された際には、動脈硬化に関連する疾患を予防するために日々の生活習慣の改善をすることが推奨されています。

具体的には、禁煙することをはじめとして、過食に注意する、適正体重を維持する、アルコールの過剰摂取を控えるなどが勧められます。

まとめ

これまで、脂質異常症の種類と基準、特に低HDLコレステロール血症のリスクと対策などを中心に解説してきました。

脂質の中には、コレステロール・リン脂質・中性脂肪・遊離脂肪酸の4種類があり、どれも身体に欠かせない重要な物質です。

コレステロールは細胞膜を構成したり、ホルモン・胆汁の原料になったりします。中性脂肪は体温を保持したり、クッションの役割をしたり、エネルギーを貯蔵したりするものです。

脂質異常症は、そのコレステロールと中性脂肪が異常に多い状態を指します。脂質異常症の予防方法としては、生活習慣を改善することが最も効果的です。

脂質異常症は、食事から摂取される脂質の量が多かったり、身体の中で上手に脂質を処理できなくなったりすることで発症します。

普段の食生活からバランスの良い食事を心がけ、メタボリックシンドロームにならないよう注意しましょう。

また、アルコールや喫煙は控え、普段から運動する癖をつけておくことも大切です。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。