お酒を飲んだ後の背中の痛みの原因は？アルコール筋症の特徴と対処法

お酒を飲んだあとに起こる筋肉痛のような痛みは、アルコール筋症の可能性があります。ここではアルコールが筋肉に与える影響や、アルコール筋症の症状の特徴を確認し、アルコール筋症にならないための対処法を紹介します。

お酒を飲んだ後の筋肉痛…アルコール筋症とは

アルコール筋症は急性型と慢性型に大きく分けられていて、飲酒後すぐに症状が表れる急性型では筋肉の破壊や壊死が起こることで強い筋肉痛や腫れが生じ、筋力の低下が見られます。また、急性型は下痢や嘔吐をきっかけに発症するケースもあります。

一方、飲酒後の著しい筋肉痛や筋力低下などは見られないものの、慢性型のタイプでは徐々に筋肉の萎縮が進み、筋力が低下する他、こむら返りなどが認められます。

これらの症状の多くは、急性型、慢性型のいずれにおいても腕や脚の付け根あたりに左右対称に表れるのが特徴です。

筋肉が障害を受けると、筋肉に含まれるミオグロビンというタンパク質が尿に排出され、尿が茶褐色になることが知られています。

アルコールが筋肉にダメージを与える

アルコール筋症は、アルコールによって筋繊維がダメージを受けた時に起こる症状です。

筋肉は、たくさんの筋繊維という繊維でできていて、その筋繊維がアルコールによってダメージを受けて、破壊されてしまうのです。

アルコールによる筋肉へのダメージが起こる原因として、主にビタミン不足、ミネラル分の異常、アルコールが分解されて体内で生成されるアセトアルデヒドによる影響などが考えられます。

特に毎日お酒を飲んでいる方は生じるリスクが高まるため注意が必要です。

長期に渡ってのアルコールを摂取していると、著しい筋力の低下や筋肉痛を実感することはなくなってきます。

この場合には、筋力低下と筋の萎縮が慢性的に起きていて、これを慢性アルコール筋症と呼んでいます。

アルコール筋症の症状の特徴

アルコール筋症は、アルコールにより筋繊維が破壊されることで起こる症状であり、お酒を飲んだ翌日に筋肉痛のような痛みが生じます。

筋肉痛のような痛みのほか、筋力低下・むくみ・圧痛が生じる場合もあります。

アルコール筋症の症状としては、ジムでハードな筋力トレーニングを行った後の筋肉痛のような感じになり、アルコールによって筋繊維が破壊されるために引き起こされます。

ただし、アルコール筋症に伴う症状は、筋力トレーニングによって起こる筋肉痛とは大きく違います。筋肉トレーニングの場合は、回復後に筋力の向上や筋肉量の増加が期待できますが、アルコール筋症で筋肉が傷ついた場合にはこうした効果はありません。

運動後に感じる筋肉痛は、慣れない運動やトレーニングによって傷ついた筋繊維を修復する際に起こる炎症反応によるものです。運動をした数時間～数日後に発生し、筋肉が熱を持っているように感じたり、痛みのある部分が腫れたりします。

これに対して、アルコール筋症では、筋肉の痛みの他に筋力低下や脱力感をおぼえることがあります。特に身体の中心部に近い筋肉に、左右対称の症状が現れやすいのが特徴です。また、アルコール分解によってタンパク合成ができなくなった事による損傷のため、筋肉が痩せることもあります。

アルコールを摂取すると、筋力低下とともに筋痛、血中へのミオグロビンの溶出、筋繊維

の部分的壊死などが起こるといわれています。

アルコール筋症の対処法

アルコール筋症の対処法を紹介します。

お酒を飲み過ぎない

アルコール筋症の予防法としては、お酒を飲みすぎないことがシンプルな解決方法になります。

お酒による筋肉痛にならないためには、多量飲酒を控えることが大切です。お酒をたくさん飲む人や毎日飲んでいる人は、筋繊維が損傷し、アルコール筋症のリスクが高まります。お酒を長年飲んでいる人もアルコール筋症になりやすいです。

身体を健康に保つためにも、多量飲酒を控えて休肝日を設けるのをおすすめします。

水分を十分にとる

お酒による筋肉痛にならないためには、水分を多めにとることも大切です。

お酒の間に水をチェイサーとして挟むと、お酒を飲むペースを下げられるうえに体内のアルコールを分解しやすいような状態を整えておくことができます。

また、アルコールをスムーズに分解したいときは、胃腸を整えるはたらきが期待できる湯冷ましを挟むのもおすすめです。

悪酔いするとお酒による筋肉痛だけでなく、二日酔いも生じやすくなります。

ビタミンB1を摂取する

ビタミンB1を多く含む食材もお酒による筋肉痛の予防に効果的です。

ビタミンB1を多く含む食材には消化促進作用があり、摂取することでアルコールによって乱れた胃腸の状態を整える効果が期待できます。なお、ビタミンB1は冷奴・枝豆・豚キムチ・レバニラなどさまざまなおつまみに含まれています。

お酒を飲む機会が多い方は、ビタミンB1を多く含む食材を使ったおつまみを取り入れるとよいでしょう。

たんぱく質を摂取する

お酒による筋肉痛の改善には、たんぱく質を多く含む食材が有効です。たんぱく質を多く含む食材をとることで、筋肉を作る際に必要な栄養を補い、筋肉の回復をスムーズにする効果が期待できます。

たんぱく質を多く含む食材として代表的なのは、肉・卵・納豆・豆腐・無脂肪牛乳などです。

たんぱく質を多く含む食材は、筋肉の回復効果を高めるだけでなく、二日酔いの軽減にも効果が期待できます。

腹部・背中の激痛は急性すい炎の可能性も

アルコールを摂取した後の身体の痛みの原因は、アルコール筋症のほかにもあります。中でも注意が必要なのが急性すい炎です。

急性すい炎は、アルコールの過度な摂取など何らかの原因によって膵臓に炎症が起こる病気です。

急性すい炎を引き起こす原因で最も多いのは、アルコールの大量摂取です。アルコール摂取による膵臓への直接刺激・膵液（消化酵素）の過剰分泌・膵管の狭窄などが主な要因です。

通常、膵臓は胃の裏側に位置し、血糖調節ホルモン（インスリン・グルカゴン）・膵液の消化酵素を分泌する働きを持っています。

消化酵素には、アミラーゼ（デンプン分解）・リパーゼ（脂肪分解）・トリプシン（タンパク質分解）があり、本来はその消化酵素が膵臓自体を消化しないように安全に機能しています。

しかし、何らかの原因によって正常に機能しなくなると、膵臓の消化酵素は異常に活性化して膵臓そのものを消化（自己消化）してしまう結果、膵臓に炎症が起き、腹痛や背中の激痛、吐き気などのさまざまな症状が出現します。

急性すい炎が起こった場合は、アルコール禁酒、絶食して膵臓を休ませて、薬物療法で水分補充・炎症改善・消化酵素分泌抑制などを行います。

重症化すると、炎症は膵臓だけにとどまらずに肺・腎臓・肝臓などへも影響を及ぼす場合があるため、早めに適切な治療を行うことが大切です。

日本における急性すい炎の発症は年々増加傾向にあり、アルコール性急性膵炎は男性に多いことがわかっています。

まとめ

これまで、お酒を飲んだ後の身体の痛みの原因、アルコール筋症の特徴と対処法などを中心に解説してきました。

お酒を飲みすぎて、体が筋肉痛を起こしたように痛くなる、あるいは腕や足などが痛かったりだるくなったりするのは、アルコール筋症によるものかもしれません。

アルコール筋症は、お酒によってカラダの筋肉の筋繊維が破壊されることで起こるため、筋肉痛のような痛みを感じてしまうのです。

飲酒によって起こるアルコール筋症に備えるためにも、多量飲酒を控える、水分を多めにとることなどを意識しましょう。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。