アレルギー?ヘルペス?唇が腫れる原因と要注意の病気

アイキャッチ 口唇ヘルペスに悩む女性
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唇はもともと顔の中でも少し腫れぼったい部分ですが、度を超えて腫れてくることがあります。アレルギーやヘルペス、血管浮腫など原因は様々です。それぞれどのようなものなのでしょうか。そして、注意しなければならないのはどのような場合でしょうか。詳しく見ていきましょう。

唇が腫れる原因

アイキャッチ 口唇ヘルペスに悩む女性

唇が腫れる原因には様々なものがあります。唇が腫れると、見た目も気になりますし、常に口に違和感を覚え、話しづらかったり、食事をしづらかったりなど不便なことも起こってきます。

もちろん、唇を噛んでしまうなどして傷がつき、腫れてくることはよくあります。しかしそのような外傷が全くないのに唇が腫れてくることもあります。いくつかの原因があるので確認しましょう。

アレルギー

よくあるものとして、何らかの抗原に対するアレルギー反応があります。口は様々な物質に接する場所ですから、日常の何気ないもので急にアレルギー反応が起こってくることがあります。食べ物や化粧品、金属やアルコールなどがよく原因になります。

アレルギーによる唇の腫れの特徴としては、下唇に多いということがあります。あまり気にはしませんが、下唇の方がものに当たりやすいようです。もう一つ特徴的なのが、腫れ以外の症状です。アレルギーの場合には、強いかゆみがあることが多いです。時々しびれを訴えることもあります。

普段はアレルギーがなかったとしても、ストレスや体調不良で免疫が低下した時にアレルギー反応を生じることがあります。疲れて体力が低下しがちな時に腫れてきた場合には、アレルギーであることを考慮した方がいいでしょう。

アレルギーの場合、腫れは時間の経過とともに収まってきます。抗ヒスタミン薬に代表されるアレルギーの薬を内服することによって、回復が認められることが多いです。しかし時々激烈なアレルギーとなり、アナフィラキシーと言って呼吸困難や血圧低下を起こすことがあります。

口唇ヘルペス

口唇ヘルペスは、ヘルペスウイルスが再活性化することによって起こってくる病気です。一度ヘルペスウイルスに感染すると、体の中に潜伏し続けて何らかのきっかけで再び活動を開始します。

症状としては、小さな水ぶくれが唇に多発します。水ぶくれは赤みを伴い、触ると痛みが生じるのが特徴です。潰れると中から液体が出てきます。

ヘルペスウイルスの感染ルートは、直接接触するほか、タオルや食器類などを介して感染が広がります。唇の粘膜にウイルスが接触して感染し、体内に侵入して、神経細胞の根元のところに感染し、そこに潜伏します。そして強い疲労を感じたり、免疫力が低下した時にウイルスを押さえつけることができなくなり、ウイルスが増殖して症状が起こってくるのです。

多くの場合、口唇ヘルペスの発症や再発には前駆症状があります。数分から数時間にわたって、唇周囲にピリピリするような感じが出てきます。痛みやほてりなどを感じることもあります。これらの前駆症状が出現してから半日程度で水ぶくれができてきます。

こうした経過中ずっとウイルスが増殖し続けますから、なるべく早い段階からウイルスの増殖を抑える薬を使用することによって、症状がひどくなったり長引いたりするのを抑えることができます。

血管浮腫(クインケ浮腫)

血管浮腫は、クインケ浮腫とも呼ばれます。クインケ浮腫というのは蕁麻疹の一種で、まぶたや唇など顔の一部が腫れる疾患のことを言います。腫れ方には個人差がありますが、唇だけが腫れるとしても、一部分だけが腫れる場合もあれば、全体が大きく腫れることもあります。

ただし、唇は腫れるだけで、それ以外の症状はあまりありません。つまり、痛みや痒みがないのです。痛みやかゆみがなく唇が腫れているだけという場合には、クインケ浮腫を強く疑います。

一度唇が腫れると、1時間以内に最もひどい状態になります。その状態で経過を見ているとだんだんと良くなってきて、数時間程度でひき始めます。中には、元に戻るには時間がかかり、数日ほど経ってから症状が収まることもよくあります。

蕁麻疹ですから、繰り返すことがあります。繰り返すような場合には、アレルギーを抑える抗ヒスタミン薬を定期的に内服することによって症状を抑えることができます。

クインケ浮腫には先天性と後天性のものがあります。先天性のものは、タンパク質の一種であるC1-インヒビターの遺伝子に変異がある場合におこってくるものが多いです。この場合、成人する前に発症することが多く、繰り返すことが多いです。

一方、後天性の場合はアレルゲンとの接触や、外傷、温度差などの刺激が原因で発症します。これらの刺激に加え、何らかの原因で免疫力が低下している時に起こりやすいとされています。

肉芽腫性口唇炎

肉芽腫性口唇炎は、急に唇が腫れてゴムのように硬くなったり、舌や顔面に麻痺したような症状を感じたりした時に疑う病気です。この腫れは、発生するのは急ですが、なかなか引かず慢性的に唇が腫れてしまいます。

他の症状として、顔の神経の麻痺や顔の腫れをきたします。腫れてくるのですが、痛みがないのが特徴です。また下唇よりも上唇に発生することが多いです。発症年代は基本的には成人となります。

また再発を繰り返すのも特徴です。

原因はまだはっきりとわかったものはありません。虫歯や歯周病、扁桃炎など、何らかの感染症によって刺激を受け続けることによって発症するということも考えられていますが、そうでない場合もあり、よく分かっていません。

光線性口唇炎

光線性口唇炎は、唇に太陽から紫外線の刺激が加え続けられることによって起こってくる病気です。光が当たりやすい下唇に多く起こります。皮膚の最外層である表皮にあるケラチノサイトが日光により損傷を受けることによって発症します。

蓄積によって発生しますから、若い頃に発生することはまずありません。概ね40歳以上で、色白の人に多くなります。

唇が腫れるだけではなく、細胞が異常になっていることを反映してザラザラした様子になってきます。また乾燥してうろこ状になるのも特徴です。裂け目やびらんが見られることもあります。

唇の腫れで要注意の病気とは?

唇が腫れてきた場合、まず注目するべきはどれぐらいの経過で唇が腫れてきたかということです。数分以内に一気に腫れてきた場合には、アレルギー性のものが考えられます。このような場合、急速に進行してアナフィラキシーを起こすこともありますから、息苦しさや動悸など、体の異常を示すような症状が見られた場合にはすぐ病院を受診しましょう。

腫れているだけではなく、水ぶくれができるような場合には口唇ヘルペスの可能性が高くなりますから、早いうちに抗ウイルス薬を内服するのがいいです。病院を受診しなくても、薬局でも薬は売っていますので、早めに内服するようにしましょう。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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