高血圧の方におすすめの漢方薬9選と対処法
まず血圧の定義をしておきましょう。心臓から、栄養や酸素を全身にくまなくゆきわたらせるために、いきおいよく血液が送り出されています。このとき、血管にかかる圧力を血圧といい、健康な人の標準は、最高血圧(心臓収縮期)が一二〇(ミリ)、最低(心臓弛緩期)が八○です。
一般に高血圧とよばれるのは、最高一六〇をこえ、最低が九五以上のものですが、この数値は年齢によって違ってきます。なお、血圧は一日の間でも上下し、季節の変わり目にはとくに動きやすいです。
目次
高血圧の症状
ふつう、高血圧というだけでは無症状です。だが、起床時に後頭部が重く感じられるような頭痛、ちょっとした階段を上がるにも動悸(どうき)や息切れがする、疲労したときにめまいがするといった症状があれば、高血圧のことが多いです。
血圧が高いと、動脈の負担が大きくなって、早めに動脈硬化を起こしやすく、脳では脳卒中、心臟では狭心症や心筋梗塞(しんきんこうそく)、腎臓では尿毒症を起こしやすいです。いずれも、死に至る率の高い病気だけに注意しなければならず、早期治療が必要になります。
原因
九〇パーセント以上を占めるのが、体質的に血圧が高いものです。これを、本態性(ほんたいせい)高血圧症といいます。
次に、からだの中の血圧を高める病気(腎臓病・糖尿病・ホルモンのアンバランスなど)が原因となる場合があり、これを二次性高血圧症といいます。
二次性のものは、原病を治療するのが先決で、むやみに降圧剤などを使ってはいけません。
また、食塩のとりすぎ、酒・タバコなどの中毒、寒冷、強度の精神興奮なども血圧を上げます。これらのものによって、末梢血管が縮むために、心臓はムリに血液を送ろうとして、血圧が高くなるのであります。なお、血圧は寒冷時に生理的に上昇します。冬、注意を払わなければならないわけです。
現代医学の治療では、本態性のものには一般的に血圧降下剤を用います。しかし、その服用をやめるとまた元の高い数字にもどったり、薬の副作用も起きます。また、血圧が高いなら高いなりに保っていた、全身のバランスをくずしてしまうこともあります。
漢方でからだ全体の調子をととのえる
漢方のほうは、バランスを保ちながら、体質を改善させようということに主眼をおきます。からだ全体の調子をととのえ、気分がよくなるので、自覚症状も好転するというわけです。薬方は降圧剤ではないから、血圧の数字はそんなに下がらないこともありますが、気分さえよくなれば、さほど心配する必要はありません。
ただし、高血圧に漢方薬を使用する場合は、このあとで述べる食養生と生活管理を正しく守り、医師と相談のうえで行わなければならないのはいうまでもありません。
高血圧に効果的な漢方薬9選
大柴胡湯(だいさいことう)
体力があって、やや肥満し、みぞおちから肋骨にかけて抵抗があり(いわゆる漢方的胸脇苦満(前述参照))、肩こり・便秘があり、胸苦しいものに処方します。
大柴胡去大黄湯(だいさいこきょだいおうとう)
上の症状で、便秘しない人に。
三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)
上より体力は充実せず、胸元があまりかたく張っていない人で、みぞおちがつかえ、神経がたかぶり、不眠、のぼせて顔色が赤く、つねにイライラして落ちつきのない人に。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
中肉の筋骨タイプで、胸苦しく、動悸がしたり、神経症状の強い人によいです。
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
いわゆる太鼓腹の肥満型で、便秘がち、脈も腹も充実している人によく使われます。
黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
虚実の中間で、気分がイライラし、頭痛・めまい・のぼせ・耳鳴りがあって、不眠という人に効きます。
半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
虚証タイプで、胃腸が弱い、胃内停水があるという人に用いられます。
釣藤散(ちょうとうさん)
朝起きたとき頭が重く、気分がすぐれず、よく物忘れする老人によい処方。
八味丸(はちみがん)
老人で、疲れやすく、顔色もすぐれず、下肢にむくみがあったり、腰が痛んだり、夜は尿が近く、のどが渇き、手足がほてるものに使います。ただし、この処方を用いる場合は、胃腸が弱くないことが条件です。
日常生活・食生活の注意点
この病気は、勝手な自己診断を避け、必ず医師に相談しなければなりません。その指導は、日常生活のコントロールと食養生です。
日常生活で気をつけることは、すべて急激な生活を避け、じゅうぶんな睡眠と休養をとることです。過労・夜ふかし・セックス過度・タバコの吸いすぎ・酒の飲みすぎなどを避けなければいけません。冬は保温に注意します。とくに、嗳房の効いている室内からトイレに入るときが危険で(しかも、大便でいきむのもよくないです)、トイレの中をあたためておく必要があります。また、便通をととのえることも重要です。
食事療法
その要点を述べておきましょう。
①過食しないように気をつます。とくに、ふとりすぎの人は注意しなければいけません。
②動物性脂肪はとりません。脂肪分は植物性のものでとるようにします。タンパク質は必要だが、これは大豆や大豆製品、動物性のものでもせいぜい魚貝類で補うようにしたいです。
③食塩に注意します。一日の制限量は七グラムです。
④新鮮な野菜やくだもの類を豊富にとります。これは便通をととのえるためにも意義があります。
⑤主食はできるだけ玄米に近いものにします。少なくとも五分づき米か、七分づき米に麦三〇パー セントを加えたものに。そば、黒パンでもよいです。
⑥海草類を毎日少量ずつでも食べます。
民間療法
コンブ二〇~四〇グラムをこまかくきざみ、水に一晩つけ、その水を飲み、やわらかくなったコンブを食べるのがよいといわれます。
クコの葉をお茶がわりに連用するのもよいです。ただし、これは血圧を下げるわけではなく、からだの調子をととのえるためです。柿の生の葉一〇グラムを煎じた汁も、同じような効果をもちます。