不整脈の治療法の種類を解説…薬物療法・カテーテル・ペースメーカー

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不整脈は、心臓を正常に拍動させるために必要な電気刺激系統に異常が生じることで脈が一定でなくなる病気です。

不整脈の中には経過観察で問題ないタイプもありますが、治療が必要な不整脈であると診断された場合には適切な治療を受けることが大切です。

不整脈の治療法は薬剤を使った薬物治療と薬以外による非薬物治療のふたつに大きく分類されます。ここでは不整脈の治療法について詳しく解説します。

経過観察

経過観察ができる不整脈か、それとも心臓に問題が認められ積極的な治療が必要な不整脈かは精密検査をして判断します。

積極的な治療介入が必要かどうかの判断は、心室細動など命に直結する危険な不整脈であるか、弁膜症などの併存疾患を有しているか、失神などの自覚症状を合併していないかなどを考慮して決定されます。

日常生活において特記すべき自覚症状も認めず、心機能も良好であり不整脈の出現頻度も少なければ経過観察する場合もあります。実際、不整脈を指摘されてもほとんどのケースでは治療が不要で経過観察できることも比較的多いです。

過度のストレスや生活習慣の不規則な乱れが直接的な原因であると考えられれば、医師は経過観察の期間を通じてそれらを一つずつ改善するように働きかけます。また不整脈の根本的な原因としてホルモン機能異常や電解質のバランス異常などがあれば別途治療を実施することになります。

薬物治療

不整脈による症状が頻回に現れている場合には、一般的に薬物治療が行われます。

薬物治療は徐脈・頻脈・期外収縮のどのタイプの不整脈治療にも用いられ、主に抗不整脈薬や安定剤が処方されます。

抗不整脈薬は定期的あるいは症状が出現したときに頓服(症状に応じて服用すること)で服用します。ただし、抗不整脈薬の処方によって新たに別の不整脈が催される可能性があるため、注意が必要です。

また、過度のストレスや不安感が強いために不整脈症状が引き起こされると考えられる方の場合、安定剤を処方して症状が軽快することもあります。

心房細動は無症状のケースでも脳梗塞を合併する危険性が他の不整脈に比べて高いことが懸念されています。脳梗塞を予防するために、抗血栓薬や抗凝固薬を処方することもあります。

カテーテル・アブレーション治療

カテーテル・アブレーション治療(別名:心筋焼灼術)は、日本ではおよそ10年前から本格的に実施され始め、現在では年間1万例以上施行されているほど普及しています。

抗不整脈薬を服用しても不整脈発作症状を抑制することができない人が同治療の主な対象です。それ以外にも、不整脈による自覚症状が顕著である、不整脈によって心機能低下や心不全などを合併する、薬を飲まないで根治治療を目指したい、頻脈をきたす原因部位が明らかである、といった場合に実践されることがあります。

カテーテル・アブレーション治療では、X線で観察しながらカテーテルと呼ばれる細い管を太股の付け根や鎖骨付近に走行しているアクセス血管から挿入し、不整脈の発端原因と考えられる場所まで進めてその部位を熱で焼いて焼灼壊死させます。

不整脈の種類にもよりますが、カテーテル・アブレーション治療では心臓組織のごく小さな部分だけを焼灼して心臓機能そのものにはほとんど影響を与えませんので、通常であれば3~5日で退院できます。

ペースメーカー治療

意識消失など強い症状を認める徐脈性不整脈では、ペースメーカーをはじめとする医療専用デバイスを用いた治療が考慮されます。

ペースメーカーとは、心臓の外部から電気刺激を機械的に与えることで心臓の正常な拍動を促進させる医療機器装置のことです。ペースメーカーを植込むことで最低限の必要心拍数を確保することができます。

通常、徐脈と呼ばれる不整脈は心臓を動かす刺激伝導系システムの中で電気信号が規則正しく発生せずに、電気の通り道が適切に機能しないことが原因で起こります。人工的なペースメーカーを植込むことによって電気信号を補って徐脈を改善させます。

従来はペースメーカー装置本体を前胸部皮下に植込んで、静脈経由で心臓に留置したリードと接続する治療法が主流でした。

近年では、リードレス・ペースメーカーの臨床試験が開始されています。これはペースメーカー装置を小型化して心臓に直接本体を植込むもので、電線リード線を必要としないのが特徴です。

植込み型除細動器治療

心室細動や心室頻拍などをはじめとする突然死の危険性が懸念される頻脈性不整脈に対しては、植込み型除細動器(略称:ICD)を取り付ける治療法があります。

植込み型除細動器治療は不整脈自体を予防できるものではありませんが、いわゆる致死的な不整脈を検知して停止させることによって心臓突然死を回避することを可能とします。心臓に自動的に電気的除細動を与えることによって突然死を予防できる優れた医療装置として知られています。

植込み型除細動器には、皮下に直接リード線を植込むことができる最新のタイプと、経静脈を経由して植込む従来のタイプの2種類があります。

皮下植込み型除細動器(略称:S-ICD)は、血管内にリードを挿入せずに前胸部の皮下ポケットに除細動リードを植込みます。これによりリード線が断線しにくく、また、経静脈的皮下植込み型除細動器で課題となっていたデバイス感染率やリード抜去時の危険性の軽減が期待されています。

不整脈の対策に役立つ生活習慣の改善

不整脈の対策に役立てるために、次に紹介するような生活習慣の改善をおすすめします。

ストレスをためない

不整脈のなかには、実はストレスが誘因になっているケースがよくあります。

心臓のリズムをコントロールしているのは交感神経であり、例えば緊張したり興奮したりすると、だれでも脈が速くなります。

このことは、交感神経が心臓の拍動を速め、血液を大量に送り出すためです。

自律神経の一つである交感神経は、ストレスの影響を受けやすい傾向があります。

適度のストレスは交感神経を刺激し、「やる気」を起こしますが、強いストレスがかかり、長期間にわたるストレスがあると、交感神経がうまく働かなくなり、心臓のリズムに乱れが生じやすくなります。

不整脈を誘発するストレスは、日々の忙しさによる疲労や睡眠不足、食生活の乱れなども含まれます。

もし不整脈を繰り返すような場合には、休みをきちんととっているか、睡眠不足になっていないか、食事は規則正しく、バランスのよいものをとっているかなど自分の生活習慣を見つめなおしてみましょう。

働き過ぎ、悩み事、睡眠不足などは自律神経のバランスを崩して不整脈を起こしやすくしますので、普段からできるだけストレスをためないよう心がけましょう。

喫煙・飲酒を控える

喫煙は不整脈を引き起こすといわれています。

喫煙によって血中に入ったニコチンは、交感神経と副交感神経の両者に作用し、交感神経に有意に作用すると、心拍数と血圧が上昇し、同時に期外収縮など不整脈が誘発されます。

また、アルコールの代謝産物のアセトアルデヒドという物質は交感神経を活性化させるので脈拍数は上がります。

飲酒に伴って、脈拍数が上昇する時間は、数時間から長い場合は24時間程度とされています。

つまり、アルコールを大量に飲んだ場合や連日飲酒した場合は、最大で24時間程度脈拍数の上昇が持続する可能性があります。

高血圧、糖尿病、肥満などの生活習慣病だけでなく、喫煙、アルコール多飲などの心臓に負担をかける要素が複合的に合わさって不整脈が起こる場合もあるのです。

カフェインをとりすぎない

カフェインは脈拍を増やす交感神経を刺激するため、それにより動悸を感じることがあります。

カフェインは体を覚醒させるため、非常に人気がありますが、カフェインを過剰に使用すると、心臓の機能に影響を及ぼします。

カフェインは、アドレナリンの分泌を刺激し、心臓を強く早く収縮させるため、動悸、イライラ、不安感、心拍数の増加などの症状が現れることがあります。

成人における適切なカフェイン摂取量は1日に400ミリグラムを超えないことが重要で、これは1日に3~4杯のコーヒーに相当します。

人によってはカフェインを摂取することが不整脈の出現に繋がることがあるため、そういった方の場合はカフェインを控えることが望ましく、過度なカフェインの摂取は心房細動など不整脈の原因となりますので控えましょう。

運動はしても大丈夫?

適度な有酸素運動は、体重を減らして、自律神経のバランスも整えてくれます。運動習慣のない方は30分程度のやや早歩きの散歩程度でも一定の健康効果が期待できます。

適度な運動は、不整脈を有する方でも一般の方と同様に有益であるといわれていますが、体に負担がかかり過ぎて脈が速くなりすぎると心臓の状態が悪くなることがあります。

いつもより脈が速く、しんどさや倦怠感を感じるときは、脈が落ち着くまで運動を休止してしばらく安静にするようにしましょう。

まとめ

医療技術進歩によりほとんどの不整脈疾患が治癒可能な時代になっています。

生活の質を低下させず、かつ突然死などを回避するためにも不整脈の種類や重症度を評価し、必要な場合には適切な治療を行うことが大切です。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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