しゃっくりはなぜ出る?止め方と病気との関連
多くの人が、しゃっくりが止まらなくて困ったという経験を一度はしたことがあるでしょう。しゃっくりが止まらなくて検索をしている最中の人もいらっしゃるかもしれません。しゃっくりはどのようなメカニズムで起こり、どうすれば止まりやすいのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
<h2>しゃっくりはなぜ出る?
しゃっくりは医学的にどのように考えられているのか、どのようなメカニズムなのかを確認しましょう。
吃逆(きつぎゃく)とは
吃逆というのは、しゃっくりを指す医学用語です。吃逆は、胸部と腹部を分ける横隔膜という膜が急速に収縮するとともに、同時に声帯が閉鎖することで、空気の流入が阻止される現象です。自分の意志とは関係なく、反射的に起こるものです。
吸気と同時に声帯が閉鎖するために、ヒックという音が出ることが多くなっています。この音の中でも最初の「ヒッ」という音は、声帯が急に閉じようとする時の振動音で、「ク」の音は、声帯が閉じて息が止まった時の音であると考えられています。
一説によれば、生物が陸に上がってエラ呼吸から肺呼吸に切りかわる過程において、肺に水が入らないように気管に蓋をする仕組みの名残ではないかといわれています。
しゃっくりが出るメカニズム
しゃっくりが出る原因には、延髄にあるしゃっくり中枢が大きな役割を果たしています。慌てて食べたり、何らかの病気によって刺激が喉に伝わると、舌咽神経という神経が反応します。この神経は喉に分布する神経で、喉の感覚を伝える役割を担っています。
舌咽神経が刺激を脳のしゃっくり中枢に伝えると、しゃっくり中枢からは、横隔神経を刺激して横隔膜を収縮する命令を出す一方で、迷走神経という神経を通して声帯を閉じるように同時に命令します。これによってしゃっくりが起こるのです。
ただし、この反応は刺激によってすぐに起こるわけではありません。常に同じような刺激は起こっていますから、簡単に反応してしまうと常にしゃっくりが起こってしまいます。そのため普段はGABAと呼ばれる神経伝達物質がしゃっくり中枢に働きかけ、しゃっくり中枢が簡単には反応しないようになっています。
GABAの刺激よりも強い刺激が入ってくると、しゃっくり中枢が働いてしゃっくりが起こってきます。一度しゃっくりが起こるとなかなか止まりにくいのも特徴です。
GABAによる抑制が働きにくくなる条件としては、飲酒や薬の内服などが挙げられます。また、子供は大人に比べてGABAによる抑制が働きづらいため、子供はしゃっくりが起こりやすくなります。
しゃっくりの止め方
しゃっくりは基本的には自然に止まりますから、様子を見ていれば大丈夫です。しかし、しゃっくりが出ていると不都合なこともあるでしょう。そんな時のためのしゃっくりの止め方を紹介します。
深呼吸をする
まずは横隔膜の痙攣を止めるために、ゆっくり呼吸してみることをおすすめします。ゆっくりと5秒数えながら息を吸って、ゆっくりと5秒数えながら息を吐きます。その後に、大きく息を吸い込んで10秒から20秒程度止めてから、ゆっくりと息を吐き出します。これを繰り返すことによって横隔膜がだんだんと痙攣しなくなり、しゃっくりが止まることが多いです。
水を飲む
水を飲むことは、よく知られたしゃっくりの対処法です。特に冷たい水を飲むのが効果的と言われています。理由ははっきりとは分かりませんが、冷たい水を飲むことで舌咽神経が刺激され、しゃっくりを止めるような情報が伝達されるのではないかと言われています。
ただし、しゃっくりをしてる最中に水を勢いよく飲むとむせてしまうことがあります。ゆっくりと飲むことがポイントです。
舌を引っ張る
舌を引っ張るという方法もあります。これもなぜしゃっくりが止まるのかということははっきり分かっていませんが、水を飲むのと同じように神経を刺激することによってしゃっくりが止まるのではないかと言われています。
薬を飲む
しゃっくりを止めるのに、一部の薬が有効な場合があります。昔から使われている薬として、柿のヘタを煎じた漢方薬である柿帝湯(シテイトウ)があります。この薬は子供も利用可能です。
他の有効な漢方薬としては筋肉の異常収縮を抑える芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)や半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)などがあります。
しゃっくりと関連のある病気
最後に、異常なしゃっくりについて解説します。しゃっくりのほとんどは特に問題のないものですが、まれに病気の症状としてしゃっくりが出てくることがあります。
このような場合には、なかなか止まりにくい、あるいは非常に頻回にしゃっくりが起こるという特徴があります。2時間以上止まらない場合や、毎日のようにしゃっくりが出て困る場合には一度病院を受診しておくとよいでしょう。
脳・神経の病気
しゃっくりは舌咽神経としゃっくり中枢によって起こるものですから、これらの神経やしゃっくり中枢が刺激されるような、脳や神経の病気がある場合にはしゃっくりが起こってきます。例えば、脳腫瘍や、脳梗塞などの脳血管障害などです。
これらの病気によってしゃっくりが起こっている場合には、神経が直接刺激されているので、しゃっくりがなかなか止まりにくいという特徴があります。
肺の病気
横隔膜を直接刺激する場合にも、しゃっくりが止まらない場合があります。肺炎や肺がん、その他周囲の腫瘍など、横隔膜を刺激するような場所に何らかの病変があると、しゃっくりがよく起こる場合があります。
特に胸水が貯留している場合には、体勢によって横隔膜の刺激される度合いが変わってくるのが特徴で、しゃっくりの出方に差が出る場合があります。
胃腸の病気
横隔膜を下から刺激するような、お腹の中の病気でもしゃっくりが起こってくることがあります。有名なのは、肝臓に膿瘍と言って、膿の塊ができる場合に横隔膜が刺激されやすく、しゃっくりが止まりにくくなります。
他には食道がんや胃食道逆流症、胃拡張、胃潰瘍、胃がん、肝炎、肝がん、胆嚢の病気などでしゃっくりが起こってくることがあります。