こめかみを押すと痛いのはなぜ?考えられる原因と病院を受診する目安
こめかみを押したときに痛みを感じたという経験はありませんか?
こめかみを押すと痛くなる原因にはさまざまなものが考えられます。こめかみの痛みの原因と、病院を受診するかどうかの目安について詳しく見ていきましょう。
こめかみを押すと痛いときの原因
頭痛、神経痛、眼精疲労、歯痛など、こめかみの痛みの原因はさまざまです。
片頭痛
片頭痛はみなさんも聞いたことがあると思います。頭痛の中でもよくある頭痛となります。片方の頭のこめかみの辺りがズキンズキンと痛みます。
原因ははっきりとはわかっていませんが、脳の中で神経が圧迫され、脳の血管が急に拡張することで起こるのではないかと言われています。若い女性に多い病気であり、月に1回程度、繰り返し症状が出ます。
また、気圧の変動や環境の変化、寝不足や心理的なストレスから来ることも多く、吐き気を伴うこともしばしばです。また、音をうるさく感じたり、光を眩しく感じたりするなど、感覚が過敏になり、まれに脱力やしびれがみられます。
緊張型頭痛
緊張型頭痛も頭痛の中では多いです。多くの場合肩こりがひどくなった頭痛のようなものとなります。人の背中には僧帽筋という筋肉があります。僧帽筋の上の頂点が後頭部にあり、両側の頂点が肩甲骨に、下の頂点が脊椎に付着しています。
肩こりはこの僧帽筋が緊張することで障害を受け、痛みを感じる状態となります。主に肩こりやストレスが強くかかった場合などの筋肉の血流の悪化によって痛みます。
筋肉の障害がひどくなってくると、筋肉の上の頂点である後頭部まで筋肉が損傷を受け、痛みを感じます。その結果、頭痛が起こります。この頭痛の場合は、ストレッチをして筋肉をほぐしたり、鎮痛薬を内服することで症状が軽快することが多いです。
群発頭痛
群発頭痛は特に20〜40代の男性に多く見られます。どちらか片方の眼の奥がえぐられるような激痛が起こります。眼の充血、涙や鼻水が止まらないほどの症状を伴うこともあります。自殺頭痛という別名もあるほどの激痛です。
症状は1~2か月間ほど毎日のように起こり、この期間を群発期と呼びます。夜間や明け方など、決まった時間に発生することが多くなります。群発期が終わると数か月から数年にわたって痛みがない時期が続きます。
三叉神経痛
三叉神経とは名前の通り神経が3つに分かれます。その3つの神経が顔の皮膚、口の中の粘膜、歯と歯茎の感覚を司ります。このエリアのどこかに、ビリッとくるような瞬間的な激痛を起こす病気が三叉神経痛です。
三叉神経痛は、血管によって三叉神経が圧迫されることで発症リスクが高くなります。痛みが激しくなると食事がとれなくなることがあり、日常生活に支障をきたします。食事や会話、歯磨きをしたり、風が当たったりすることで痛みが誘発されます。
眼精疲労
眼精疲労もこめかみを押すと痛い原因となります。デスクワークで目が疲れてくると、眼の奥が痛くなってきて、こめかみを押さえると楽になるという経験をした方も少なくないはずです。
側頭筋の筋肉痛
昔の方はよくせんべいなど固いものを食べる機会が多かったですが、現代ではなかなか固いものを食べる機会が少なくなっています。こめかみには側頭筋という筋肉がありますが、固いものを噛み続けるなどした場合、筋肉痛によって痛みが生じることもあります。
脳の病気
症状が頭痛単独ではなく、意識障害や手足の麻痺、言語障害、血圧上昇、嘔吐など他の症状が見られる場合は、脳腫瘍や脳出血、くも膜下出血、髄膜炎・脳炎などの脳の疾患が疑われます。このように頭痛以外の症状もみられた際は、すぐに病院を受診しましょう。
帯状疱疹
帯状疱疹は、身体の中に潜んでいるヘルペスウイルスの一種、水痘・帯状疱疹ウイルスによって起こります。
主に子どもの頃にこのウイルスに初めて感染すると、水ぼうそうを発症します。そして、水ぼうそうが治った後も、ウイルスは脊髄から出る神経節という部位に潜んでいます。普段は体の免疫力によってウイルスの活動が抑えられているため発症することはありませんが、免疫力が低下するとウイルスは再び活動、増殖し始めます。
60歳代を中心に50~70歳代に多くみられる病気ですが、過労やストレスが引き金となり若い人に発症することも珍しくありません。症状としては、片側の前額部からこめかみにかけて鋭い激痛を感じます。痛みから数日遅れて疼痛部位に一致した発疹がみられます。発疹が改善しても痛みが残存する場合があります。
歯痛
虫歯や歯肉の痛みがこめかみの痛みを引き起こす場合もあります。特に奥歯の痛みが原因となる場合が多く、上下左右いずれの歯でも起こりえます。
すぐに痛みが治まる場合は一過性の炎症の可能性もありますが、痛みが続く場合は早期に治療を行う必要がある場合もあります。こめかみの痛みとともに奥歯が痛い場合は、歯科受診をしましょう。
病院を受診するかどうかの目安
こめかみを押して痛むときは、マッサージをしたり、温めたりすることで、こめかみの痛みを軽減できることがあります。このようにマッサージをしても改善しない場合や、頭痛の症状が持続する場合は、病院を受診して詳しく検査をしましょう。
片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛などの一次性頭痛は「何となく頭が痛いかな」から頭痛が始まります。しかし「何時何分から痛くなった」「この作業をしているときに痛くなった」や、有名なのは「ハンマーで殴られたような頭痛が突然した」など、発症時期が明確な突然の頭痛は危険です。脳動脈瘤が破裂してくも膜下出血を起こしている可能性や、動脈解離を起こしている可能性が考えられるからです。
こういった発症時間が明確な突然の頭痛を感じたときは、様子をみて病院受診しようとせずにすぐに救急車を呼んだり、近くの総合病院へかけこむなど早急な対応が必要となります。
その他にも嘔吐、手足のしびれ・麻痺、言語障害(呂律がまわらない、言葉が出てこない)などを伴う頭痛が見られる場合も脳腫瘍や脳出血、くも膜下出血、髄膜炎・脳炎などの脳の疾患が疑われます。すぐに総合病院を受診しましょう。
<執筆・監修>
九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師
九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。
日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。