目の奥の頭痛の原因と対処法…眼精疲労や群発頭痛の可能性も?
目の奥が痛くなることありませんか? どこかはわからなくて、深部の痛みがある場合、目の奥が痛いように感じることがあります。目の奥の頭痛の原因と対処法について見ていきましょう。
目次
眼精疲労が原因の場合
屈折異常、老視、眼位・眼筋異常、ドライアイなどが原因となって眼精疲労が起こります。また、パソコンなどのディスプレイを使った長時間の作業によるVDT症候群でも眼精疲労が起こります。
ピント調節の役割を持つ毛様体筋という筋肉に負担がかかることで次第に近くにピントが合わなくなり、その結果、目が疲れる、目の奥が痛い、見えにくいといった症状が出てきます。
眼精疲労の対処法
適切な眼鏡が使われていないことが原因となることもあるため、自分の目の度数にあった眼鏡を使用することが大切です。
特に老眼がある中年以降は、見たいものの距離に合わせて眼鏡を使い分けることが必要になります。目の筋肉をほぐして血流を良くするために目を温めるのも効果的です。また、目の周りには、たくさんのツボがあります。指で押した時に周囲よりも少しへこみ、押すとやや痛みを感じるのがツボです。
目のかすみに効く「太陽」(こめかみの下の少しくぼんだ部分)、目の奥が痛んだりかすんだりする時に聞く「晴明」(目頭の左右のくぼみ、鼻の付け根の横側)、目の疲労感や痛みに効く「攅竹」(眉頭の内側で目の上の骨縁の少しへこんだ部分)のツボをマッサージすることで眼精疲労が軽減することがあります。
ドライアイが原因の場合は点眼薬で目の乾燥を防いで、潤いを与えたり、ビタミンの点眼や内服を行ったりすることもあります。
群発頭痛が原因の場合
群発頭痛は慢性頭痛のうちのひとつとされています。慢性頭痛としては主に片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛に分かれます。
群発頭痛はこの3つの中でも発症率が特に低い頭痛となっており、有病率は0.056%から0.4%程度(1000人に1人程度)と報告されています。特に20~40代の男性で多く見られます。
群発頭痛はどのような症状なのでしょうか。群発頭痛では、どちらか片方の眼の奥がえぐられるような激痛が起こります。眼の充血、涙や鼻水が止まらないほどの症状を伴うこともあります。自殺頭痛という別名もあるほどの頭痛で激痛です。
症状は1~2か月間ほど毎日のように起こり、この期間を群発期と呼びます。群発期が終わると数か月から数年にわたって痛みがない時期が続きます。
群発頭痛の診断基準項目は5つあり、その内容は以下の通りです。
① ②③④に合う発作が5回以上ある
② 左右どちらかの眼の周囲や側頭部に15分から180分続く激痛が生じる
③ 次のいずれかあるいは両方を頭痛の時に認める
・頭痛が起こる同じ順に、目の充血、流淚、鼻づまり、鼻水、眼瞼のむくみ、額と顔の発汗、額と顔の紅潮、耳閉感、瞳孔の縮小、眼瞼の下垂の1つ以上を認める
・じっとしていられない、もしくは激しく動きたくなる感じ
④ 群発期(発作が起こる期間)の半分以上で発作が1日あたり0.5~8回起こる
⑤ 他のどの診断基準より合致する
この診断基準に合致する場合に群発頭痛と診断します。①から④のうち1項目だけ合致しないが他の頭痛には合致しない場合に、群発頭痛の疑いと診断します。
群発頭痛の対処法
治療は主に2種類あります。ひとつは痛みが出てから症状を抑えるもの、もう一つは痛みが強くなるのを予防する方法です。
群発期の治療
高濃度の酸素吸入が昔から有効とされています。酸素を吸入することで80%の方で改善が見られたという報告があります。
一番手軽な治療法としてはリドカインという表面麻酔薬をスプレーで鼻粘膜に散布する方法です。これは30%くらいの方で改善がみられます。
同様の方法として片頭痛で保険適応になっているスマトリプタンの点鼻を発作時に痛い方と反対側の鼻孔にスプレーする方法があります。
同様のスマトリプタンの自己注射があります。この有効率は高く、注射後5分くらいから効果がでますので群発頭痛の激痛から逃れる最も有効な方法となります。
また、頭痛発作が激烈な初期の2週間くらいに限り、神経や脳血管の腫れをとる作用を持つ副腎皮質ホルモンを併用することもあります。
群発頭痛の予防
神経細胞膜の安定化作用のあるベラパミル塩酸塩(ワソラン錠)や、大脳皮質の過敏性を抑える効果のあるバルプロ酸ナトリウム(デパケン錠、セレニカ錠)などを患者さんの症状に合わせて適宜処方します。
できる限り群発頭痛のリスクを下げるためには、アルコールの摂取を控えることが有効です。また、熱いお風呂やサウナ、辛い食事、激しい運動なども控えましょう。
自律神経のバランスを崩さないように毎日できるだけ決まった時間に起床、就寝するなど、規則正しい生活を心がけることが基本となります。
発作が起こりそうになったら、窓を開けて深呼吸を繰り返しましょう。痛むところを冷やすことで多少痛みが和らぎます。それでも我慢できない場合は、病院を受診しましょう。
片頭痛が原因の場合
脳の血管が急に拡張することで起こる頭痛です。気圧の変動や環境の変化、寝不足や心理的なストレスから来ることも多く、ズキンズキンといった拍動性の頭痛となります。
多くは頭やこめかみなど目よりも上の範囲に現れますが、目の奥に痛みを感じる方も少なくありません。片頭痛は大人に多く、男性よりも女性の割合が多く見られます。
また、前兆がみられることもあり、目の前にキラキラとした光が見える閃輝性暗点がみられることもあります。
片頭痛の対処法
片頭痛への対処法としては、暗い静かな部屋で安静にすることと、冷やすことです。片頭痛は体を動かすと痛みが助長されます。そのため、できるだけ安静を保ち、外部からの刺激をなるべく避けるようにしましょう。また、痛む部位に冷たいタオルや保冷剤などで冷やすと痛みが緩和されます。
治療薬としては、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの鎮痛薬が有効であり、その他にも急性期治療薬としてトリプタンなどもあります。漢方薬も有効であり、五苓散(ゴレイサン)や呉茱萸湯(ゴシュユトウ)の同時投与も有効です。
片頭痛が起こらないように予防することも大事です。生活習慣の乱れが原因で頭痛が発生することが多く、頭痛を引き起こしやすい生活習慣(睡眠不足やカフェイン、頭痛薬の過剰摂取など)を見直すことが大きな対策になります。
目の奥の頭痛の原因になるその他の疾患
これまでに取り上げたもの以外にも、目の奥の頭痛の原因になる疾患があります。
急性緑内障発作
何らかの原因により目の中の水(房水)の流出路である隅角と呼ばれる部分が狭くなることで眼圧が上昇して、急性の緑内障発作が起こることがあります。
発作が起こると目の奥の痛みや頭痛、吐き気などが主症状として現れます。中には光を見た時に虹色の輪(虹輪視)が見えたり、全体が白っぽく(霧視)見えたりする方もいます。急性緑内障発作は、緊急で処置を行わないと最悪の場合失明に至ってしまう危険な発作となっています。
眼窩蜂窩織炎
怪我などから細菌感染し、炎症が起こる状態を蜂窩織炎といいます。その状態が眼窩に起きているのが眼窩蜂窩織炎です。
目の周囲にある筋肉や神経などの組織が菌に侵されるのが主な原因ですが、副鼻腔炎や虫歯などが原因で生じる可能性もあります。
思わず目を閉じてしまうほどの強い痛みや強い充血、視力の低下などが主症状ですが、白目の部分がむくんでブヨブヨになったり、ひどいケースでは発熱や吐き気などが現れることもあります。
視神経炎
視神経が何らかの原因で炎症を起こすことを視神経炎と言います。主な症状は視力の低下と目の痛み、目の一部から徐々に見えなくなる視野欠損などがあります。視神経炎に見られる目の痛みは、目を動かそうとした時に起こるのが特徴で、目の奥が痛いと表現する人も多くいます。
感染性眼内炎
細菌やウイルスなどが眼内に侵入して起こるのが感染性眼内炎です。目から直接感染するだけでなく、別の臓器に感染した細菌やウイルスが原因で発症することもあります。
目の奥の痛みや充血、目やにの増加などが主な症状ですが、飛蚊症と言われる視野の中で小さな虫やゴミが動いているように見られる症状が見られる人もいます。細菌性の場合は進行が早いため、放っておくと失明に至ってしまう可能性もあります。
いかがでしたでしょうか。目の奥が痛いと心配になりますよね。これまで見てきたようにさまざまな原因が考えられます。失明に至る可能性もある疾患もありますので、頻回にある方は一度医療機関を受診することをおすすめします。
<執筆・監修>
九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師
九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。
日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。