大人なのに夜になると熱が出る!考えられる原因と注意点

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夜になると熱が出て、一晩寝て朝起きたら熱がすっかり下がっていた。このような経験を誰でも持っているのではないでしょうか。

夜になるとなぜ熱が出るのでしょう? これは異常な反応なのでしょうか? ここでは、夜になると熱が出る原因について詳しく見ていきましょう。

何℃からが発熱?

一般的に37.0℃以上を発熱と考えている方が多いですが、日本人腋窩温で平熱が37℃台後半を示す方も少なくなりありません。また、体温は日内変動や性周期による変動があり、測定部位や測定機器の影響も受けるため、一概に何度以上が発熱で、何度未満が平熱と定義することは困難です。

しかし、日本の感染症法では37.5℃以上を発熱、高熱は38℃以上と定義されています。そのため、37.5℃を目安に自分の平熱と変化を把握しておくのがよいでしょう。

夜になると熱が出る原因

発熱のメカニズムは大きく炎症性とストレス性の2種類に分けられます。下記に詳しく原因を挙げて見ていきましょう。

心因性発熱

心因性発熱は1900年代から存在しており、ひとつの疾患として認識されていたものの、風邪による発熱とのメカニズムの違いが解明されていませんでした。

しかし、近年では風邪による発熱とまったく異なるメカニズムで生じることがわかっており、心因性発熱の場合、細菌やウイルスとは無関係に起こるストレス性の体温上昇となります。

主に交感神経の亢進による褐色脂肪細胞の熱産生によって生じると考えられています。交感神経の亢進の原因となるストレスにもさまざまな種類がありますが、特に緊張を引き起こすストレスが原因となります。主な要因としては職場や家庭での人間関係、過重労働が挙げられます。

心因性発熱は性別や年齢を問わず、子供から高齢者まで起こる可能性があります。慢性的に微熱程℃(37〜38℃)の高体温が続く場合と、特定のイベントに反応して高熱(40℃近く)が出る場合があります。

心因性発熱には解熱剤は効きません。解熱鎮痛剤にはプロスタグランジンE2を作り出す酵素であるシクロオキシゲナーゼの産生を阻害する作用があります。しかし、心因性発熱ではプロスタグランジンE2は関係していないため、解熱鎮痛剤を内服しても効果がみられないのです。

風邪

一般的に風邪は、細菌やウイルスが体内に感染することによって引き起こされます。風邪にかかった際、人の体内でまず、マクロファージという免疫機能が動きます。マクロファージは白血球の一種で、体内に侵入したウイルスや細菌と闘うために、サイトカインという物質を放出します。

サイトカインが免疫機能を活性化させることで、免疫細胞は次々とウイルスや細菌を倒していきます。サイトカインは免疫機能の活性化以外にもさまざまな作用をもたらします。そうした作用の一つが発熱です。

サイトカインは、脳の血管内皮細胞のサイトカイン受容体に作用し、プロスタグランジンE2という発熱のメディエーターとなる物質の生産を促します。プロスタグランジンE2が脳にある視床下部視索前野に信号を送り、EP3受容体に作用すると、熱産生反応が亢進し、放熱反応が抑制されるため体温が上昇します。これが風邪の発熱のメカニズムです。

風邪には解熱鎮痛剤の効果が期待できます。それは、解熱鎮痛剤のシクロオキシゲナーゼの産生を阻害する作用が、風邪の際のサイトカインやプロスタグランジンE2の産生を抑制するのに働くからです。

関節リウマチや膠原病

関節リウマチは、免疫機能の異常が原因となります。外部から体内に侵入してきた細菌やウイルスなどを攻撃して破壊し、それらを排除する働きが免疫です。

しかし、この免疫に異常が生じると、誤って自分自身の細胞や組織を攻撃してしまいます。それによって炎症が起こり、関節の腫れや痛み、関節の変形、発熱、倦怠感などを引き起こします。女性がかかりやすく、30〜50歳代で多く発症します。倦怠感も強く出るので、夜間に日中の疲れが出て発熱することもあります。

関節リウマチは、関節が破壊され、変形して動かなくなっていきます。そのため、早期に発見して適切な治療を行うことで、症状をコントロールして関節破壊の進行を防ぐことが重要となります。

手首と指の関節が持続的に痛みや腫れを生じる、朝起きたときや昼寝をした後に手指がかじかんだような動かしにくい感じを生じる、肩・肘・膝・足首など大きな関節が多発性に痛みや腫れを生じる、こういった症状が見られる場合は、医療機関を受診して詳しく調べてもらいましょう。

尿路感染症

尿路とは、尿が作られて排出されるまでにたどる、腎臓、尿管、膀胱、尿道のことをいいます。尿路感染症とは、尿の通り道である尿道口からさかのぼって菌が侵入し、体内で繁殖する感染症の総称です。侵入した菌が繁殖する場所によって病名が異なり、膀胱炎、尿道炎、腎盂腎炎などがあります。

尿路感染症は、尿道が短いため、男性よりも女性の方が多いです。症状が進むと、疲れのたまる夜間に発熱することがあります。原因となっている細菌を特定し、抗菌薬を一定期間用いる治療を行います。

がん

がんを発症していると、体に疲れが溜まりやすくなります。そのため、1日の疲れが出る夜間に発熱するケースもあります。また、がん自身が発熱成分を出して発熱することもあります(腫瘍熱)。倦怠感や食欲不振、気分が悪くなる、体に痛みが走る、不正出血などの症状が持続する場合には、一度医療機関を受診して、相談してみるのもよいでしょう。

夜に熱が出たときの注意点

夜に発熱したけれど病院に行くほどではない場合には、適切な対処で悪化を防ぎ、回復を図ることができるでしょう。基本的な対処法を確認しておきましょう。

身体を温めるべきか、冷やすべきか

発熱で体温が上がっていくとき、寒気やふるえを感じます。寒いときには部屋を暖かくして、毛布などで身体を温めるようにしましょう。一方、体温が上がって暑くなってきたら、掛け物を薄くしたり、部屋の温度を少し下げたりして、熱が体にこもらないように調節しましょう。また、汗をかいたら、濡れたままにせずに下着等をこまめに替えましょう。

発熱に伴う不快感を軽減したり、涼感を得るために、氷枕や冷却ジェルシートなどを活用することはいいと思いますが、冷たさを不快に感じるようであれば、無理に使用する必要はありません。冷やすことが解熱につながるわけではないので、必要以上に冷やすことは避けましょう。

こまめに水分を補給する

発熱時は脱水に注意する必要があります。水分が不足すると汗をかいたり熱を尿に出したりできなくなり、熱がこもりやすくなります。さらに、高齢者の場合は発熱、嘔吐、下痢があると1〜2日程度で脱水症に陥ることもあるため、こまめに水分を補給することが必要となります。

入浴は避ける

ぐったりしていて動きたくないときには、体力のさらなる消耗を抑えるために、入浴は控えた方がようでしょう。入浴によって脱水症状が進行することもあるので、その点にも注意が必要です。それなりに元気があり、さっぱりしたいときなどには、短時間の入浴やシャワー浴などで汗を流すのはよいでしょう。鼻詰まりがあるときには、湯気を吸い込むことで鼻通りがよくなるなどのメリットもあります。

消化の良いものを食べる

おかゆやうどんなど消化の良いものをゆっくりとよく噛んで食べましょう。卵、豆腐などを入れてタンパク質を補い、白菜や人参などの野菜を柔らかく煮たりして栄養をとりましょう。また、リンゴなどの果物をすりおろして食べるのもよいでしょう。無理に食べる必要はありませんが、水分補給はしっかりと行なって、食べられるものを食べましょう。

熱が下がった後の過ごし方

熱が下がって体が楽になったからといって、すぐにもとの活動量に戻すと再度発熱を繰り返すことがあります。

・安静にして体力を温存する。
・辛味が強く刺激的なものや、油分の多いものを控えて消化器官の負担を軽くする。
・ビタミン、ミネラルが豊富なものを食べ、免疫力を高めて感染などの再発を防ぐ。
・アルコールを控えて、肝臓を休ませる。
・喫煙を控え、気道への刺激を軽減する。
・良質なタンパク質を摂り、消耗した体力を補う。

熱が下がった後も上記のようなことに気をつけて発熱の予防に気をつけましょう。

いかがでしたでしょうか。突然発熱して、夜間だからどうしたらよいかわからない方も多いのではないのでしょうか。発熱した場合は、まずは安静が第一です。鼻汁や咳などの感冒症状がある場合には、風邪薬や解熱剤を飲むのも有効です。発熱が持続する場合や、発熱以外の症状が出現した場合には、医療機関を受診して詳しく調べてもらいましょう。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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