ミオパチーの種類…先天性ミオパチーや筋ジストロフィーなど

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ミオパチーというのは筋肉に起こる病気の総称です。そのため、筋肉に何かが起こっていると全てミオパチーと呼ばれることになります。ただし、筋ジストロフィーという病気はミオパチーから区別されて説明されることが多くなっています。ここではミオパチーのさまざまな種類を紹介します。

ミオパチーの種類

筋肉に異常が起こってくる病気にはどのようなものがあるのでしょうか。ミオパチーの代表的な分類を見ていきましょう。

先天性ミオパチー

先天的に筋肉の構造に異常が起こっているものを先天性ミオパチーと呼びます。どのような異常があるのかによって更に細分化されるのですが、代表的なものとしては、筋肉内にネマリン小体と呼ばれる構造が出現するネマリンミオパチーや、筋肉の繊維の中に核がたくさん出現する中心核ミオパチー、セントラルコア病などがあります。

これらのミオパチーは基本的には小児期に筋力が低下している等の症状で精査をして発見されることが多いのですが、大人になってから認められる事も時折あります。

炎症性ミオパチー (筋炎)

炎症性ミオパチーというのは別名筋炎と呼ばれます。

筋炎には外から細菌やウイルスが侵入してきて筋肉に感染することで発症する感染性筋炎もありますが、多くの場合は関節リウマチなど膠原病と呼ばれる病気の一種である多発筋炎と皮膚筋炎です。また、多発筋炎や皮膚筋炎と確定しなくても、ほかの膠原病の全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、シェーグレン症候群、そして様々な血管炎にも合併することがあります。

また、皮膚筋炎が悪性腫瘍に合併しやすいことから、悪性腫瘍に伴う筋炎を別な種類の筋炎として分類もしています。

ウイルス感染による筋炎の中にはHIV感染に伴うものや、HTLV1というウイルス感染に伴うものもあります。

皮膚筋炎と多発筋炎

特に皮膚筋炎、多発筋炎について解説しましょう。膠原病の一種と説明しましたが、膠原病というのは自分自身の免疫が、何らかの理由で自分自身を攻撃してしまうことによって起こってくる病気の総称です。

多発筋炎、皮膚筋炎の場合には、びまん性に横紋筋、すなわち身体の様々な筋肉に対して攻撃が行われることによって、筋力が低下してしまいます。これによって、特に身体の体幹部に近い部分の筋肉の筋力が低下してきてしまいます。

皮膚筋炎は多発筋炎の症状に加えて特徴的な皮疹が出ることから別の疾患として取り扱われていますが、筋肉の症状はどちらも同じと言えます。

筋肉が攻撃されて炎症を起こしていることを反映して筋肉に圧痛が起こることもあります。また筋肉の萎縮、嚥下障害、構音障害、呼吸困難などの症状が見られます。

また合併症として肺の病変が起こる事もあります。間質性肺炎といって特殊なタイプの肺炎が起こり、呼吸困難感が強くなる場合もあります。

血液検査では筋肉のなかにある物質が上昇して見られます。CKやアルドラーゼ、AST等と言った値が上昇してきます。また、特殊なものとして抗Jo-1抗体という抗体が見られる場合もあります。

筋電図検査を行うと、筋肉が傷害されているのを反映した所見が見られます。特に皮膚筋炎の場合は悪性腫瘍を合併している可能性が高いですので、皮膚筋炎を疑った場合には悪性腫瘍の検索をする必要もあります。

治療はステロイドを投与します。効果が不十分な場合には免疫抑制薬も使用されます。

代謝性ミオパチー

筋肉が何らかの代謝異常によって障害を受けた結果発生するミオパチーを代謝性ミオパチーと言います。

先天性の疾患としては糖原病がミオパチーを起こす病気として有名です。糖原病というのは先天性に酵素が欠損することで組織にグリコーゲンが蓄積してしまう病気です。筋肉にも蓄積しますから、筋肉の異常が出てきます。ただし、全ての糖原病で起こってくるわけではなく、一部の糖原病のみで起こってくるところがややこしいところです。

ミトコンドリア脳筋症という病気も代謝性ミオパチーの原因となる病気です。ミトコンドリアは細胞の中でエネルギーを産生します。このミトコンドリアのDNAに異常が起こることで起こってくるのがミトコンドリア脳筋症で、様々な種類の病気がこれに分類されます。ミオパチーに加えて眼の動きの障害、手足の失調、てんかん発作、脳血管障害に類似した四肢麻痺などが認められます。

周期性四肢麻痺

先天性のものではない、元気な人に急に起こってくる代謝性ミオパチーとして代表的なものは周期性四肢麻痺です。周期性四肢麻痺は多くの場合は低カリウム血症によって引き起こされます。

カリウムというのは細胞の中に多く存在し、血液中には必要量だけある状態になっていて、筋肉が動く時には細胞内から細胞外へ流れる事によって筋肉の動きが調節されます。しかし血液中のカリウムが低すぎるとその調節がうまくいかなくなり、筋肉をうまく動かせなくなってしまうのです。

このような周期性四肢麻痺は甲状腺機能亢進症に伴って起こってくる事が多くあります。甲状腺機能亢進症は、周期性四肢麻痺を通してミオパチーを引き起こすこともありますが、周期性四肢麻痺がなくミオパチー症状を生じることもあり、元気な人に急にミオパチーが起こったら先ずは甲状腺機能の検査を行います。

また、糖尿病の場合にもミオパチーを引き起こすこともあります。糖尿病は神経障害を引き起こす病気として知られていますが、神経障害が関与せずに直接筋肉が何らかの原因で傷害される事があるのです。

薬剤性ミオパチー

内服薬によって起こってくるミオパチーです。コレステロール値を低下させるスタチン系と呼ばれる薬による筋障害がよく知られています。しばしば筋肉の痛みや、血液中の筋肉から出てくるCKの値が上昇することで診断されます。

一部の患者さんの例では、スタチン製剤が阻害している酵素に対して抗体が産生されることでミオパチーを生じていると言われます。

薬剤のせいでミオパチーが起こっていると考えられた場合にはすぐにその薬剤を中止する必要があります。

筋ジストロフィー

ふくらはぎをおさえる女性

筋ジストロフィーは様々な原因によって筋肉が壊れていく病気を言います。傷害されやすい筋肉の分布や遺伝形式、発見者名などによって様々に分類されています。

中でもデュシェンヌ型ジストロフィーはよく知られています。遺伝に特徴があり、X染色体に異常が見られます。正常なX染色体がある場合には発症しませんので、女性の場合は異常を保有していても発症しない場合がありますが、男性の場合は遺伝すると必ず発症します。

ただし、全てが遺伝ではなく、3分の1は突然変異にて発生してくるとされています。

発症すると起立や歩行の不安定性が見られるようになり、診察を受けるようになります。その後、歩行障害や立位の障害、呼吸筋の障害による呼吸不全、心筋障害による心不全や不整脈を引き起こすこともあります。

ほかにも福山型先天性筋ジストロフィー、肢帯型ジストロフィー、筋強直性ジストロフィーなど様々なジストロフィーがあります。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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