ツムラの売れ筋TOP10の漢方薬と、その副作用

漢方基礎知識

漢方薬に対して「副作用が少なく安全」という印象をお持ちではないでしょうか?残念ながら、そのようなことはなく、すべての漢方薬に副作用があります。

当記事では、漢方薬を製造・販売するメーカーとして有名なツムラの漢方薬のうち、最も売れている10種類について副作用をまとめました。漢方薬の副作用について疑問のある方、10種類の漢方薬のうち、今飲んでいるお薬が当てはまる方は、漢方薬をより深く知るために参考にしてみてください。

漢方薬の効果と副作用

ツムラと漢方薬

株式会社ツムラは1893年創業の漢方薬のメーカーです。ドラッグストアなどで処方箋なしで買える一般用医薬品はツムラの売り上げの3%程度であり、売り上げのほとんどは医療用医薬品です。医療用漢方製剤の市場シェアは80%以上です。

ツムラが製造・販売する医療用医薬品の種類は120種類を超えています。ツムラは重点領域を「高齢者関連領域」「女性関連領域」「がん領域(支持療法)」の3つに定めて、漢方薬の使用実績を増やしています。

漢方薬と副作用

副作用とは、医薬品の使用によって生じた好ましくない作用のうち、因果関係が否定できないものを指します。

多くの漢方薬は、複数の生薬をブレンドして作られています。そして、それぞれの生薬により、現れやすい効果や副作用が異なります。そのため、それぞれの漢方薬の副作用は異なります。

多くの漢方薬に共通する副作用

当記事では、ツムラの医療用漢方薬のうち、売り上げの多い10種類の漢方薬について副作用を紹介しています。多くの漢方薬に共通する副作用があるので、まずは10種類の漢方薬に共通する副作用について解説します。

皮膚症状

発疹・痒み、蕁麻疹など、漢方薬に配合されている生薬に対するアレルギー反応によるものです。すべての漢方薬に起こりうる副作用です。

肝機能障害、黄疸

漢方薬に含まれる成分により、肝臓の細胞が障害されたり、胆汁が滞る症状です。発熱、倦怠感、吐き気・嘔吐・痒みなどの症状が出ることがあり、症状が進むと黄疸になることがあります。黄疸になると、眼球が黄色くなったり、尿の色が濃くなったりします。

偽アルドステロン症・ミオパチー

漢方薬に含まれるグリチルリチンという成分を長期間服用することで血圧が高くなり、血中のカリウム値が低下する症状です。低カリウム血症の結果として、筋肉の脱力感、痙攣、麻痺などのミオパチーの症状があらわれることがあります。

間質性肺炎

肺の間質(空気の通る肺胞の外側)で炎症が起こり、硬くなることで、発熱、息切れ、咳が出ます。

消化器症状

悪心(みぞおちがムカムカする)、食欲不振、腹部膨満感、胸焼け、胃もたれ、下痢などの症状です。

副作用の対策

副作用は、誰にでも起こる可能性があります。しかし、適切に対処することで、副作用が悪化する・見過ごしてしまうなどのリスクを減らすことができます。

まず、体調の変化に気を配ることです。そのときのポイントは、体のどこに変化が現れているかを把握することです。具体的には例えば頭痛やめまいなどの「精神神経系」のほか、「呼吸器系」「消化器系」「泌尿器系」「心臓・循環器系」「筋肉」「皮膚」などです。

次に、体調の変化をメモしておくことも重要です。なぜかというと、次回、漢方薬を処方してもらった医師の診察時に伝えるためです。自分で気がついた体調の変化が、漢方薬による副作用か否か、なかなか自己判断できないものです。このときのポイントは、体調の変化を感じた時期、1日の中での時間などのタイミングを控えておくことです。

漢方薬を飲んでいる方、これから飲む方はぜひ参考にしてみてください。

ツムラの漢方薬・売り上げランキングTOP10

ツムラの医療用漢方製剤は全部で129種類ありますが、売り上げTOP10の漢方薬だけで、なんと売り上げの50%を占めます。以下にツムラの漢方薬の副作用を、売り上げランキング順に整理しています。その上で、それぞれの漢方薬のポイントをまとめています。

第1位:大建中湯(ダイケンチュウトウ)・No.100

副作用

  • 呼吸器:間質性肺炎
  • 消化器:肝機能異常、悪心、下痢腹部膨満、胃部不快感、嘔吐、肝機能障害、黄疸、腹痛
  • 皮膚:発疹、蕁麻疹

ポイント

効能・効果は「腹が冷えて痛み、腹部膨満感のあるもの」であり、便秘、下痢にも用いられます。肝機能が低下している場合には、黄疸の症状(眼球・尿の色)を日頃から注意しておくと良いでしょう。

第2位:抑肝散(ヨクカンサン) ・No.54

副作用

  • 精神:傾眠(ウトウトする)
  • 呼吸器:間質性肺炎
  • 消化器:肝機能異常、食欲不振、胃部不快感悪心下痢、肝機能障害、黄疸
  • 心臓・循環器:血圧上昇、心不全、偽アルドステロン症
  • 筋肉:ミオパチー、横紋筋融解症
  • 皮膚:浮腫、発疹発赤そう痒
  • その他:低カリウム血症、倦怠感

ポイント

効能・効果は「虚弱な体質で神経がたかぶるものの次の症状:神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症」です。甘草が含まれており、低カリウム血症が起こり得るのが特徴です。筋肉痛、筋肉の痙攣(こむらがえり)などの筋肉に起きる体調の変化に注意しておくと良いでしょう。

第3位:六君子湯(リックンシトウ)・No.43

副作用

  • 消化器:肝機能障害、黄疸、悪心、腹部膨満、下痢
  • 心臓・循環器:偽アルドステロン症
  • 筋肉:ミオパチー
  • 皮膚:発疹、蕁麻疹

ポイント

 

第4位:補中益気湯(ホチュウエッキトウ)・No.41

副作用

  • 呼吸器:間質性肺炎
  • 消化器:肝機能障害、黄疸、食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢
  • 心臓・循環器:偽アルドステロン症
  • 筋肉:ミオパチー
  • 皮膚:発疹、蕁麻疹

ポイント

効能・効果は「消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の諸症:夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症」です。抑肝散と同様に甘草が含まれています。筋肉痛、筋肉痙攣(こむらがえり)などの筋肉に起きる体調の変化に注意しておくと良いでしょう。

第5位:芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)・No.68

副作用

  • 呼吸器:間質性肺炎
  • 消化器:肝機能異常、悪心、肝機能障害、黄疸、嘔吐、下痢
  • 心臓・循環器:高血圧、動悸、うっ血性心不全、心室細動、心室頻拍、偽アルドステロン症
  • 筋肉:ミオパチー
  • 皮膚:浮腫、発疹、発赤、そう痒
  • その他:低カリウム血症

ポイント

効能・効果は「急激におこる筋肉のけいれんを伴う疼痛、筋肉・関節痛、胃痛、腹痛」です。特徴は、この漢方薬に含まれる甘草の量が他の製剤と比べ多いため、甘草の副作用の偽アルドステロン症が起こりやすいことです。そのため、不必要に連用することは避け、症状がある時のみ、服用するように注意しましょう。

第6位:麦門冬湯(バクモンドウトウ)・No.29

副作用

  • 呼吸器:間質性肺炎
  • 消化器:肝機能障害、黄疸
  • 心臓・循環器:偽アルドステロン症
  • 筋肉:ミオパチー
  • 皮膚:発疹、蕁麻疹

ポイント

効能・効果は「痰の切れにくい咳、気管支炎、気管支ぜんそく」です。抑肝散と同様に甘草が含まれています。筋肉痛、筋肉痙攣(こむらがえり)などの筋肉に起きる体調の変化に注意しておくと良いでしょう。

第7位:加味逍遙散(カミショウヨウサン)・No.24

副作用

  • 消化器:肝機能障害、黄疸、食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹痛、下痢
  • 心臓・循環器:腸間膜静脈硬化症、偽アルドステロン症
  • 筋肉:ミオパチー
  • 皮膚:発疹、発赤、そう痒

ポイント

効能・効果は「体質虚弱な婦人で肩がこり、疲れやすく、精神不安などの精神神経症状、ときに便秘の傾向のある次の諸症:冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症」です。血の道症とは、女性ホルモンの変動に伴う精神神経症状と身体症状です。具体的には、不安やいらだちなどの症状です。

第8位:五苓散(ゴレイサン) ・No.17

副作用

  • 消化器:肝機能異常
  • 皮膚:発疹、発赤、そう痒

ポイント

効能・効果は「口渇、尿量減少するものの次の諸症:浮腫、ネフローゼ、二日酔、急性胃腸カタル、下痢、悪心、嘔吐、めまい、胃内停水、頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病」です。比較的、副作用の種類は少ないですが、皮膚に起きる変化に注意しましょう。

第9位:牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)・No.107

副作用

  • 呼吸器:関質性肺炎
  • 消化器:舌のしびれ、肝機能障害、黄疸、食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹部膨満感、腹痛、下痢、便秘
  • 心臓・循環器:心悸亢進
  • 皮膚:発疹、発赤、そう痒
  • その他:のぼせ

ポイント

効能・効果は「疲れやすくて、四肢が冷えやすく尿量減少または多尿で時に口渇がある次の諸症:下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみ」です。特徴的な副作用として、舌のしびれ、のぼせなどがあります。

第10位:柴苓湯(サイレイトウ) ・No.114

副作用

  • 呼吸器:間質性肺炎
  • 消化器:劇症肝炎、肝機能障害、黄疸、口渇、食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹部膨満感、腹痛、下痢、便秘
  • 泌尿器:頻尿、排尿痛、血尿、残尿感、膀胱炎
  • 心臓・循環器:偽アルドステロン症
  • 筋肉:ミオパチー
  • 皮膚:発疹、発赤、そう痒、蕁麻疹
  • その他:全身倦怠感(全身がだるい)

ポイント

効能・効果は「吐き気、食欲不振、のどのかわき、排尿が少ないなどの次の諸症:水瀉性下痢、急性胃腸炎、暑気あたり、むくみ」です。特徴は、劇症肝炎などの消化器系の副作用があることです。劇症肝炎の初期症状には、発熱、筋肉痛、全身倦怠感、食欲不振などがありますが、どんどん悪化していき、命にかかわることもあるため、できるだけ速やかに医療機関で適切な処置をしてもらうことが大切です。

副作用について知り、ツムラの漢方薬を活用しましょう

漢方薬は、副作用が少なく安全と思われがちですが、それぞれの漢方薬には異なる副作用があります。副作用に気づくためには、日頃から自分の体調に気を配ること、ささいなことであっても気がついたことをメモしておくこと、そしてその変化を、漢方薬を処方した医師に伝えることが重要です。漢方薬を飲んでいる方、飲み始める方はぜひ参考にしてみてください。

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