全身の痛みが続く線維筋痛症とは?症状の特徴と治療法

線維筋痛症という病気があります。この病気は、全身に痛みを感じるのに色々調べても原因がわからない時に診断される病気になります。どこが痛いというわけでもなく様々な場所が痛くなりますので、社会生活にも多大な影響があるこの病気。ここでは線維筋痛症の症状の特徴や治療法について紹介します。
全身の痛みが続く線維筋痛症とは

線維筋痛症は、昔は結合組織炎や線維筋炎症候群という名前がついていました。というのは、病気の原因として全身の様々な場所で炎症が起こり、炎症によって痛みが生じているからと考えていられたためです。
痛みには大きく分けて3つの種類があり、炎症が関与するものとしないものがあります。
体性痛
1つ目が体性痛です。筋肉や骨などの痛みのことで、痛みを感じるセンサーが刺激を受けることによって痛みを感じるのがその機序です。
もちろん強い力が加わると痛みを感じます。しかし、そこに炎症という反応が起こると、痛みのセンサーがより鋭敏になってしまいます。それによって、弱い力でも痛みを感じるようになるのです。例えば切り傷や打ち身などができると、普段は痛みを感じないようなただ触っただけの力だけでも痛みを感じますし、ともすれば何もしなくても痛みを感じるようになってしまいます。これが体性痛の特徴です。
内臓痛
続いての痛みが内臓痛になります。内臓痛というのは、その名の通り内臓の痛みです。内臓自体に血液がうまく送られなくなったり、内臓がうまく機能できなくなったりした時にセンサーが反応して、痛みを感じるものになります。炎症は関与しません。例えばお腹が痛い時などは、胃や腸などがうまく動けなかったり、逆に何かの影響によって激しく動くことによって痛みを感じます。
神経痛
3つ目の痛みが、神経痛です。神経痛は、痛みを伝える神経が障害されることによって起こる痛みです。よく例えられるのが、正座をした時の痛みです。ビリビリジンジンした痛みがありますが、このような痛みが神経痛の特徴となります。
線維筋痛症は、この3つの中に正確に分類することはできませんが、ある程度神経痛に近い痛みと言えます。原因がはっきりと分かっていませんが、現在では、通常の人と比べ、脳の痛みを判断する部分が過敏に反応するためと考えられることが多いです。
このように、痛みの原因に炎症が関わっていないために、以前のような「炎」という文字が名前から削除されるようになっています。
線維筋痛症になりやすい人

線維筋痛症になりやすい人には特徴があります。
まず性別ですが、女性の方が男性の7倍ほど多く見られると言われています。多いのは若い女性や中年の女性です。しかし、男性にも見られないわけではなく、また小児にも見られることがあります。
線維筋痛症を引き起こす要因としては、睡眠不足や体の酷使など、強い体への負担が原因となることが多いようです。精神的ストレスが原因となることもあると言われています。
また一部の患者さんには、様々な膠原病が合併しています。膠原病は自己免疫疾患の一部で、体の免疫細胞が異常な反応をして、正常な組織を攻撃することによって起こってくる病気の総称です。特に関節リウマチや全身性エリテマトーデスのような疾患が見られることがあります。このようなストレスが、線維筋痛症の発症に関与しているのかもしれません。
線維筋痛症の症状の特徴

線維筋痛症の症状は、全身に様々な場所にわたる痛みです。痛みに加えてうずくような感じや、こわばりなどを感じることがあります。中でも特に症状が起こりやすい場所があります。例えば首や肩の上部、胸、腰や太もも、腕などがよく起こる場所です。
痛みは出たり消えたりする場合もありますが、ずっと出っぱなしの場合もあります。強さに関しても様々なパターンがあります。時々痛む程度である場合もあれば、生活に支障が出るほどの強さであることもあります。
出たり消えたりという程度ではなくても、生活の中で痛みの強さが変化してくることがあります。特に疲労や緊張などによって、頭に刺激が加えられすぎたと考えられる時に、痛みが強くなってきます。
特定の筋肉の一部分を指先で強く押すと痛みを感じることがあります。これは前述した体性痛とは異なり、触ったという感覚を頭が異常に認識して痛いと感じている状態と考えられます。ですので、触った部分自体には炎症が起こっているなどの変化は見られません。このように押すと痛いところを圧痛点と呼びます。
痛みのせいで精神的なストレスも強まります。不安を感じたり、抑うつ状態になったりすることもあります。また不眠も起こってきます。これらの精神的なストレスが強まることによって、さらに線維筋痛症が悪化するという面もあります。
ストレスに過敏な状態とも言えますので、他の様々なストレスによって起こってくるような病気を合併することもあります。例えば偏頭痛や緊張型頭痛、過敏性腸症候群などが合併することがあります。
線維筋痛症の治療法

線維筋痛症はどのように治療すれば良いのでしょうか。
薬物療法
まずは薬物療法です。
薬物療法は大きく分けて2つに分かれます。1つ目がストレスを緩和すること、2つ目が痛みに対応することです。
まずストレスに対応するために、抗うつ薬を使用することが多いです。ストレスに対抗するということももちろんですが、睡眠を改善することによって脳を休め、症状を緩和する役割があります。
痛みの緩和としては、まずは一般的な鎮痛薬を使用してみます。アセトアミノフェンは、脳の痛み中枢に作用して痛みを抑えますから、効果的な治療薬と言えます。炎症が関わっていないためにあまり効果的ではないものの、NSAIDsと呼ばれる抗炎症薬も、補助的に使用することがあります。
一方で、強力な痛み止めであるオピオイド、すなわち麻薬についてはあまり使用されません。睡眠サイクルの異常をきたしたり、依存を引き起こしたりする可能性がある上に、使えば使うほど効果が減弱してしまうことがあるため使用しないのです。
他に痛み止めとして使われるのがプレガバリンという薬です。元々はてんかんの薬ですが、脳の異常な興奮を抑えてくれる作用がありますから、痛みの緩和に役立ちます。デュロキセチンやミルナシプランなども同様の作用機序で使用します。
またカプサイシンも有効と言われています。カプサイシンがカプサイシン受容体という痛みの受容体に結合することによって痛みを感じます。しかし、弱いカプサイシンの刺激を繰り返すことによって、だんだんと鈍感にさせることによって痛みを緩和させることができます。
その他の治療法
薬物療法の他には、ストレッチやマッサージ、ストレスの管理、睡眠の改善などが治療に役立ちます。
痛みのある部分の筋肉を優しくストレッチしたり、有酸素運動をしたりすることによって血行を良くし、痛みを緩和します。温めたり優しくマッサージするのも効果的です。
またストレスが原因となって痛みがひどくなっている面もありますから、ストレスを管理してなるべくストレスのない生活をすることによって、症状の改善を図ります。
そして脳が異常に働いている状態を改善するために、なるべく良質なそして長い時間の睡眠を取るようにします。