二朮湯(にじゅつとう)は冷えると痛くなる関節痛や、五十肩に
「二朮湯は冷えると痛くなる関節痛や、五十肩によく使われます」
処方のポイント
強い止痛作用をもつ威霊仙、羗活、水分停滞解消の天南星・半夏・白朮・茯苓・蒼朮、解熱利水作用のある黄芩、血行を調える香附子・陳皮等で構成。からだの冷えを除き、水分停滞を解消し鎮痛に働きます。冷えや高湿度で痛くなる関節痛や神経痛、五十肩等に。強い辛味で温服が効果的です。
二朮湯が適応となる病名・病態
保険適応病名·病態
効能または効果
五十肩。
漢方的適応病態
湿痺(着痺)。すなわち、筋肉や関節のだるいしびれ痛み、運動障害、軽度の浮腫などで、舌苔は白膩、脈は滑が原則です。
二朮湯の組成や効能について
組成
天南星3半夏6陳皮3茯苓3甘草3生姜3白朮3蒼朮5威靈仙3羌活3香附子3酒黄芩3
効能
燥湿化痰・散寒去風
主治
湿痰阻絡・風寒侵入
〇燥湿化痰:燥性の薬を用いて痰湿を除去する治法です。水湿は濃度が高まれば痰湿となります。痰湿は粘滞性が強く、経絡を塞ぎやすいです。
〇散寒去風:痺証の治療は風・寒・湿の病因をすべて取り除くことが重要であり、湿と同時に風、寒を除去する治法も取り入れる必要があります。
〇湿痰阻絡:痰湿が経絡を阻害している病態です。関節が重い、腫れる、痛む症状が現れます。
解説
二朮湯は痺証を治療する処方です。痺証の発症原因となる風・寒・湿の3邪を同時に除去できるが中でも湿邪を除去する作用があります。
二朮湯は蒼朮、白朮の2薬を主薬としているので、「二朮湯」と名付けられました。
適応症状
◇肩関節痛・肩こり
体内に痰湿が停滞し、体外から風寒の侵入を受けると、気血の運行が障害され「不通則痛」で疼痛が出現します。特に粘滞性のある痰湿が多いときには、固定痛となる痰湿が重く経絡を塞ぐので、肩こりの症状をともないます。風邪は上部を犯し竹いので肩が重く痛いなどの、肩を中心とした上肢の症状が主にみられます。
◇舌苔白膩あるいは白滑
痰湿が多いので膩あるいは滑の舌苔がみられる(痰が濃いときには膩荐湿が溜まった状態では滑苔を生じる)。白色は疾病の性質が寒であることを示します。
◇脈滑
痰湿の存在を示します。風邪が強いときには浮脈、寒邪が強いときには緊脈がみられます。
天南星と「二陳湯」は経絡に停滞している痰湿を取り除きます。特に天南星は辛散の力が強く、風痰を除去する作用があり、湿痰の痺証に対して半夏よりも頻用されます。また、活血消腫の作用もあるので、局部の腫れ、疼痛を緩和します。半夏、陳皮、茯苓、甘草は「二陳湯」の組成で主に痰湿を生む脾胃に作用し、停滞した湿痰を取り除きます。二朮湯では蒼朮と白朮が一緒に配合されています。特に去風勝湿の作用に優れた蒼朮は薬量が多めです。蒼朮の燥性は白朮より強く、風、寒、湿の侵入によって生じた関節痛に使われることが多いです。白朮は主に脾胃を補う作用が特徴です。威霊仙と羌活も去風湿薬に属します。威虚仙は十二経に帰経し、経絡を通じさせる作用に優れています。さらに痰水を消す作用をもっており、天南星と半夏の化痰作用を増強できます。羌活は上半身の風寒湿痺に使われることが多く、肩の疼痛には必要不可欠の薬です。香附子は芳香性をもつ走行薬で、理気、活血の作用によって局部の瘀血を取り除き、疼痛を止めます。酒黄芩は酒て加工した黄芩で、酒の性質によって上部の熱を清する力が強まります。本病証のように痰湿による疾患は長期化しやすく、熱に変わる恐れがあるので、清熱作用のある黄芩を配合します。大量の辛燥薬を使用するために生じる燥熱症状を抑制する効果も期待できます。
〇風痰:経路に停滞している痰を指すことが多いです。関節痛、四肢麻痺、中風などの病症をひきおこす原因となります。
臨床応用
肩関節痛
リウマチ(特に肩・肘・手指などの上肢症状を主とする)、五十肩、肩こり、頸椎症候群などの治療に二朮湯を使用します。肩憾く痛い、舌苔泊膩などの痰湿症状がみられるときに用います。二朮湯は活作用が不足しています。
◎疼痛が強いとき+「疎経活血湯」(活血通絡、止痛)
または+川芎、赤芍薬・紅花・鶏血藤(活血薬)
熱傾向(肩が腫れて熱感がある、舌微紅など)のとき+「越婢加朮湯」(清熱・去風・利水)
注意事項
二朮湯は燥性が強く、薬性は温に偏るので、熱症状に用いてはなりません。