平熱が上がった!?女性の体温が上がりやすい時期と微熱が続く原因

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熱を測ると37℃。これは平熱? それとも微熱?そんな疑問を持ったことがある人もいらっしゃるでしょう。感染症の流行もあり、ちょっとした体温の変化も気になりますよね。

ここでは平熱や微熱について詳しく見ていきましょう。

日本人の平熱の目安は

日本人の平均体温は36.89℃±0.34℃といわれています。つまり37℃は日本人の平均的な体温の範囲に入っているのです。

平熱にも個人差があるため、平熱が35℃台の人から37℃台の人までかなりの幅があります。そのため、平熱が37℃の人もいます。その一方で37℃でも微熱を感じて体調が変化する人もいるのです。なお微熱に定義はないものの、37℃〜37.4℃程度が一般的に微熱と呼ばれています。

平熱は変動する?

平熱は一生涯同じではありません。歳を重ねるごとに、体温も変化していきます。乳幼児は一般的に体温が高い傾向にありますが、小学生、中学生に向かうにつれて体温が落ち着いていきます。高齢になってくると、体温は低下する傾向にあります。

さらに、体温は病気にかかっていなくても、運動、時間、気温、食事、睡眠、感情の変化などにより変動します。女性の場合は月経周期の影響も受けます。

人は24時間単位の体温リズムを持っており、1日のうちでは早朝が最も低く、しだいに上がり、夕方が最も高くなって、夜になると下がり始めます。高齢になってくると、朝は早い時間から体温が上がり始め、夜も早い時間から下がり始めます。このように平熱は1日のなかで時間とともに変化し、年齢によっても変化していきます。

体温計による測定精度の違い

最近は腋下で測る体温計の他にも額や手首で測る皮膚赤外線体温計(非接触体温計)もみられます。

この皮膚赤外線体温計は、測定した部位の皮膚の赤外線放射量を測定し、その部位の体表面温度を測定します。その体表面温度から腋下で測るタイプの体温計で測定する温度に換算して数値を表示しています。

そのため、腋下の体温計と測定精度が異なります。測定する環境や測定方法に影響を受けるため、取り扱い説明書をよく読んで正しく測定しましょう。

女性の体温が上がりやすい時期

女性は生理前、妊娠時、更年期などで体温が変化します。

生理前や妊娠時の体温変化

女性の場合は、生理の周期的なリズムで体温が変動します。特に排卵後から生理前までの1〜2週間は体温が高くなる時期で高温期といい、微熱が続く場合があります。

これは排卵後に分泌されるプロゲステロンというホルモンによって体温が上昇するためです。生理後は熱が下がり低温期となります。この差が0.3〜0.5℃くらいになります。

また、妊娠した場合は、生理が来なくなるため、排卵期から生理が来るまでの高温期が続くようになります。妊娠の可能性がある場合は微熱があるからといってすぐに薬を飲まないよう気をつけましょう。

更年期の体温変化

女性で微熱が続く場合、更年期障害の可能性もあります。女性は更年期を迎えると、女性ホルモンのバランスが崩れ、自律神経が不調を起こし体温が上がることがあります。特に50歳以降の女性にみられますが、30代や40代から症状が現れる人もいます。

更年期障害の症状は多様であり、発汗、冷え、めまい、耳鳴り、動悸、息切れ、イライラ、不安感、不眠、抑うつ状態などが生じます。

微熱が続く原因

微熱は、次に挙げるような体調の変化や病気のサインになることがあります。

ストレスや疲れ

微熱は精神的なストレスで引き起こされることがあります。慢性的なストレスを感じることで自律神経が乱れ、発熱がみられます。同時に耳鳴り、倦怠感、不眠、下痢、便秘、イライラ、不安感などの症状が併発する場合があります。

また、重度の疲労感が長期間続く場合があります。これは、慢性疲労症候群といい、慢性的な疲労感がとれないだけでなく、微熱や筋肉痛といった症状が重なる場合があります。

中耳炎や副鼻腔炎

風邪症状が出ている場合は、風邪に伴う発熱と考えられますが、風邪症状が治っても微熱が続く場合があります。

これは、風邪のウイルスや上気道に感染した菌が影響して、中耳炎、副鼻腔炎などを引き起こしている可能性があります。耳の痛み、耳閉塞感、異臭や頭痛などの症状が併発することがあり、このようなときは医療機関を受診しましょう。

膠原病

発熱が続く原因として自己免疫疾患の一つである膠原病があります。自己免疫疾患とは、体を守るはずの免疫が、自分の臓器や細胞を攻撃してしまうことです。

代表的なものとしては慢性関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどが挙げられます。慢性関節リウマチは早朝の手のこわばりや関節の腫れ、全身倦怠感などが併発します。

全身性エリテマトーデスは顔面の紅斑、日光過敏、関節の腫れと痛み、全身倦怠感が現れます。その他にも全身性強皮症、皮膚筋炎、リウマチ熱、血管炎(大動脈炎症候群、結節性多発動脈炎、ANCA関連血管炎)などの疾患もあります。

炎症が治るとともに発熱も治りますが、全身に症状を伴い慢性化しやすいため、長期的な治療と経過観察が必要となります。

虫垂炎

発熱が続いて、腹痛がある場合は、虫垂炎の可能性があります。このときの腹痛は全体から徐々に右下腹部に限局していきます。虫垂炎は放っておくと、穿孔して腹膜炎へとつながることがあるため、腹痛を伴っている場合は、病院を受診して検査を受けましょう。

がん

現在は画像検査や血液検査などでがんが初期の段階で発見されることが多くなってきています。そのため、発熱の原因がわからない不明熱となる場合は少なくなってきています。しかし、白血病や悪性リンパ腫などの血液による悪性腫瘍の場合は不明熱が原因で発見される場合があります。

薬剤熱

薬剤によって、発熱が引き起こされることもあります。薬剤によって発熱する場合には、その副作用があらわれている薬を中止することによって治ります。

いかがでしたでしょうか。平熱の目安や微熱が続く原因について見ていきました。感染症対策で街の至る所で検温が実施され、普段の生活で熱を測る機会が多くなったと思います。これを機に自身の平熱を把握することで病気の早期発見にもつながると思います。


<執筆・監修>

九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師

九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。
日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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