二日酔いの対処法…酔って気持ち悪いときはどうすればいい?
飲酒をすると体の中では酒の主成分であるエタノールを分解するためにさまざまな化学反応が起こります。また、代謝の結果産生された物質が体内で悪影響を及ぼすことで二日酔いの症状が起こり、不快なだけではなく身体に影響を与えるのです。
ここでは飲酒に伴う体への負担をなるべく減らすための対処法について解説します。
目次
お酒で気持ち悪くなるメカニズム
大量に飲酒をした後、翌日に残るさまざまな症状の事を二日酔いといいます。二日酔いの症状には気分不良の他、頭痛や疲労感、脱力、胃の痛みなどがあります。それぞれの症状は概ね24時間以内に消失します。
なぜ二日酔いという症状が起こるのでしょうか。
二日酔いの症状の原因は一つではなく、さまざまな要因がそれぞれの個人で作用しています。酒に含まれているアルコールは分解によってさまざまな物質に変化していきます。それぞれの物質が悪影響を及ぼす場合もありますし、代謝をすることそのものの負担が症状を起こすこともあります。
また、大量に飲酒して胃腸に負担をかけることも症状の原因になります。具体的に見ていきましょう。
胃腸の負担
まずは大量に飲酒することで胃腸に負担がかかるという面です。飲酒をすると、通常の生活で摂取する水分や食事量より多い分量を飲んだり、つまみとして多くの分量を食べたりします。
それらの食物が胃腸に一度に入ることにより、胃や腸に負担がかかり気分不良を引き起こします。簡単に言えば「食べ過ぎ、飲み過ぎ」の症状です。
このような食べ過ぎ、飲み過ぎによって、特に胃では胃炎が起こるなどして胃もたれ、胸やけの症状を引き起こします。
脱水
アルコールを飲むと利尿作用がありますから、尿が多く出て脱水になってしまいます。この脱水も症状の原因となります。
肝臓への負担
一方で、代謝による影響としては、肝臓への負担が考えられます。肝臓ではさまざまな物質が代謝され、無毒化されます。
酒の主成分であるアルコールも同じように有害なものですから、肝臓で代謝を受けます。すると、肝臓が他の成分を分解しきれずに有害な物質が血中に残ってしまうことになります。これらの成分によってさまざまな症状が起こります。
アルコールの代謝産物による影響
また、アルコールそのものの代謝産物によっても症状が起こってきます。アルコールの主成分であるエタノールは、肝臓の中でアルコール脱水素酵素(ADH)によって加水分解され、アセトアルデヒドになります。
アセトアルデヒドはアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって加水分解され、酢酸になります。酢酸は体内のさまざまな場所で分解され、水分と二酸化炭素になります。
エタノール自体にも細胞の活動を低下させる作用がありますが、特にアセトアルデヒドは身体にとって非常に有害です。アセトアルデヒドが血中にあると吐き気や動悸、頭痛などを引き起こします。また、赤ら顔のような、酒に酔った症状の原因にもなります。
ADH自体は肝臓の中に多く存在し、エタノールからアセトアルデヒドに分解される反応は比較的スムーズに行われます。しかし、ALDHは作用の強さが個人によって異なり、特にALDHの作用が弱い人の場合はアセトアルデヒドが血中に著明に残留してしまい、症状を引き起こしてしまいます。
二日酔いを避ける飲み方はある?
ではどのようにすれば二日酔いを避けることができるのでしょうか。いくつかの項目に分けて解説します。
体調を考慮して飲む
飲む前の体調は非常に重要です。体調が悪い時に飲んでしまうと二日酔いになりやすいです。
お酒が抜けやすいかどうかは個人差があります。アルコールを分解する肝臓の能力は、体調による差がないように工夫はされているのですが、それでも体調が悪い時というのは肝臓での処理能力は低下します。肝臓で処理が十分なされないと、それだけアセトアルデヒドも蓄積しやすく、二日酔いになりやすくなってしまうのです。
お酒を飲むのは体調が良い時だけにしておくのがいいでしょう。
空腹の状態で飲まない
飲む時にはおつまみを一緒に食べるのが一般的ですが、これも二日酔いを避けるために必要な行動です。
空腹時にアルコールを摂取すると、アルコールの刺激が消化管に強く出てきます。特に胃が荒れることが多く、それによってアルコールの吸収が早くなり、二日酔いを起こしてしまう可能性が高まります。
そのため、飲酒をする際にはおつまみを食べるようにして家の中に物を入れておくことが大事です。食べるものの種類としては、スナック菓子とかファストフードなど油分が多いものを避け、消化に良いものを選ぶとよいでしょう。
特に牛乳がおすすめです。牛乳には適度な脂肪分が含まれていて、その脂肪分が胃の粘膜を覆うバリアのような働きをすることでアルコールの吸収を遅らせることができます。ヨーグルトやチーズなど、脂肪分を含むものであれば牛乳以外でも構いません。
こまめに水を飲む
こまめに水分を取ることも二日酔いを避ける良い方法です。
お酒の合間に水分を取ることで、飲んだお酒のアルコール濃度を下げることができるため、 アルコールの吸収速度を遅らせることができます。また水分が吸収されると血液中のアルコールの濃度が下がるため、アルコールの分解が適切な速度で進みます。
また、アルコールが分解される時には水分が必要です。脱水状態だとアルコールの分解が十分に行われないので、その意味でも水分を取ることは重要です。
さらに、アルコールを飲むと利尿作用によっておしっこが多く出ます。それによって体外にアルコール分を排出しやすくなります。
度数の低いお酒からゆっくり飲む
飲むお酒を、度数の低いものから順々に飲んでいくのも二日酔い対策になります。いきなり 高い度数のお酒を飲んでしまうと、肝臓の処理が急に起こることになり、十分に分解できずにアセトアルデヒドが血液中にたまってしまうことがあります。
度数の低いお酒から順々に飲んでいくことによって、だんだんと肝臓の代謝をならしていき、分解を促進する働きが期待できます。
栄養ドリンクを活用する
ドラッグストアなどに行くと、二日酔いを防ぐための栄養ドリンクが販売されています。 栄養ドリンクにはアルコールの分解を促進するものや、アセトアルデヒドの分解を促進するものなどがあります。
栄養ドリンクを上手に活用することで、アルコールの分解を促進し、体の中にアセトアルデヒドを蓄積させないようにする働きが期待できます。
二日酔いになってしまったときの対処法
二日酔いの対処法として最も良い方法は酒を飲まないことです。基本的には体にとっては有害なものですから、摂取しないにこしたことはありません。
摂取が避けられない場合に、どのように対処すれば二日酔いを抑えられるのかについて見てみましょう。
水分補給
脱水は症状を強くする要因になりますから、適切に水分を補給することは重要です。脱水による症状そのものの改善にもつながりますし、水分を補給することはアセトアルデヒドの代謝を促進することにもつながります。
もともとADHによるエタノールの分解やALDHによるアセトアルデヒドの分解は、加水分解といって、水を利用することで代謝が行われます。
脱水で体内の水分が少ないと代謝のために水分を使えなくなってしまうので分解が滞ってしまい、エタノールやアセトアルデヒドが体内に多く貯留してしまうことになります。
代謝を助けるためにも水分を十分に補給しましょう。
アミノ酸やビタミンを摂取する
肝臓での代謝についてもう少し詳しく説明しましょう。
ADHやALDHによる代謝が行われる際に、NAD+という物質が必要になります。ADHはエタノールとNAD+を利用してアセトアルデヒドとNADH2+という物質に作り変えるのです。
同じように、ALDHはアセトアルデヒドとNAD+から酢酸とNADH2+を作ります。すなわち、NAD+が不足していたり、NADH2+が過剰に存在したりするとこの代謝がなかなかうまくいかなくなってしまうのです。
NAD+はビタミンB群の一種であるニコチン酸から合成されます。ニコチン酸をはじめとしたビタミンの摂取をすることで代謝を活性化させ、エタノールやアセトアルデヒドの血中濃度を下げる速度を速めることができます。
また、アラニンやグルタミンといったアミノ酸は、NADH2+を利用して糖を産生する原料となります。そのため、アラニンやグルタミン酸を摂取することでスムーズにエタノールやアセトアルデヒドの分解が進むのです。
二日酔いの予防のためにこれらのアミノ酸やビタミンを摂取するのが良いでしょう。
薬を飲む
二日酔い対策の市販薬が販売されています。これらの薬剤の主成分は、上記のビタミンやアミノ酸のほか、アルコールの代謝を亢進させる成分、並びに二日酔いの症状を軽減させる成分が含まれています。
色々な市販薬が発売されていますが、選ぶときにはそれぞれどのようなタイミングで使用することを推奨しているかを確認してから使用するようにしましょう。
例えば、二日酔いの症状を軽減させるような成分の薬を飲む前に使用しても、あまり効果を実感できないことでしょう。
一方で、アルコールの代謝を亢進させるような薬剤を二日酔いになってから使用しても、なかなか症状を抑えることができなくなります。
タイミングや症状に合わせて薬を選択して使用しましょう。
二日酔いに効果的な薬や成分
二日酔いのときに使用する薬は多くの種類が発売されています。そして前述のように、目的によってさまざまな種類の成分を配合して作られています。どのような成分が使用されているのかまとめましょう。
まずは漢方薬です。よく配合されている漢方薬としては、五苓散(ゴレイサン)があります。五苓散は頭痛や二日酔いの症状を抑える漢方として有名です。五苓散はアルコールの分解を促進したり、体内の水分バランスを調整したりすることで頭痛や二日酔いの症状を抑えてくれます。
ウルソデオキシコール酸は市販薬だけではなく処方薬でもよく使用される成分で、肝臓の保護作用を持った薬剤です。処方薬では単剤で使用されますが、市販薬では二日酔い対策の薬剤に追加で配合されていることが多い成分になります。
ウコンやヘパリーゼもよく配合される成分です。これらの成分は、肝機能を高めたり、アルコールの代謝を亢進したりすることで効果を発揮します。
これらの薬効成分に加えて、代謝の原料となるニコチン酸やアラニン、グルタミンが配合されていることが多くなります。
成分を確認して薬剤を選び、その上でしっかりと水分、糖分を摂取して肝臓の代謝を助けることで症状の緩和を期待できます。
ただし繰り返しになりますが、最もよい対処法は過剰な飲酒を避けることです。お気をつけ下さい。