片耳が聞こえにくい・こもるのは難聴のせい?聞こえ方の異常の原因とは
子どものころ、中耳炎と診断されて耳鼻科で治療された経験を持つ方は多いのではないでしょうか?
しかし、大人になるとアレルギーや花粉症などがある方以外は、耳鼻科を受診する機会は減ってきます。耳の病気は日常的なものではなくなり、あまり意識することがないかもしれません。
しかし、耳は生活をしていく上で外部から音の情報を得るための大切な器官です。成人になってかかる耳の病気はたくさんあり、難聴に関しては早めに治療しないと難聴になったままとなる疾患もあります。
ここでは聞こえ方の異常につながる原因について解説します。
目次
片耳が聞こえにくい・こもるのは難聴の可能性も
成人がかかる耳の病気の中で最も多いものに突発性難聴があります。
突発性難聴とは、突然発症する片耳の原因不明な高度感音難聴のことです。50〜60歳代の方に多く、突然耳が聞こえなくなってめまいや吐き気が生じ、耳の閉塞感などの症状がみられます。
突発性難聴の症状の特徴
突発性難聴の症状としては、突然発症する一側の高度感音難聴、耳鳴り、耳閉塞感があります。名前の通り、突然発症するのが特徴となります。原因はわかっておらず、ストレスやウイルス感染などが原因と考えられています。
放置するとどうなる?
難聴の症状が出現したとき、できれば1週間以内、遅くとも2週間以内にステロイド薬などを内服または点滴するなどの治療を開始すれば、ほとんどの人が完治します。
これは、音を感じる神経である有毛細胞が障害を受けた場合、10日から2週間の間に神経変性が起こってしまうからです。神経変性が起こってしまうと元に戻らず、聴力も戻りません。
脳神経外科よりも耳鼻科を受診すべき?
そのため、放置すると難聴が治らなくなる可能性が高くなります。めまいが起こると、多くの人は脳神経外科を受診します。しかし、めまいの原因の約7割は耳からくるものです。脳神経外科では耳の病気の診断はできないため、突発性難聴であったとしても診断や治療が遅れてしまうケースが多くあります。めまいを起こしたらまず耳鼻科を受診してみましょう。
聞こえ方の異常につながるその他の原因
突発性難聴以外にも聞こえ方の以上につながる疾患はあります。代表的なものを見てみましょう。
メニエール病
30〜50歳代の女性に多く、日常生活に支障をきたすほどの回転性のめまい発作が反復してみられます。内耳といった箇所に内リンパ水腫が起き、内耳神経を圧迫することでめまいや難聴が起こるとされています。
発作時には悪心、耳鳴、難聴、耳閉塞感を伴います。一時的に聴力も回復することは多いですが、同症状が繰り返すことで、低音部より徐々に難聴が進行していきます。
治療には、リンパ液の滞留を防ぐための利尿剤、めまいを抑えるための抗めまい薬、難聴に対するステロイドなどを使った治療が主となります。また、ストレスも発症や悪化と関係があるため、原因を取り除くことやしっかりと休養や睡眠の質を改善することも重要となります。
低音障害型感音難聴
低音障害型感音難聴は低音だけに対して起こる感音難聴となります。メニエール病と同じように20〜40代の女性に多く発症し、めまいのないメニエール病と表現されることもあります。
蝸牛に内リンパ液が滞留することで起こると言われており、難聴の他、耳閉感、低音の耳鳴りなどの症状を伴います。
内耳の障害を伴っているため、ステロイド、ビタミンB12などの飲み薬を内服して治療します。
耳管開放症・耳管狭窄症
耳と鼻をつなぐ細い管状の通路を耳管と言います。耳管は平常時には閉じた状態を保持し、唾液を飲み込んだりあくびをした際に一時的に開くことで中耳内の気圧を調整するなどの役割を果たしています。
耳管開放症とは、急な体重減少や妊娠、体調不良が原因となって耳管が開いたままになる疾患です。運動や汗をかいたりすると病状が悪化することがあります。
治療には、生理食塩水を点鼻にて耳管咽頭口を塞ぐ治療、漢方薬などを使用します。症状が強い場合には、自声強調の原因である鼓膜の過振動を抑えるために鼓膜に3Mテープを貼るという治療を行うこともあります。
耳管狭窄症は、風邪やアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、咽頭炎、扁桃炎などの鼻やのどの炎症により鼻の奥にある耳管開口部周囲の炎症が原因となって、耳管が塞がれたり狭くなったりする病気です。
治療としては、原因となっている鼻やのどの炎症に対する治療と、鼻から耳管の入り口まで器具を入れ、直接耳管に空気を送り込む耳管通気を行います。
耳垢の詰まり
耳垢は外耳道の分泌物が、古い表皮や埃などと混ざってできます。その後、自然に剥がれて外に出ていくため、通常はそれほど頻繁に耳掃除をする必要はなく、だいたい2週間に1度程度で問題ありません。
ただ、体質や環境によっては、耳垢が詰まって耳の聞こえが悪化することがあります。そういった場合には、外耳炎や外耳道真珠腫といった病気を起こしている場合もあります。
薬の副作用
難聴が副作用として記載されている薬はたくさんあります。心不全に使用するフロセミドや、結核に対して使用する抗生物質であるストレプトマイシンなども難聴を来たす代表的な薬です。
しかし、医師が処方する薬は必要性があるため、処方します。難聴が出たからといって自己判断で止めるのではなく、一度病院に相談しましょう。代わりの薬を処方するか、中止してよいものかどうか判断してくれると思います。
耳が聞こえにくい、こもるといったトラブルを防ぐには?
突発性難聴、メニエール病、騒音性難聴などを防ぐポイントを見ておきましょう。
大音量で音楽を聞かない
大音量で音響機器を利用することで難聴になりやすくなる可能性があります。神経細胞は一度傷つくと修復ができません。そのため、大音量で長時間音楽を聴くなどは避けましょう。また、イヤホンよりも負担がすくないヘッドフォンをなるべく利用しましょう。
ストレスを溜めない
メニエール病や突発性難聴は、ストレスが原因となることがあります。そのため、ストレスになっている生活から解放されることが必要となります。ストレスを溜めている人は、生活習慣を見直し、適度な有酸素運動や水分補給を行うなど発散につとめましょう。
長時間騒音下にいる場合は耳栓を使用する
長い時間、騒音下にいると騒音性難聴になってしまう可能性があります。騒音性難聴とは、内耳の細胞が騒音で失われてしまうことが原因と言われています。聴覚の損傷が始まるまでの時間はおよそ8時間と言われています。定期的に耳を休ませる時間を作る、耳栓を使用するなどして騒音に対して予防をしていきましょう。
耳掃除は適度に
基本的に耳掃除は2週間に1度程度でよいです。その際には竹の耳かきを使用しましょう。綿棒と比較して太くなく、程よい弾力性があります。そのため、耳垢を押し込んでしまうことが少ないです。
食生活を見直す
ビタミンやミネラルが多く含まれる黒ゴマ、ほうれん草、海藻類などを摂取することが耳の健康を保つことになります。食生活の偏りは、ストレスの蓄積にもつながるため、食生活を一度見直してみましょう。
いかがでしたでしょうか。難聴といってもさまざまあります。突然発症するものなどは特に注意が必要となり、早期治療を行わないと難聴が一生続く可能性があるものもあります。聞こえにくさや、耳鳴り、耳が詰まったような感じが2日続いて治らない場合は、様子を見ずにまずは耳鼻科に相談してみましょう。
<執筆・監修>
九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師
九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。
日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。