脳貧血(起立性低血圧)の症状と予防方法

お悩み

学校で先生の話を聞いているときに、突然倒れた人を見たことはありませんか?

急に立ち上がったときに意識を失ったり、めまいや立ちくらみが出たことはありませんか?

頻回に見られる場合は、脳貧血(起立性低血圧)かもしれません。今回は、脳貧血について詳しくみていきましょう。

脳貧血(起立性低血圧)とは

一般的に低血圧とは、成人で収縮期血圧が100mmHg未満の場合をいいます。起立性低血圧とは、寝ている状態から立ち上がったときに、収縮期血圧(最高血圧)が20mmHg以上、拡張期血圧(最低血圧)が10mmHg以上低くなる場合のことを指します。

罹患率は、年間1000人に6.2人で、高齢者では約60%の人が似たような経験をすると言われています。

本態性と症候性に分類され、本態性は原因となる病気がないにも関わらず起立性低血圧が起こることを指します。症候性は、糖尿病やパーキンソン病、多系統萎縮症、アルコール依存症、脱水症などの病気が原因となって起立性低血圧が起こることを指します。まれに潜在的に癌があり、腫瘍に随伴して起立性低血圧が起こることがあります。

検査としては起立検査を行います。立ち上がった際に血圧が下がらないかどうか、立ち上がって3分以内に血圧を測って調べます。その他には貧血がないか血液検査をします。

脳貧血の症状

立ち上がった際に、急に血圧が下がることで次のような症状が出現することがあります。

立ちくらみ、めまい

起立性低血圧では、急に立ち上がった際に、立ちくらみやめまいが起きます。また、その他にもずっと立っていると気分が悪くなったり、入浴時にのぼせて気持ち悪くなったり、車酔いをしやすくなったりする場合があります。

倦怠感、だるい

倦怠感や体のだるさが激しく、疲れやすくなります。朝なかなか起きることができず、午前中に調子が悪いのは起立性低血圧の特徴です。動悸や息切れをともなうこともあります。

その他の症状

頭痛や肩こり、疲れ目、胃もたれ、錯乱、霧視、食欲不振といった症状がみられることがあります。また、転倒、失神、さらには全身痙攣をきたすすこともあります。運動または大食が症状を悪化させてしまうこともあります。

起立性調節障害との関係

起立性調節障害は自律神経がうまく働かなくなることで起きる病態です。自律神経には血管の太さを縮めたり、拡張させたりする働きがあります。この自律神経が働くことで、血管を収縮させて足の血液を心臓に押し戻してくれます。

この自律神経がうまく働かなくなってしまうと、起立時に血管が十分に収縮できず、足に溜まった血液を心臓に押し戻してくれなくなり、脳への血流を十分に維持することができなくなります。

小学校高学年から高校生くらいの思春期に発症することが多く、頭痛、立ちくらみ、めまい、湿疹、朝起きられない、夜眠れない、腹痛、吐き気、食欲不振などさまざまな症状がありますが、症状の出現の仕方は個人差があります。

思春期の間に改善することが多いですが、大人になっても症状が続いている方もいます。また、午前中に調子が悪く、午後になると徐々に体調が回復してくることが多く、季節の変わり目や雨の日、台風や梅雨の時期など低気圧になる時に特に調子が悪くなります。夏は暑い日が続くことから血管が拡張して脱水傾向になって、症状の増悪を認めることもあります。

起立性調節障害の検査は起立試験を行います。10分ベッドで横になってもらい、安静時の血圧と心拍数を測定した後に、起立したあとの血圧と心拍数の変動で起立性低血圧、体位性頻脈症候群、血管迷走性失神、遷延性起立性低血圧、起立性脳循環不全型、高反応型の6つのタイプに分けます。このように色々なタイプの症状がある中で最も多い症状が起立性低血圧です。

脳貧血の予防方法

脳貧血の治療法としては薬物療法と予防方法があります。薬物療法では、交感神経作動薬(アメジニウムメチル硫酸塩、エチレフリン塩酸塩など)、血管収縮薬、鉱質コルチコイド(フルドロコルチゾン)といった血圧を上げる薬を使用します。予防方法、再発予防方法を詳しくみていきましょう。

急な動作に注意する

起立性低血圧は、急に立ち上がったときなどに立ちくらみやめまいが起こります。そのため、起き上がったり、立ち上がったりする動作をする場合は、ゆっくり行なって、急な動作は避けるようにしましょう。また、長時間同じ姿勢をとることは避け、適度に休憩しましょう。

生活習慣の見直し

血圧を正常に保つためには生活習慣がきちんとしていなければいけません。夜更かしは低血圧の原因となってしまいます。規則正しく早寝早起きを心がけ、睡眠時間は十分にとりましょう。頭を少し高くして寝るとなおいいでしょう。

食事も偏食はせず、バランスよい食事を摂るよう心がけましょう。良質なタンパク質や豆類、野菜、海藻などをたっぷり摂りましょう。血圧には水分、塩分が関係しているため、水分と塩分の摂取も大切です。しかし、摂りすぎには注意しましょう。過度のアルコールを摂ることで脱水を引き起こす可能性があります。お酒はほどほどにしましょう。

また、低血圧の方は湯船に少し熱めのお湯をはり、しっかりと浸かることで血流がよくなるため、おすすめです。

適度な運動を行う

血流を良くするためには、ウォーキングなど下半身が鍛えられるような運動を習慣にしましょう。運動時は、急にやめると低血圧につながってしまうため、徐々に力を抜きながらクールダウンを心がけるようにしましょう。マッサージによる血液循環の改善も効果があります。

弾性ストッキングを活用する

血圧が低いと足側に血液が滞りやすくなります。伸び縮みする弾性ストッキングを着用することで、血液を足にたまりにくい状況にし、立ち上がった際の立ちくらみを予防できます。

いかがでしたでしょうか。急に立ち上がったときに立ちくらみやめまいが出る方は、このような予防方法で改善することがあります。それでも改善しない場合は、医療機関に相談してみましょう。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

プロフィール

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