舌にできた黒い点の正体は?メラノーマなどの舌の異常
舌に黒い点ができて不安に思われている方はいらっしゃいませんか?
ネットで調べてみると、がんの可能性が示されていることもあるでしょう。しかし、割合としてはがんであることは稀で、がんであった場合でも他の原因では見られないような特徴があります。
ここでは舌にできた黒い点が何であるのか、いくつかの可能性と見分け方について解説します。
目次
舌にできる黒い点の原因は?
舌にある黒い点はいくつか原因が考えられます。簡単にはなかなか見分けがつかないのですが、見分けるにはいくつかのポイントがあります。
まずは見た目の色や形です。丸っこいのか、それとも不正な形なのか、輪郭ははっきりしているのかぼんやりしているのか。真っ黒なのか、それともすこし青黒いのか。これらのポイントに注目して見分けていきます。
もう一つのポイントは、黒い点ができるスピードです。ある日突然に大きなものができているのか、小さいものがだんだんと大きくなっているのかという点で注意してみましょう。
また、大きさもポイントになります。
これらの点に注目して、次に挙げる病気のどれに当てはまるのか考えてみるといいでしょう。
ただし、以下に示すのは大まかな特徴ですから、これで確定できるというわけではありません。不安であれば耳鼻科か口腔外科を受診しましょう。
ほくろ
最もよくみられるのがほくろです。ほくろは皮膚にもできますが、その正体はメラノサイトと言う細胞、メラニンと呼ばれる色素の増加です。
これらの色素は、皮膚の中でも表皮基底層という層にあります。皮膚は表皮、真皮、皮下組織に分かれています。表皮は最も浅い層にある層で、基底層という一番深いところにある細胞が細胞分裂をおこなうことでだんだんと増殖し、浅い層へと移動していきます。一番浅い層まで届いた表皮細胞は脱落し、フケや垢となります。
この表皮細胞の一番深い層で細胞分裂を起こす基底層の細胞の一種がメラノサイトで、そのメラノサイトが変性してできるのがメラニンです。メラニンは黒い色素で、皮膚のあらゆる場所にあります。
なお、このメラノサイトの数は人種差は無いと言われています。あくまで細胞の数は変わらず、細胞が産生する色素の量が違うために人種による皮膚色の違いが出ているのです。
さて、このように皮膚にあるメラニンは、紫外線を吸収することで日光による皮膚障害やがん化を防ぐ効果があります。
正常であれば通常の皮膚の中に混じっていますが、時折メラノサイトが集簇している場所ができます。この場所には変性してできるメラニンも多くなりますから、皮膚表面から診たときに黒っぽく見えるようになります。これがほくろです。
ですので、ほくろは正常の組織でも存在する細胞が集まっているだけですので、がんとは全く関係がない組織になります。
舌にもメラノサイト、メラニン色素は存在しますから、集まることでほくろができることがあります。舌にできていても、ほくろはほくろですから、一般的な特徴は同じです。
ほくろの場合は、円形に近い形で形成されます。また、辺縁は比較的はっきりしていて、どこまでがほくろかというのもはっきり分かります。細胞が増殖しているわけではありませんから、膨らんでいることはありません。舌で触った感じは他と変わらず、どんどん大きくなることもありません。
血種(血豆)
次によく診られるのが血腫です。いわゆる血豆ですね。
多いのは口を外から何かにぶつけ、歯に舌が当たることで受傷する場合です。ただし、いつでも血腫の原因が分かる訳ではなく、気づいたら血腫があるということもよくあります。
血腫というのは、皮膚のなかのどこかの層に出血して血がたまった状態です。多くの場合は皮下組織に出血します。
ある日突然現れ、大きさはさまざまです。ときどき非常に大きな血腫ができることもあり、びっくりします。辺縁ははっきりしていて、膨れている事も稀ではありません。
数日経過を見ていれば、血腫はだんだんと吸収されていきます。それに伴い、だんだんと小さくなり、最終的には元通りに戻ります。また、血腫に傷がついてそこから血腫が漏れ出し、縮小することもあります。その場合も経過を見ていれば大丈夫です。
血管腫
血管腫とは、血管を構成する細胞が腫瘍性に増殖する病気です。腫瘍性に増殖と言っても転移や浸潤を起こすことのない、良性の腫瘍です。ほとんどの場合は、小さい頃から少しずつ大きくなってきます。
良性の腫瘍ですから、細胞が増殖し、だんだんと大きくなります。舌がんかもと思われるかもしれませんが、年単位でゆっくりと大きくなること、表面は通常の舌の表面と同じ細胞で覆われているということ、傷がつくと出血はしますが、触っただけでは出血を起こすことはないことなどが、舌がんとは異なる点です。
悪性腫瘍ではありませんので、切除は必須ではありません。しかし大きくなってくると舌の機能に影響を及ぼすこともありますので、その場合はレーザーや液体窒素を使用して縮小化する治療が行われることがあります。
メラノーマ(悪性黒色腫)
先ほどほくろの項目で解説したメラノサイトが悪性腫瘍となって増殖する病気です。メラノサイトに繰り返し刺激が与えられることで細胞分裂の際に異常が起こり、がん化すると考えられています。
メラノサイトが元となっていますから、変性してメラニン色素を作ります。しかし、メラノサイトが無秩序に増殖し、周囲の組織に浸潤していきますから、表面から見たときに形はいびつで、辺縁もはっきりしません。多くの場合、周囲に黒い色素がしみ出したような形になっています。
増殖の速度は速く、数週間で明らかな増大が分かります。増殖の速度は皮膚の悪性腫瘍の中でも非常に早い分類となり、リンパや血液の流れによって転移もしやすく、予後は非常に悪いがんと言われています。早期発見治療が必要になります。
舌がん
舌にできるがんのことを、舌癌と言います。口の中にできる癌は口腔がんと言って、ほとんどの場合同じような性質を持っています。舌癌は口腔癌の中でも半数以上の割合を占めています。
癌は、その細胞の性質から扁平上皮癌や腺癌など、いくつかの種類に分かれます。舌癌をはじめとした口腔がんは、ほとんどが扁平上皮癌です。
癌は体の表面の細胞が異常に分裂することによって起こってきます。舌癌は、舌表面の細胞が異常に分裂することによって起こってきますが、成長するに従ってだんだんと深い層へと浸潤していきます。
深いところまで浸潤した場合には、多くの場合リンパ節への転移を起こします。特に頭頸部がんの場合には、首のリンパ節への転移を起こすことが多いです。リンパ節以外では、肺への転移が見られます。
悪性黒色腫がメラノサイトが腫瘍性に増殖することでできる腫瘍なのに対し、舌がんは舌の表面を構成する主要な細胞が腫瘍性に増殖することでできる腫瘍になります。
そのため、メラニン色素を持っているわけではありませんから、初期には黒色を呈さないことが多いです。しかしだんだんと大きくなってくるにつれて、表面の壊死が目立つようになり、黒い部分ができてきます。
壊死に伴って、触っただけでも表面が崩れ、出血します。ゴツゴツした表面も相まって、一目見てがんと分かる状態となります。
治療方法は手術となりますが、舌の機能を維持して腫瘍だけを切除することはなかなか難しく、取り切れないことや、舌を切除することで食事に深刻な影響を与えることもあります。
主要な危険因子は喫煙ですので、喫煙している方は注意が必要です。一方で、非喫煙者に発生することは稀です。
他にもある舌の異常
舌の異常は、これまで見てきた黒い点ができるもの以外にもあります。代表的なものを見てみましょう。
白板症
白板症は口腔内の粘膜が白く硬くなることを言います。粘膜は皮膚と同じように、深い層で細胞分裂をして成長するに従って浅い層へと移動していきます。白板症では細胞分裂が異常に亢進して細胞の数が異常に多くなるため、表面の粘膜が少し膨隆して硬くなり、白っぽく見えます。
後述する口腔カンジダ症も白っぽい病変になりますが、口腔カンジダ症は異常なものが付着するため、こすると脱落するのに対して、白板症はこすっても取れることはありません。
白板症の病変は刺激を多く受けることによってできてきます。そのため、口腔粘膜のどこにでもできるのですが、多くできるのは舌の側面や、歯に当たる頬の粘膜などです。
白板症は前がん病変として重要なものですから、気になった場合には早めに受診しておくといいでしょう。
地図状舌
地図状舌は舌の表面に、地図のような模様が生じる病気です。舌の粘膜がただれたように見えるので驚くことも多いですが、粘膜がただれているわけではありません。
粘膜は細胞分裂することによって保たれています。この細胞分裂が、粘膜の上でどこでも同じように行われていると、表面は特に異常がなく見えます。しかし、細胞分裂が部分部分によってスピードが異なると、まだらな表面になります。
粘膜の成長が部分部分で違うだけで、特に粘膜の成長が止まっているわけではありませんから、痛みなどもなく、特に心配する必要はありません。
口腔カンジダ症
カンジダは真菌、すなわちカビの一種です。カンジダはもともと口の中にいる真菌です。普段は、体の免疫によって抑えられ、増殖することはありません。
しかし、強いストレスを感じたり、疲労したりすると体の免疫が弱くなり、カンジダの増殖をきたしてしまいます。口腔カンジダ症になると、口の中を拭き取ったときに白いカスがついたり、唇が荒れたり、粘膜がヒリヒリしたりすることがあります。
口腔カンジダ症と診断された場合には、抗真菌薬を使用します。内服薬を使用することもありますが、多くの場合はうがい薬を使用します。
舌に黒い点を見つけたら?
では、舌に黒い点を見つけたら、実際にどのように対処すればよいのでしょうか。
見え方、できた経緯を確認する
まずは、黒い点をよく見てみましょう。特に前述の通り、辺縁の様子や黒色の性状についてよく観察します。そして、大きさと出来方の経緯を考えます。
これまでなかったのに、突然大きなものができていれば多くは血腫です。血腫の場合は、歯が当たる場所かどうかもヒントになりますので、確認してみましょう。
一方で、小さい黒い点であればほくろである場合がほとんどでしょう。小さい頃からだんだんと大きくなってきているのであれば血管腫です。
ほくろとメラノーマの見分け方
ほくろとメラノーマの見分けは、皮膚にできているものでもなかなか難しいものです。
皮膚科の病院ではダーモスコピーという虫眼鏡のような特殊な機械をつかって観察をすることですぐに見分けがつきます。
ただ、そのような機械を使わなくても、見た目である程度判断することができます。
前述のとおり、ほくろは多くの場合円形に近く、辺縁ははっきりしていて周りにしみ出すような像はありません。
一方で、メラノーマは円形になっていない場合が多く、辺縁ははっきりせず、しみ出すような像が見られます。それに加えて、左右対称でもなく、じわじわと広がっているような印象を受けます。
受診の基準
上記のように、ある程度は黒い点の性状から見分けはつきます。ですが、最終的には専門医がみてみないとはっきりと確定することはできません。
黒い点に気づいたら2週間程度様子を見て、変化がなかったり、縮小してくるのであればそのまま様子見でいいでしょう。
だんだんと増大してくるようであれば耳鼻科や口腔外科の受診をおすすめします。