ヘマトクリット値が低いのは貧血?がんやビタミン不足との関係とは
ヘマトクリット値をご存知でしょうか?あまり説明されることは少ないですが、血液検査を受けると赤血球数、ヘモグロビン値と一緒に記載されています。
ここではヘマトクリット値によってどのようなことが分かるか、特に値が低いとどうなるのかについて詳しくみていきましょう。
ヘマトクリット値とは
ヘマトとは血液、クリットとは分離を意味し、ヘマトクリット値は血液中に赤血球が占める割合(%)、またはそれを測定する検査のことをさします。ヘマトクリット検査は、採取した血液を遠心分離器で固体である血液と液体の漿液に分けて測定します。基準値は、成人男性で40〜50%、成人女性で34〜45%です。
ヘマトクリット値と貧血の関係
赤血球と血色素量(ヘモグロビン濃度)と合わせて、貧血を診断する指標のひとつであり、ヘマトクリット値が低い場合は貧血の可能性があります。低くなる原因としては鉄不足とタンパク質不足が挙げられます。
鉄分不足
ヘマトクリット値は、主に鉄分不足によって低くなります。鉄は赤血球を構成するのに欠かせない栄養素で、これが不足すると赤血球が十分につくられずヘマトクリット値も低くなります。
鉄不足の原因として考えられるのは過度なダイエット、偏った食生活、妊娠や授乳、失血による鉄分の排出、胃の切除による鉄の吸収低下が挙げられます。
ヘム鉄を多く含む食物としてカツオ、マグロ、イワシ、レバーなどの動物性食品や、ほうれん草、小松菜、ひじきなどの植物性食品が挙げられます。ヘマトクリット値が低下している方はこのような食物を含む食事を摂ることで鉄分をしっかりと補うことができます。
タンパク質不足
鉄だけではなく、タンパク質も赤血球の材料となります。そのため、タンパク質不足もヘマトクリット値を下げる原因となります。
また、子供や高齢者は食事の量自体が成人に比べて少ないため、鉄やタンパク質の摂取量も不足しがちです。そのため、ヘマトクリット値も低い傾向があります。
そのほかにも女性は月経により毎月一定量の出血がみられるため、経血と一緒に鉄分が排出されてしまい、ヘマトクリット値が低下してしまいます。妊娠中や授乳中は胎児や乳児に優先的に鉄分が送られるため、ヘマトクリット値が低くなります。
ヘマトクリット値とビタミン不足の関係
赤血球が作られる際に必要なビタミンがあります。それがビタミンB12や葉酸です。このビタミンB12や葉酸の欠乏は、ほとんどの場合食事に欠けていたり、消化管から十分吸収されなかったりすることが原因で生じます。
葉酸の欠乏は、ときにがんの治療に使用される薬が原因で起こることもあります。消化管から十分吸収されない要因として胃の手術をした人などが挙げられます。
ビタミンB12や葉酸の欠乏による貧血の症状はゆっくりと進行し、疲労、脱力感、蒼白など、別の原因による貧血でみられる症状に似ています。ビタミンB12欠乏により、チクチクとした痛みや感覚消失、筋力の低下などが起こり、体の不調に対して神経過敏になることもあります。
重度のビタミンB12欠乏症では、錯乱を起こすこともあります。高齢者では、ビタミンB12欠乏症による貧血が認知症と間違われることもあります。
ヘマトクリット値とがんの関係
がんにかかると、がんができた部位から出血が起こることによって貧血になる可能性があります。また、がん細胞が骨髄へ入り込んでしまうと、骨髄の中で血液をつくることが難しくなり貧血になることがあります。
さらに、がんにかかると人によっては食欲が低下してしまうとため、赤血球の材料となるタンパク質、鉄分、ビタミン類などが十分に摂取できなくなり、貧血になりやすくなってしまうこともあります。
抗がん剤などの化学療法や放射線療法などがんの治療をすると、骨髄内の血液細胞をつくるはたらきが低下してしまう(骨髄抑制)ほか、赤血球が通常より壊れやすくなる(溶血)ため、貧血になりやすくなります。
胃がんの手術をした場合には胃の機能が低下し、赤血球やヘモグロビンをつくるために必要なビタミンB12や鉄などの栄養素を吸収できなくなってしまうので、貧血になりやすいといわれています。特に胃を全摘した人は注意が必要で、手術直後だけではなく、手術から数年経った後に貧血になることもあります。
いかがでしたでしょうか。血液検査をする機会がありましたら、一度ヘマトクリット値を確認してみるとよいでしょう。値が低く、原因がわからずに心配な場合は医療機関で検査をして原因をはっきりとさせることをオススメします。