銀杏(ギンナン)の効果、効能について
▼咳止め、頻尿、降圧
菩提寺の境内にイチョウの老木がありました。秋が深まると黄葉して陽に輝き、子ども心にも荘厳な感じを受けたものです。「銀杏散る兄が駆ければ妹も」大樹の下は子どもたちの遊び場でした。頭上からはらはらと落葉が始まると、みんな駆け出してきて拾います。狙いは実の方ですが、葉を拾うのはその前哨戦でした。イチョウはまれに千年の寿命を保つといいます。美しく大らかな樹形です。
銀杏(ギンナン)とは?
イチョウは室町時代に中国から渡来し、神社や寺院の境内に植えられたというイチョウ科の落高木。枝に長枝と短枝があり、葉は扇を広げたような形で二股に分かれた葉脈のあるのが特徴でしょう。種子は熟すると外種皮が黄色くなり、肉質の臭気のあるものに変わります。果皮を除くと白くて硬い核仁が出てきますが、これがギンナンです。
採取方法
ギンナンを得るには、秋に落ちた実を集めて土中に埋めるか、水に漬けて果肉を腐らせ、白い内種皮に包まれた種子を日干しにします。必要に応じてこの内種皮を破り、中の核仁を用いるわけです。外種皮には接触性皮膚炎を起こす成分が含まれていますので、採取するときはゴム手袋を用いるとよいです。
銀杏(ギンナン)の効果、効能
漢方ではこの核仁を「銀杏」といいます。銀杏には蛋白質が多く、脂質の中にはレシチン、エルゴステリンなどが含まれています。その効能として『本草綱目』には「熟食すれば肺を温め、気を益し、喘漱を定め、小便を縮む」とありました。つまり咳止めと抗利尿の作用を説いています。薬効を期待するには焼いたギンナンを五~一〇個食べればよいでしょう。
漢方の咳止め定喘湯にも銀杏が配合されているから、咳や痰に効くのは頷けることです。また中国では結婚式の前に、花嫁に銀杏を食べさせるといいますが、尿意を催さないように抗利尿の働きを応用したと考えられます。冷え症の女性に多い頻尿や子どもの夜尿症に、銀杏が効くのも確からしいです。それは膀胱の括約筋を強くする成分が含まれているからです。
酒場などでよく、ギンナンの強精効果が話題になっているのを耳にします。だが期待するほど顕著だとは思えないし、むしろ食べ過ぎには注意したいです。青酸性の成分が含まれているからで、量がすぎると消化不良をおこし嘔吐や痙攣をみることもあります。とくに子どもは五個くらいで止める必要があります。
銀杏(ギンナン)の不思議
実よりも話題にしたいのは葉です。イチョウの葉からフラボノイドを抽出して血管調整剤を開発したという報告もあるから、やがて降圧剤の新薬が登場するかもしれません。イチョウの葉を本のしおりにすると紙魚がつきにくいし、葉の煎じ液で温湿布するとしもやけに効くことなども意外に知られていないのではないでしょうか。さらに動く精子を生じたり、幹や枝から乳柱が垂れ下る例もあり、イチョウの生態はナゾが多いです。