痒くないお腹の皮疹の原因は?ジベルばら色粃糠疹や梅毒など
お腹に皮疹ができたけれど、かゆくないので原因が気になったことはないでしょうか。湿疹が起こると多くの場合かゆみを伴いますが、かゆみを伴わない皮疹となるとかなり鑑別が絞り込まれます。ここではジベルバラ色粃糠疹や、梅毒によるバラ疹を中心に皮疹の原因について解説します。
目次
ジベルばら色粃糠疹とは
ジベルバラ色粃糠疹とは、体幹部の皮膚にできてくる皮疹です。どのようなものでしょうか。
ジベルばら色粃糠疹の症状
ジベルバラ色粃糠疹ができる原因は不明です。しかし、何らかのウイルス感染によって起こるのではないかと考えられています。特にヘルペスウイルスが関係していると言われていますが、正確には分かっていません。
症状としては、全身に出ることもありますが、多くの場合体幹部を中心とした部位に紅斑と呼ばれる赤い斑点がたくさんできてきます。この赤い斑点は皮膚割線と呼ばれる皮膚にできる線条に沿って広がり、配列模様がクリスマスツリー様にみえるのが特徴です。
初発症状としては親指ぐらいの大きさの赤みが少し強い数個の皮疹ができます。これを初発疹とよび、その後全身に広がっていくのが一般的です。また初発疹もそれに続く皮疹も、表面に皮膚の角質が変化してできた粉がふいたような状態が出てくるのも特徴です。
皮膚に紅斑ができるものの、発熱や倦怠感等の全身症状が出ることはあまりなく、かゆみが出ることもほとんどありません。
ジベルバラ色粃糠疹が出やすいのは比較的若い人で、10代から30代頃に好発するとされています。また発症する時期としては夏より冬に多く、風邪症状が先行する事も多いです。
こう説明すると、いかにも感染しそうな病気と考えがちですが、何らかのウイルスに対して身体が二次的に反応しただけであると考えられており、皮疹自体が感染することはありません。
ジベルばら色粃糠疹の治療
ジベルバラ色粃糠疹は、ほとんどの場合1~2か月で跡を残さず自然治癒します。そのため、何らかの治療を必要とすることは稀です。しかし、稀にかゆみが非常に強い場合もあり、その場合には症状に対する塗り薬や飲み薬を使用します。病気自体を治療するのではなく、あくまで症状を抑えるための治療が行われるだけです。
また、再度何らかの感染が起こらない限りは再発もありませんから、再発予防のために何かをすることはありません。
梅毒の発疹は痒くない?
皮膚に皮疹ができるとなると、梅毒を想起される方もいるでしょう。では梅毒の皮疹にはどのような特徴があるのでしょうか。
梅毒の症状の変化と発疹ができる時期
梅毒は感染してから一定の症状があるわけではなく、時間の経過に合わせてどんどんと症状が変化していきます。
第一期の症状
まず第一期は感染御3週後から3ヶ月後頃に見られる時期を指します。このような段階では、初期硬結と呼ばれる硬いしこりができます。
できる場所は男性の場合、亀頭と陰茎の間や亀頭、陰茎そのもの、性器周辺の皮膚などです。
女性の場合は子宮膣部といって膣の中や、大陰唇および小陰唇付近の皮膚などです。また、男性女性共通として口腔粘膜や咽頭粘膜にできます。初期硬結はその名の通り硬い塊が皮下にできるもので、皮膚の色調が変化するわけではありません。
第二期の症状
第二期には様々な皮疹が見られます。その中でも特徴的なのはバラ疹になります。バラ疹については後述します。ほかには丘疹性梅毒といって体中にエンドウ豆代の休診ができたり、扁平コンジローマと言って陰部や肛門周辺の皮膚に扁平上のイボができたりします。梅毒性の脱毛や白斑、爪周囲炎なども起こってくる事があります。
第三期の症状
第三期には皮膚や粘膜だけではなく骨や筋肉、臓器に硬いしこりやゴム状の腫瘍ができます。とくに鼻周辺にゴム種ができると鞍鼻といって最悪の場合鼻が欠損してしまいます。第三期は3年後から10年後頃の症状となります。
第四期の症状
第四期は10年以上経過した梅毒になります。心臓や血管、中枢神経にも悪影響が出てきます。梅毒の末期状態です。
このように、梅毒になると期間を通して様々な皮疹ができてきます。
梅毒の「バラ疹」の特徴
梅毒によるバラ疹は、前述の通り感染から3か月程度経った後に出てくる皮疹です。身体の様々な部位に0.5~2cm程度のピンクから赤色の発疹ができてきます。この発疹は体幹部だけではなく四肢にもでき、特に手のひらや足の裏にもできるというのが特徴です。
見た目は名前の通りちいさな薔薇の花に似た形をしているのが特徴ですが、一目見ただけではアレルギーや風疹、麻疹と間違えてしまうこともあります。
バラ疹そのものだけで判断するのではなく、梅毒への感染の可能性があるかどうかや、ほかの皮疹などの情報も踏まえて慎重に判断をすることが求められます。
痒くないお腹の皮疹のその他の原因
かゆくないお腹の皮疹としてはほかにどのようなものがあるのでしょうか。
薬疹
薬疹は、その名の通り薬の使用によって起こってくる皮膚の変化を指します。
多くの場合は薬に対するアレルギー反応で起こってきますが、アレルギーの機序によらない薬疹も時々見られます。ただし、ほとんどの場合はアレルギーであり、臨床上重症化しやすいのもアレルギーによるものですから、非アレルギー性のものはあまり気にしなくて良いでしょう。
内服薬で起こりやすいですが、外用薬でも起こらないわけではありません。原因となる薬剤、また、どの薬剤でどのような皮疹が起こってくるのかは人によってさまざまです。
薬疹が起こるためには身体がアレルギー反応を起こすように変化しなくてはなりません。薬に対して反応する細胞や抗体が産生されるようになることでアレルギーが出てきます。
通常内服を始めて1~2週間程度経った後にこのような細胞や抗体ができてきて、発症してくると言われています。ですので全く内服したことのない薬では基本的には薬疹は起こってきません。ただし、似たような構造の薬を内服したことによって細胞や抗体ができている可能性は否定できません。
薬疹と言っても多くは皮疹が出てくるだけで数時間経てば皮疹も引いて軽快します。時折重症のものとしてスティーブンスジョンソン症候群や中毒性表皮壊死症といった薬疹があります。全身に皮疹ができるだけではなく、皮膚がボロボロと脱落したり、内臓にも異常が出たりと、さまざまな影響が全身に出て命に関わるような状態です。
特定の薬を内服した後に皮疹が出るという場合にはすぐに内服を中止し、病院を受診しましょう。
帯状疱疹
帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルスによる感染症です。と言っても、水痘・帯状疱疹ウイルスが他の人から移る事によってすぐに起こるものではありません。
水痘・帯状疱疹ウイルスは小さい頃に多くの人が感染しています。感染して水痘として風邪のような症状を発症した後、軽快します。しかし軽快してもウイルスは体内の神経細胞の中に潜んでいるのです。このウイルスが、身体の免疫力が低下することによって活性化し、神経に沿って増殖するのが帯状疱疹です。
神経に沿って増殖するため、帯状に病変が広がるのが特徴です。神経自体が障害を受けるため痛みを感じるほか、神経の表面となる皮膚に水疱が出現します。もちろん、帯状に水疱が並んでくるのが特徴です。
早いうちに治療をしなければ神経痛が残る可能性が高くなりますので、かゆくなくても帯状に広がる皮疹、特に痛みを伴う場合にはすぐに病院を受診するようにしましょう。