地域医療を守る「本当のかかりつけ医」とは？【Doctors’ Columns #02│菊池 大和】
医療業界で活躍する専門家をお招きし、現場で感じたことを自由に執筆いただく、Doctors’ Columns。第2回は医療法人ONE きくち総合診療クリニック、理事長・院長の菊池 大和さんに「かかりつけ医」をテーマに執筆いただきました。
──────────────────
私は、2017年に神奈川県綾瀬市で開業しました。きくち総合診療クリニックは、本当のかかりつけを目指し、「いつでも、なんでも、だれでもまず診る」という理念の下、救急診療・総合診療を通じて、地域医療に最大限に貢献するべく、日々診療しています。ここでは私が考える「本当のかかりつけ医」について述べたいと思います。
「かかりつけ医」とは？
厚生労働省が定義するかかりつけ医とは
- 健康に関することをなんでも相談できる
- 必要な時は専門の医師・医療機関を紹介してくれる
- 身近で頼りになる医師
のことです。
さて、みなさんが住みなれた地域にはこのような先生はいますでしょうか。
自分が普段通院しているクリニック・病院は、この3つを満たしているでしょうか。
残念ながら、このようなかかりつけ医は極めて少ないのが現状です。医師によっては自分の専門分野以外は診ないこともあります。
しかし、頼りにできるかかりつけ医がいなければ、患者さんはいざというときに困ってしまうでしょう。いくつもの病院に通院し、たくさん検査をして、多くの医療費が必要になるかもしれません。
体調が悪いときにどこにいけばいいかわからないという人が少なくないのが現状です。
目指すのは「本当のかかりつけ医」
当院の特徴は、土日祝日診療・20時までの診療であること、CTやMRIなど高度な医療機器を完備し、病気の早期発見に力をいれているところです。患者さんは、ここのクリニックをかかりつけにすれば、どこの医療機関も受診しなくて済むわけです。実際、需要もとても多く、綾瀬市人口84,000人のうち、34,000人が受診通院しています。
超高齢化社会に突入し、複数の病気をもつ方が増えています。臓器別にわかれた専門の病院をいくつもかけもちしていたら疲れてしまいますし、ご本人ご家族も大変です。
きくち総合診療クリニックのような総合診療クリニックが全国に拡がれば、地域医療が守られ、住み慣れた地域で安心して暮らせることを確信しています。
医師の教育に期待
そうはいっても、患者さんが探してもこういったクリニックはそう簡単に見つけられません。実際は、開業する医師は自分の専門分野で開業することが多く、臓器別のクリニックが増えるのも仕方ありません。
国が考えるかかりつけ医を増やすには、医師の教育が一番大事です。学生や研修医のときから、地域で開業するための特別なプログラムを作成し、国家試験卒業後10年で総合診療クリニックを開業できるようにすることが必要です。
そこには、国の財政支援もあってもいいかもしれません。そこまでしないと総合診療クリニックが全国に拡がるのには時間がかかるでしょう。
新型コロナウイルス感染症の例を見ても、発熱を診てくれるクリニックがないので、いわゆる診療難民が増えてしまいました。こうした状況では地域医療を守るのは困難です。
本当のかかりつけとは、どんな症状でもまず診察しなければいけません。患者さんの健康を守るのが医師の仕事です。患者さんはまず近くのクリニックに受診します。そこから診察・治療がはじまるのです。
これから開業を目指す先生方へ
医師になりたいと思っている学生の方、医学部生、研修医の先生、これから開業しようと思っている先生方、一緒に地域医療を守りませんか。救急疾患を勉強し、一般的な疾患を勉強して、総合診療クリニックを開業しましょう。
一人でやるのでなく、複数の医師でやればいいです。近隣の総合病院と顔の見える関係を築き、患者さんをスムーズに紹介できるようにしましょう。
患者さんを地域医療で守りましょう。私は開業して思うのは、本当のかかりつけ医は医師の最高のやりがいということです。一番患者さんに近い場所にいることは、医師としての役割です。いつでも私にご連絡いただければ、開業の相談にのります。
これから、日本中に総合診療クリニックという名の、本当のかかりつけ医が増えれば、日本の地域医療が守られると確信しています。
