血圧が低い時に足をあげる理由…低血圧の分類と対処法
立ちくらみやめまいを経験した人は多いのではないでしょうか。こういった症状が出ても多くの方が特に気にしていないかもしれませんが、実はその症状は低血圧が原因のこともあります。
ここでは低血圧の分類を取り上げ、仰向けで足をあげる「下肢挙上」と呼ばれる方法などを紹介します。
低血圧とは
血圧は、血液が血管を押す力のことをいい、血液が強く血管を押すことで全身に血液が循環するため、低血圧になると十分に全身に血液が循環しなくなることで、様々な症状や内臓の障害をきたすことがあるのです。
低血圧の基準は世界保健機関によって収縮期血圧100mmHg以下、拡張期血圧60mmHg以下と基準が定められています。収縮期血圧と拡張期血圧とは、いわゆる上の血圧、下の血圧のことです。
低血圧の方が訴える症状として最も多いのが、立ちくらみとめまい、あるいは身体がだるいと感じたり、疲れやすく感じたりと症状は様々です。
低血圧の症状は一般的に男性より女性の方が多いといわれています。
低血圧の人の中には、無症状の方もいますが、高度の場合には意識を失ったり、一過性脳虚血発作といって一時的に脳の血管が詰まったりすることがあります。
低血圧の分類
低血圧には本態性低血圧、症候性低血圧、起立性低血圧があります。それぞれの特徴を確認しましょう。
本態性低血圧
低血圧の原因は、原因が特になく元々血圧が低い場合と、原因が明確に判明している場合があります。
本態性低血圧症とは、慢性的に低血圧の状態が続く慢性低血圧のなかでも、低血圧となる原因が特定できない場合を指しています。低血圧を起こしている原因は判明しませんが、何らかの自覚症状があるものを意味しています。
本態性低血圧は低血圧症の約9割を占めており、特別な原因疾患を伴わずに血圧が慢性的に低い状態で、体質が原因である場合が多く、特に本人が悩まされている症状がなければ、一概に病気とはいえません。
症候性低血圧
心臓疾患・内分泌系器官疾患・自律神経失調症などの他の疾患、あるいは降圧剤や向精神薬などの副作用が原因となって、低血圧が引き起こされるものを症候性低血圧と呼んでいます。
怪我や外傷による出血、心臓病、胃腸疾患による栄養不良、内分泌の異常、悪性腫瘍の末期などで二次的に症候性低血圧が起こることがあります。
この場合は、原疾患の治療を行う、薬剤の処方を変更するなどして、低血圧に関連する症状の改善を図ります。
起立性低血圧
急に立ち上がったときや体を動かしたときに立ちくらみを起こすなど、急激に血圧が下がる状態をいいます。
下半身にたまった血液が心臓に戻りにくくなるために起こるもので、動作を起こす前に比べて動いた後の収縮期血圧が20㎜Hg以上、あるいは拡張期血圧が10~15㎜Hg以上低くなる状態であり、高血圧の人でもこの現象が起こることがあります。
起立性低血圧は、立ち上がったり起き上がったりしたときに血圧が急激に下がり、めまい・ふらつき・失神などの症状が現れます。
こうした症状は、体が重力に逆らって血液を上に送り上げるために必要な血圧が十分に維持されず、脳に十分な血液が行き渡らなくなることによって起こります。
起立性低血圧は、健康な人でも急に立ち上がったときに起こる場合がありますが、多くの場合、高齢者・自律神経機能障害を持つ人などでみられることが一般的です。
その他にも、神経難病・心臓病・内分泌疾患・貧血・脱水症状・薬剤の副作用など、様々な疾患や原因が関与していることがあります。
治療には、原因を特定し、その原因に合わせた治療が必要で、一般的には水分補給や塩分摂取の増加・弾性ストッキングの着用・運動療法などが有効です。
また、特定の疾患によって引き起こされる場合は、その疾患に対する治療が必要になります。
下肢挙上とは?血圧が低い時に足をあげる理由
下肢を挙上する行為は、重力によって下肢の静脈血が右心房圧を増大させることにより、心拍出量が増大することに伴って、動脈血圧を上昇させます。
下肢挙上は血管迷走神経反射による血圧低下に効果があり、ショック時の応急処置として特に脳血流を保持するために実施されることがあります。
脳血流が低下すると、脳が虚血状態になり不可逆的な障害を残しますので、ショック時の下肢挙上は、まず脳血流を保持することを最優先として行われます。
血圧が下がりすぎて、めまいや立ちくらみの症状がある場合には、転倒して骨折してしまうリスクがあるため、その場にしゃがんだり、横になれる場所が近くにある場合には横になったりして安静にするようにしましょう。
ショック兆候がみられる場合は、身体の危険のサインです。すぐに身体を仰向けにして下肢を挙上することで血液の循環が良くなり、症状が改善することもあります。
低血圧に効果のある対処法
低血圧を改善するために、次に紹介する方法を取り入れてみましょう。
入浴で血行をよくする
低血圧の入浴法として少しでも血圧を低下させないために、42℃くらいの熱めのお湯に入浴する方法があります。
交感神経を刺激することで細動脈を収縮して、動脈の血圧低下を抑えようとする入浴方法が知られていて、半身浴が効果的とされています。
半身浴の場合には、下半身(みぞおちから下だけ)を30分~40分間かけて、ゆっくりお湯に浸かります。水圧の影響がほとんどなく、心臓や呼吸器への負担をかけずに体を芯から温められます。
低血圧は、身体の一番高い位置にある脳が影響を受けやすく、急に立ち上がるとめまいや立ちくらみを起こしやすいという特徴があります。入浴時は転倒しないように安全に入浴することを心がけましょう。
カフェインを摂取する
食後低血圧の人は、一度に食べる量を少なくして食べる回数を多く確保する、あるいは食後にお茶やコーヒーなどカフェインを含む飲料をとるとよいでしょう。
一般的に、カフェインは、交感神経を刺激して、血液のめぐりをよくします。
ただし、カフェインをとることにより、眠れなくなる場合は、食後にこだわらず、朝食前にだけカフェインを摂取するようにしてもいいでしょう。
カフェインを多く含む飲み物は利尿作用があるため、身体に水分がたまらずに脱水傾向になりやすく、低血圧になりやすいため過剰なカフェインの摂取は控えましょう。
低血圧は血管内の血液量が不足することで起こる場合があります。水分不足は血液量の減少を引き起こし、低血圧を引き起こす原因になりますので、水分補給を十分に行い、適度な水分バランスを維持するようにしましょう。
筋トレを取り入れる
適度な運動をすることで、筋力を増加することができます。
長時間立っていることで低血圧となる場合もありますが、この場合筋力が弱いなど肉体的な要因があることもあります。
運動不足の方は、散歩や筋トレからでも運動を始めてみましょう。
寝起きにすばやく起き上がると、頭の血流量が一気に下がり、低血圧となることがありますので、起き上がる前に少し足を動かして血のめぐりをよくしてからゆっくり起き上がるようにするとよいでしょう。
まとめ
これまで血圧が低い時に足をあげる理由、低血圧の分類と対処法などを中心に解説してきました。
高血圧は身体に良くないというイメージはあるかと思いますが、低血圧も身体の不調をもたらすことがあります。
ご自身や大切な方が低血圧の疑いがある場合、不安に感じてしまうものです。低血圧のときは、下肢挙上を実施する、あるいは日常生活習慣を見直すことで改善できることがあります。