睡眠をサポートするアミノ酸!グリシンの効果と副作用
良好な睡眠を得るために様々な工夫がなされていますが、 近年注目されているのがグリシンです。どのような作用が期待できるのでしょうか。また副作用の心配はあるのでしょうか。 詳しく見ていきましょう。
グリシンとは
グリシンはアミノ酸の一種です。アミノ酸は、体の中で合成ができない必須アミノ酸と、体の中で合成ができる非必須アミノ酸に分かれます。グリシンはその中でも、非必須アミノ酸に分類されています。
グリシンはアミノ酸の中でもかなり小さく、単純な構造をしています。体の中ではセリンやスレオニンといった物質から合成されます。
体の中でグリシンは様々な場面で使われます。DNAやRNAの原料として核酸を合成するためにも必要な成分です。また、様々なタンパク質の原料としても使用されます。血液を運搬するための成分であるヘモグロビンや、筋肉を収縮するためのエネルギーの源となるクレアチンも、グリシンを原料として合成されます。
他には、コラーゲンの原料としても使用されます。コラーゲンのうちのおよそ3分の1はグリシンが占めているため、美肌を保つ 効果や、コラーゲンが存在する関節などにとっても重要な物質と言えます。
原料として使用されるだけではなく、グリシン自体が体の機能を維持するためにも使われています。特に脊髄や脳幹に多く存在し、中枢神経系で主に抑制系の神経伝達物質として働きます。抑制系というのは、頭を休めるために働くものと考えればいいでしょう。睡眠の質を高めたり、不眠を改善したりする効果があります。
また、活性酸素を抑えることによって肌の質を改善したり、生活習慣病や老化を抑制したりしてくれます。
グリシンが見つかったのは1820年のことです。ゼラチンの加水分解物から結晶として発見されました。グリシンは他にも、絹糸からも見つかることが分かったり、隕石からも見つかったりと、様々な場所から見つかっています。
グリシンはどんな食品に含まれる?
グリシンは、牛すじや鳥の軟骨、豚足などの動物性コラーゲンに多く含まれています。人間と同じように、動物たちも体の中でグリシンを合成しており、それがコラーゲンに貯留しているのです。
また動物だけではなく、海産物にも含まれています。海老やホタテなどの魚介類にも含まれ、グリシンに甘みがありますから、海老やホタテの甘味はグリシンによるものと考えていいでしょう。
ほかにもイカやカニ、カジキマグロにも含まれおり、私たちがグリシンを摂取する機会は多いといえます。
グリシンに副作用はある?
グリシンは体の中でも合成しているようなありふれたアミノ酸です。グリシンが多くなることによる問題は起こってきません。副作用はほとんどないと考えていいでしょう。一方、まれに悪心、嘔吐といった症状が現れるという報告があります。
グリシンに期待される効果
グリシンを摂取すると、どのような効果が期待できるのでしょうか。
睡眠のサポート
グリシンが睡眠のサポートになるということは、近年まであまり考えられていませんでした。2002年に有効性を科学的に証明する臨床試験を行った際に、対象群として何の効果もない偽薬としてグリシンを用い、参加者の一人がグリシンを摂取した翌日に疲労感が軽減したことに気づいたのが研究のきっかけといわれています。
睡眠に問題がある人に、就寝30分前に3gのグリシンをとってもらい、日中の状態を調べた研究があります。睡眠に問題のある人たちは、頭がすっきりしないであるとか、寝ても疲れが取れない、熟眠感がない、やる気が出ないといった様々な症状を訴えていましたが、グリシンを摂取することで朝はすっきりと起床することができ、日中の作業効率も良くなることが分かりました。
さらにグリシンを飲むと、寝付いた後すぐに深い眠りとなり、眠りのパターンも自然なものに近づくといった、良質な睡眠の脳波になっていることが分かりました。グリシンが脳の体内時計に作用して、睡眠のリズムをうまく調節したためではないかと考えられています。
またグリシンは、脳だけではなく体全体に作用することによって、睡眠をより良いものとしているようです。グリシン が体内に入ると、血管が拡張し、表面の体温の上昇が促される結果、体内の熱が放出されます。それによって深部体温が下がります。
体温が高い状態だとなかなか寝付けなかったり、睡眠の質が良くなかったりしますが、グリシンを摂取することで、そのような状態の改善を期待できます。
うつ症状の予防
グリシンには脳内の伝達物質であるセロトニンを増加させる効果があります。セロトニンが不足すると、うつ症状を引き起こすと言われています。
グリシンの摂取でセロトニンが増加すれば、抑うつ効果を期待できます。また、セロトニンを介した作用だけではなく、グリシンは神経の高ぶりを抑えることによって、不安な気持ちを抑制する働きがあるとも言われています。
中枢神経系に存在するNMDA受容体と呼ばれる受容体にグリシン が結合することによって、抑制系の神経伝達を調整します。これによって不安感や恐怖などの感情が抑えられ、精神が安定します。
健やかな肌をつくる
グリシンはコラーゲンの3分の1を占める成分です。グリシンを摂取することは、 肌の状態を維持するのに役立ちます。
コラーゲンは肌の真皮層の大部分を構成する成分で、肌の弾力を維持するために必要です。そのため、コラーゲンの原料であるグリシンをしっかりとることは、肌の張りや弾力を維持することにつながります。
また、角質層も重要です。 角質層の細胞はケラチン繊維と繊維間物質から構成されています。この繊維間物質には、肌の潤いを保つ 天然保湿成分が存在していますが、グリシンはその天然保湿成分の約40%を占めています。
睡眠をサポートするその他のアミノ酸
睡眠の質を向上させるアミノ酸には、グリシン以外にもトリプトファンや、GABAがあります。
トリプトファンは鶏胸肉や卵、チーズ、大豆製品などに含まれるアミノ酸です。感情を落ち着かせる働きのあるセロトニンや、体の睡眠リズムを整えるメラトニンは、トリプトファンから合成されます。トリプトファンが増えると、セロトニンやメラトニンが作られスムーズな入眠や、適切な睡眠リズムにつながります。
GABAは玄米や穀物類、トマトなどに含まれています。GABAは脳や脊髄で抑制系の神経伝達物質として働き、脳内血流を活発にして酸素供給量を増加させたり、 脳細胞の代謝機能を高めたりします。また、興奮を抑える働きがあり、心身のリラックスに役立ちます。