当帰を含む漢方薬の効能と副作用とは?当帰含有の漢方薬を解説
女性の貧血や冷え性に用いられる漢方薬によく用いられることがある「当帰」という生薬があります。名前を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?生理痛や更年期障害などの婦人科のトラブルにもよく用いられる生薬であり、当帰には優れた「補血」作用があります。今回はその「当帰」に着目して、効能と副作用、処方される漢方薬の種類について紹介していきます。
目次
当帰とは??
当帰はセリ科の植物であり、セロリに似た芳香を持ちます。当帰の語源は「当(まさ)に帰る」という言葉から来ていて、子宝に恵まれずに里に返されていた妻が当帰を飲むことで妊娠できる身体になってから夫の元へ帰る、ということに語源があると考えられています。
当帰は西洋ではAngelicaとも呼ばれ、メディカルハーブとしても利用されています。Angel エンジェル(天使)を語源としていて、病気に困っている人を癒す天使のような作用があることからその名がついたという説があるほどです。セイヨウトウキという品種は、消化不良、食欲不振などに使われるハーブとして知られ、身近なハーブティーとしても利用されています。
当帰の効果
当帰の主な作用は血を増やして補う「補血作用」と血の巡りを促すことにより「温める作用」です。その作用により、乾燥を改善したり、血行不良、冷えを改善します。
古くから婦人科系に用いる重要な要薬として用いられており、妊娠しやすい体づくりや産前産後の体力づくりに利用されてきました。
鎮痛作用、抗炎症作用、抗菌作用など多くの薬理作用も確認されており、主に次のような臨床的な効果があります。
- 月経不順、月経困難、生理痛の改善
- 不妊症
- 冷え性、更年期障害、産前産後
- 貧血
- 肩こり、腰痛
当帰の副作用と注意点
漢方薬や生薬というと副作用が少なく安全な薬と思われがちですが、薬である以上は副作用が起きることもあります。
当帰の場合には、食欲不振、胃部重圧感などの胃腸障害を起こすことがあります。当帰は体力の少ない虚証タイプの人にも用いることができる生薬ですが、過量服用や長期使用による副作用には注意が必要です。
さらに、血流を増やして血行を促す作用があることから、飲みすぎると効果が強くでて鼻血や耳鳴りなどののぼせ症状が出ることがあります。ひどくなると中耳炎を起こすこともあるので注意しましょう。
当帰を含む漢方薬と使い方
当帰は女性に用いられる漢方薬によく使われている生薬です。主に血の不足している人の補血目的で用いられることが多いですが、その効果は漢方薬によって差があります。当帰が入っているかどうかで漢方を選ぶのではなく、処方全体から判断して自分にあった漢方薬を選ぶことが大切です。
次に当帰を含む代表的な漢方薬とその使い分けについて紹介します。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
主に痛みや冷え、月経不順などを抱える女性に用いられる漢方薬です。疲れやすく比較的体力のない、貧血傾向の人に適しています。めまいや下腹部痛、足腰の冷え、むくみなどを訴えるときに使います。血を補い温める作用に優れ、肝気の流れを改善して血の産生を助けることで血流を促します。また「脾」に溜まった水分の代謝を促して、胃腸を元気にする作用もあります。
当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)
月経痛や産後の下腹部痛、痔のある女性によく用いられる漢方薬です。血色が悪く、手足がほてったり冷えたりする人に向いています。疲労しやすく血色の悪い人の月経痛や痔の改善に用います。「建中」というのは胃腸を建て直す処方につけられる名前であり、「脾」の働きを改善する効果があります。当帰を配合していることにより、血と水を補い、痛みをとる作用を発揮します。
<h3当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
手足の冷えが強く、頭痛や腹痛、低血圧などを訴える女性によく使われる漢方薬です。手足の冷えを感じ、冷えにより手足が痛くなりやすい人に適応し、しもやけや腰痛、下腹部痛、慢性頭痛などに効果があります。呉茱萸と生姜が胃腸を温めて、当帰と芍薬が血の不足を補います。現代においては冷房病、冷え証の頭痛に用いられることがあります。
当帰飲子(とうきいんし)
主に皮膚のかゆみに対して用いられる漢方薬です。分泌物が少なくカサカサとした湿疹やかゆみに用いられます。背景に冷え証を抱えている場合に向いています。血が不足すると結果として気も十分に巡らず、不足した状態になって冷えやすくなります。一方、血が不足すると熱が生じ、肝の熱は「内風」という「風」を生みます。内風は体表に至るとかゆみや蕁麻疹を引き起こします。その大元にある血の不足を補うために当帰飲子を使うとかゆみが治るという仕組みです。
当帰を配合した漢方薬を活用して健やかな毎日を
当帰は血の不足を補い、体を温める効果に優れた生薬です。当帰を配合した漢方薬は多種多様で、貧血、冷え、痛みなどの症状だけではなく、かゆみや湿疹という皮膚症状に至るまで幅広く用いられています。どの処方が適しているか分からない場合には医師や漢方薬局など専門家に相談してみると良いでしょう。健康で活力に満ちた毎日を過ごすため、当帰をはじめとした漢方薬をじょうずに取り入れていきましょう。