急に襲った下痢と発熱…「お腹の風邪」でせっかくの週末にダウン!
なんだかお腹の調子が悪いと思っていたら寒気がして熱が出てきた。風邪のような症状とともに下痢の症状もあってつらい…。
こうした自分ではどうにもならないつらい症状の緩和や体質改善には、漢方薬がよく効くことをご存知でしたか?
「健タメ!」では、読者からの体験談をもとに、お悩みに関する原因や対処法を医師や薬剤師がお答えしていきます。
今回は「発熱をともなう下痢」をテーマに、薬剤師の竹田由子先生にお話を伺ってみました。
目次
発熱をともなう下痢で体力を一気に消耗…だるさが今だに抜けません
菜津美さん(47歳女性)、会社員の方からご質問をいただきました。
先週末のこと、会社から帰宅すると、なんだかお腹のあたりが張るような感じがあって、寒気もしていたので、嫌な予感がして早めにベッドに入ったんです。
そうしたら案の定、夜中に猛烈な便意で目が覚め、トイレに駆け込むとひどい下痢に! トイレで座っていると今度はガタガタと震えがくるほど寒くて、熱を測ってみると38度近くまで熱が出ていました。
夜中から明け方にかけて、トイレとベッドをバタバタと往復していたせいか、夫が心配して翌朝病院に連れて行ってくれたのですが、診断結果はまさかの急性の胃腸炎。
うちには保育園や幼稚園に通う年齢の子どももいないし、特に変わったものを食べたり生ものを食べたりしたわけでもなかったので、一体どこで感染したのか…。
思い当たるフシが全くないのでびっくりしたものの、とにかく熱と下痢がひどくて食事もできずに丸2日間、ベッドで唸るばかりの週末を過ごしました。
このところ営業で外回りが忙しく、ファストフードでランチを流し込んでは外回りに明け暮れていたため、すっかり体調管理を怠ってしまっていたのもあるのかもしれません。弱っていた隙に菌に入り込まれたのでしょうか。なんとなくまだお腹が張るような感じと微熱が残っていてつらいです。
こういった症状はどうすればスッキリ改善できるのでしょうか?
ご質問ありがとうございます。
胃腸炎による「お腹の風邪」のような症状は、過労やストレスなどで免疫力が弱まっているときに感染しやすく症状も悪化しやすいと言われています。
今回は、発熱をともなう下痢の原因や改善方法について、詳しくお伝えしていきましょう。
体内への細菌やウィルスの侵入が発熱と下痢の原因
発熱をともなう下痢の症状は、いわゆる「お腹の風邪」とも言われる胃腸炎によるものが多く見られます。
胃腸炎の原因は、ノロウイルスやロタウイルス、アデノウイルスなどのウイルス性のものと、カンピロバクター、サルモネラ菌、ウェルシュ菌、病原性大腸菌などの細菌によるものがあります。
どちらも接触や飛沫による人から人への感染と、汚染された食品を口にすることで感染する食べ物から人への感染経路があります。
症状は病原体により違いがありますが、下痢や発熱以外にも、嘔吐や腹痛などの症状が生じることが多いです。
また、東洋医学では胃腸炎などの細菌感染による腸の炎症を胃腸の「熱」と捉え、体内の水分バランスが崩れて「水毒」の状態になることから下痢症状が生じると考えます。
次の章では、このような「発熱をともなう下痢症状」を改善するための具体的な方法をお伝えしていきましょう。
発熱をともなう下痢症状を和らげる対処法3選
1.水分補給しながら体を温めて休養する
下痢症状に加えて発熱による悪寒があるときは、脱水症状を避けるために水分とミネラルを少しずつ補充し、部屋を暖かくしてゆっくり体を休めましょう。
よほどの高熱でない限りは、解熱剤などで無理やり熱を下げず、体温を逃がさないよう保温性の高い肌着やパジャマを着て、体を温めることが大切です。また、汗をかいたらタオルなどで汗をふき取り、こまめに着替えをして冷えた汗で体を冷やさないようにしましょう。
2.無理に下痢を止めずにデトックスを
下痢の症状には、体内に侵入してしまったウイルスなどの異物を外に出す役割もあるため、無理に下痢止めなどで抑えずに、水分を補給しながらできるだけ悪いものを出し切ることが大事です。
熱が上がったり下痢の症状がつらかったりする時期は、食欲がなければ無理やり食べずに体を休めることを優先させてください。
体力の消耗を抑えるためにも、症状が強い間の入浴はできるだけ控えるようにすると良いでしょう。
3.回復期の食事は胃に優しい物にする
解熱する段階に入ったら、胃腸に負担をかけない程度に食事を摂ってもかまいませんが、胃腸炎による下痢の後は胃腸が炎症を起こした後で、粘膜も弱っている状態にあります。
消化の悪いものや脂肪分の高いもの、刺激物を取ることで炎症が悪化したり消化不良を起こしてしまうこともあるため、消化が良く、胃に優しいおかゆやすりおろしたリンゴなど、なるべく胃腸に負担のかからないものから口にするようにしましょう。
根本的な体質改善には漢方薬が効果的!
発熱をともなう下痢症状を改善するために、市販薬や処方薬の服用などの選択肢に加えて、根本的な改善を目的としている漢方薬の服用もオススメです。
特に、今回の相談者様のような症状に悩む方に適した漢方薬は、柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)です。
悪寒や発熱をともなう胃腸の炎症のある方の体の痛みを和らげ、症状を改善する効果があります。
また、発熱や下痢に加えて嘔吐などの症状もある方には、体内の水分バランスが崩れた「水毒(すいどく)」の状態を解消する効果のある五苓散(ゴレイサン)も良いでしょう。
一方、発熱や悪寒が目立たなく、胃腸が弱っている方の風邪の場合は、参蘇飲(ジンソイン)もおすすめです。
たっぷり休養して悪いものを出し切りましょう
今回は、発熱をともなう下痢症状に悩む方のためのセルフケアや漢方薬をご紹介してきました。
症状の改善のためには、まずはしっかり体を休めながらお腹に入った悪いものを出しきり、発熱により「熱」を発散することでデトックスすることが大切です。
また、こうしたつらい胃腸の症状の改善には、漢方薬が大きな効果を発揮した例もたくさんあります。セルフケアを試してもなかなか改善しない場合は、ぜひお近くの漢方医や漢方薬局に相談してみてくださいね。