急に血圧が上がったときの対処は必要?一過性血圧上昇とは

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外来や救急外来に血圧が急に上がったから心配で受診する方がいらっしゃいます。確かに血圧が急に高くなると心配ですよね?

急に血圧が上がった際に何か処置は必要なのでしょうか。今回は急に血圧が上がったときの対処法について詳しく見ていきましょう。

血圧の変動は珍しいことではない?

血圧計と血圧手帳

そもそも血圧はいろいろな要因によって常に変動しています。比較的短期の影響を起こす原因としては、喫煙、動いた直後、会話、膀胱容量、飲酒、呼吸、頭痛、自律神経の影響などがあり、また季節、天気、測定時間、測定環境なども影響が出る要因となっています。そのため、1回1回の数値で一喜一憂せず、だいたいの数値の傾向として捉える必要があります。

一般的に注意が必要とされる高血圧の目安

一般的に注意が必要になってくる高血圧とはどれくらいなのでしょうか。収縮期血圧180mmHg以上あるいは拡張期血圧120mmHg以上になると、高血圧緊急症と呼ばれます。

高血圧緊急症になると、脳、心臓、腎臓、大血管など急性に進行する病態を生じる可能性が高くなります。具体的な状態としては、脳出血、脳梗塞、急性大動脈解離、急性心不全、急性心筋梗塞、不安定狭心症、褐色細胞腫、クリーゼなどがあります。

この場合は、比較的作用時間の長いタイプのカルシウム拮抗薬という血管拡張剤を処方し、内服することでゆっくりと血圧を下げる場合があります。

一過性血圧上昇とは

めまいと頭痛に悩まされる女性

進行性あるいは慢性の臓器障害ない一時的な血圧の上昇を一過性血圧上昇と言います。血圧が急激に上がることで、頭が重く感じる頭重感や、頭痛、めまい、肩こり、動悸、吐き気、手足のしびれ、背中の痛み、呼吸困難感などを感じることがあります。特に運動などをしていたわけでもないのに、血圧が上がったりする際は注意が必要です。

一過性血圧上昇のさまざまな原因

血圧を測る女性

血圧が急激にあがる原因はいくつかありますが、そのなかで意外と多いのが正しく測れていない場合です。血圧を測る直前に飲食をする、また測っている最中に話したり、血圧計を巻くときに緩く巻いたりすると、実際の血圧よりも高く測定されます。高いときはまず血圧を測り直してみましょう。

一過性に血圧上昇する原因としては、下記のようなものがあります。

血圧を感知あるいは受容する機構の障害

高齢な人や自律神経の障害を有する人などによく認められ、血圧変動が大きく、高血圧を呈することがあります。

不安に伴う過換気

過換気は呼吸の回数が増加し、主として指の感覚異常、めまい、動悸、頭痛などの症状を呈します。過換気により血液がアルカリ性側に傾き、血管が収縮することにより血圧が上昇するのです。過換気には不安障害やパニック障害を伴っていることも多く、その場合血圧が低くなることを難しくしている一因と考えられています。

パニック発作(パニック障害)

パニック発作は精神的な要因が大きく関与しており、発作時には時・場所に関係なく、不意に発症する不安症状と自律神経症状群がみられます。非現実感・自分が自分でない感じ、狂ってしまうのではないかと感じる、死ぬのではないかと恐れる、心悸亢進・心臓がどきどきする、心拍数が増加する、発汗、身震いなどを繰り返し発症することが特徴です。その際に血圧上昇がみられることがあります。

褐色細胞腫

褐色細胞腫は、交感神経に働きかけるホルモンであるカテコラミンの産生能を有する腫瘍です。主に、腎臓の上に位置する副腎の髄質から発生します。カテコラミンは、交感神経に働いて、身体中の血管を収縮させたり、心臓の収縮能を増加させることで、脳や腎臓などの臓器への血流調整に重要な役割を果たします。

褐色細胞腫ではこのカテコラミンが過剰に分泌されることで、発作性の高血圧や、通常の降圧剤での治療でよくならない高血圧などが症状としてあらわれます。頭痛、動悸、発汗、不安感、便秘、腸閉塞など多様な症状を呈することもあります。

そのほかにも、病院を受診したときだけ血圧が上がる白衣高血圧症や、膀胱内の尿貯留、疼痛、喫煙、飲酒などがあります。ハードな運動で大量の酸素が必要になったり、寒さで手足の血管などが急に狭くなったりすることでも急に血圧が上昇します。

一過性血圧上昇の治療は必要?

錠剤で描かれたクエスチョンマーク

進行性あるいは慢性の臓器障害がない一過性の血圧上昇は、緊急に降圧治療をする対象ではないと日本高血圧学会による高血圧治療ガイドラインでは記載されています。

その理由としては、原因が加齢を含めた自律神経障害や精神的要因である場合、降圧治療を行わなくても、自然に血圧が低下することが多いからです。かつては、一過性の血圧上昇に対しても降圧薬を使用していましたが、特に高齢者においては降圧治療により、急激に血圧が下がり過ぎてしまい、かえって調子を悪くしてしまうことも少なくなかったことから、降圧薬の緊急使用の場面は限られるようになりました。

一過性血圧上昇の対処法

血圧が高いときには、身体も心もゆっくりと休めることが必要です。照明が明る過ぎない静かな部屋で休むようにしましょう。

また、寒い時期は血圧が上がりやすいので、室内の温度を調整するのも大切です。特に廊下やトイレなど暖房が届きにくい場所では寒さで血圧が上がりやすいので注意が必要です。

生活習慣が原因で高い方は、規則正しい生活と適度な運動をすることで、ゆっくりと血圧は下がってきます。血圧は睡眠状態にも影響されます。睡眠時間が5時間未満の方は特に高血圧になりやすいため、できる限り6〜8時間の睡眠を確保するようにしましょう。高い血圧を急激に下げる薬はありますが、高い血圧を急激に下げること自体、身体に大きな負担となります。血圧は生活習慣を整えながらゆっくり時間をかけて下げていくほうが安全です。

いかがでしたでしょうか。急に血圧が高くなると誰しも不安になると思います。すぐに病院に行かなくてはと急いで準備する人もいるでしょう。しかし、急な血圧上昇に対してすぐに血圧を下げることはありません。特に自覚症状がない場合は、まずは安静にしてしばらく様子をみてみましょう。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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