網状皮斑(リベド)はどんな病気?発症しやすい条件と予防法

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網状皮斑は、寒冷環境や膠原病などさまざまな基礎疾患によって下肢領域を中心に血液の流れが悪くなり、酸素含有量の少ない血液がうっ血することで、毛細血管の拡張や皮膚の赤紫色の網目状変化が起こる状態です。

ここでは網状皮斑の分類、発症しやすい条件、予防法について解説します。

網状皮斑(リベド)とは

網状皮斑(もうじょうひはん)とは、皮膚に分泌する動脈や毛細血管、静脈の調整機能が低下して、血液の循環が悪くなることによって皮膚に赤色や紫色の網目模様がみられる状態を指し、リベドと呼ばれることもあります。

網状皮斑は通常は若い女性、もしくは子供の足に引き起こされやすいと言われており、寒い刺激を受けると、下肢に網状の血管が浮き出てくるような症状が現れます。

血管自体は外気温に応じて収縮や拡張を自然に繰り返していますが、外気温に対しての反応性が異常を示すことで下肢を中心に網状皮斑が引き起こされます。

冬の寒い時期になると、両下肢にできた赤紫色の網目模様が出現する場合もありますし、ひどい方では下肢のしびれや感覚麻痺などの症状が引き起こされることもあります。

皮膚の末梢循環は、通常では皮膚の深部から小動脈が皮表に向けて枝分かれをしながら毛細血管となって、隣接した他の小動脈から派生した毛細血管と接合して、小動脈を形成して真新しい網のような模様をしています。

末梢領域の毛細血管は全身の中でも血流が最も遅くて弱いため、寒冷や種々の疾患の影響で末梢循環不全を生じやすく、毛細血管の拡張や赤紫色の変化が起こりやすいと考えられています。

外気温に対しての反応性の異常によって発症する場合もあれば、膠原病などを含む全身疾患を基礎にして発症することも見受けられます。

網状皮斑の原因

網状皮斑を引き起こす原因としては、抗リン脂質抗体症候群、多発性骨髄腫、プロテインC欠損症などさまざまな基礎疾患によって小動脈に炎症が生じる状態が関連しています。

これらの疾患以外でも、全身性エリテマトーデスや皮膚筋炎、あるいは多発性硬化症やパーキンソン病などの神経疾患、C型肝炎などの感染症などの病気に併発して網状皮斑が発症する場合があり、症状が進展すれば皮膚炎や潰瘍を形成する場合もあります。

網状皮斑の分類

網状皮斑は、主に3つのタイプに分類されていて、毛細血管の網状構造が保たれているか、赤紫色部が途中で切れて枝分かれしているかなどの所見で区別します。

大理石様皮膚

大理石様皮膚とは、気温の低い時期に小児や若年女性に多くみられる状態ですが、一過性に寒冷刺激によって末梢領域の血流が悪くなり、酸素含有量の少ない血液がうっ滞することで、網状構造が出現します。

大理石様皮膚は、主に暗赤色から紫色を呈する網状斑であり、閉鎖性の分岐状あるいは樹枝状模様を示し、一過性に消失する皮斑として認識されています。

このタイプのリベドは、一時的な機能的循環障害によって引き起こされて、通常は組織的変化を認めずに可逆的な変化として捉えられています。

樹枝状皮斑

樹枝状皮斑では、毛細血管の網状構造が完全に閉鎖しておらず、網状が所々で途切れて樹枝状の構造をしており、毛細血管や小静脈などのうっ滞やさまざまな基礎疾患に伴って小動脈に炎症が生じた状態です。

症状が進行すれば血管の器質的障害を有して、持続的かつ不規則な編み目状の皮斑を呈し、皮膚の炎症や潰瘍を形成することもあります。

病理組織学的には、血管の器質的変化が認められ、真皮皮下境界部の小動脈におけるフィブリン成分の沈着、血管内皮細胞の膨化や血管内腔の狭小化、そして血管周囲に炎症細胞の浸潤所見を認めることがあります。

網状皮斑

網状皮斑は、大理石様皮膚と樹枝状皮斑の中間と考えられるタイプであり、通常寒冷環境とは関係なく網状の構造は完全に閉鎖して、皮疹が持続することが多いですが、夏のシーズンになって外気温が上昇すると網目状皮膚所見が消失することもあります。

組織学的には深部小静脈のうっ滞や拡張が主体の機能性障害であり、明らかな器質的変化を認めず、実際の皮疹では分岐状皮斑や網状皮斑が混在するケースも見受けられます。

いずれのタイプにしても、リベドを生じている場合は、血管や血流の状態が不安定と考えられていて、打撲や擦過など少しの物理的刺激によって内出血変化を起こすリスクが通常より高いと考えられています。

網状皮斑と温熱性紅斑(火だこ)の違い

皮膚の末梢循環障害による症状のひとつとして、赤紫色の樹枝状、網目状の模様が主に下肢にみられるものが網状皮斑です。

この網状皮斑は、赤外線ストーブやこたつなどによって下肢の褐色色素沈着を伴った温熱性紅斑(火だこ)とは区別されます。

温熱性紅斑と鑑別して網状皮斑を診断する際には、背景にある発症危険因子や原因を追究することが重要であり、特に全身性疾患との関連に注目することが早期診断に繋がります。

網状皮斑を発症しやすい条件と予防法

網状皮斑は、末梢の循環不全によって生じる四肢の限局的な領域に赤色から青色に変色した斑点状、あるいは網状の皮疹のことを指しています。

一般的に、皮膚は体の外側から表皮と真皮の2層で形成され、真皮の下の皮下組織との間には細い血管が存在しますが、網状皮斑はこれらの小血管の血流が悪くなり、血液がたまることによって下肢の皮膚などに網目状の紅い模様が出現する状態です。

網状皮斑では、寒冷刺激を避けることが重要であり、外出する際だけではなく、冷房の使用や冷蔵庫を開けるなど日常動作に関連して網状皮斑の症状が悪化する懸念があるので、皮膚症状を悪化させる可能性がある行動をしないように注意を払う必要があります。

網状皮斑を発症しやすい条件としては、寒冷刺激に伴う外気温の低下が直接的な原因となることも多いですが、血液成分である血漿タンパクの異常を主体とする病気がリスクファクターになることも見受けられます。

皮膚所見の異常のみ認められる際には、保温やマッサージ、弾性包帯の使用など、下肢のうっ血を防止することが主体的な治療になりますが、原因が全身性疾患など病気による場合には原疾患の治療が優先されます。

まとめ

これまで、網状皮斑(リベド)の分類や予防法などを中心に解説してきました。

網状皮斑とは、皮膚に網目状の紅斑を生ずる病気の総称であり、主として下肢領域に発生しやすく、皮膚の小動脈の内腔が狭小化を呈して小静脈が拡張し皮膚末梢の血液循環障害が引き起こされることで出現します。

網状皮斑は、温度の急激な変化によって血管の微妙な調整がうまくいかなくなることで発症し、冷気や冷水などの寒冷刺激によって悪化する傾向があり、病状が進展すれば下肢のしびれや感覚麻痺など重症化するケースもあります。

下肢の血管拡張やうっ血に伴って皮膚に網目のような紅斑が出現して網状皮斑を疑う際には、背後に何らかの疾患が隠れていないか調べることが重要であり、発症因子となる基礎疾患がある場合には、その病気に対しての根本的な治療が検討されます。

膠原病が原因となっている場合には膠原病の治療が優先されるなど、網状皮斑を発症する原因を正確に判断して適切な治療につなげるために、気になる症状が現れたときは皮膚科など専門医療機関を受診することが重要です。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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