ヘルペスウイルスが原因で発症するヘルペス脳炎の症状と治療方法
ヘルペスウイルスと聞くと何を思い浮かべますか?ほとんどの方は口唇ヘルペスが思い浮かぶのではないでしょうか。ヘルペスウイルス感染症と聞いても、重症だとは思わないでしょう。
しかし、ここで取り上げるヘルペス脳炎は致死率が高い重大な病気です。ヘルペス脳炎の症状や治療方法について詳しくみていきましょう。
ヘルペスウイルス感染症とは
ヘルペスウイルスというと一般的には口内炎というイメージがほとんどです。
しかし、実はこのヘルペスウイルスは2本鎖のDNAを持ったDNAウイルスに属しており、仲間には単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、EBウイルス、サイトメガロウイルスなど8種類あると言われています。
この単純ヘルペスというウイルスは、どこにでもいてアフタ性口内炎を起こします。多くの人が感染していて日本人では感染率は50~70%もあるとも言われています。
このようにありふれており、一見すると弱いウイルスのように思われますが、実はこのウイルスによって引き起こされる脳炎は大変重い脳炎です。治療薬が無かったかつての死亡率は60~70%であったとも言われていました。
その頻度は脳炎全体の10~20%にあたり、日本では年間400人くらいの方が発症されていると言われています。夏場にはやっていた日本脳炎などとは違って流行時期ははっきりせず、全年代に起こりえる病気です。
そのほかにもヘルペスウイルスの仲間に感染することで発症する病気があります。帯状疱疹は頻度も高く有名ですが、こちらは水痘ウイルスの再感染で起こります。子供のときに水ぼうそうにかかって治ったと思っていたら、実は末梢神経の神経節中に潜んでいて、精神的・肉体的ストレス、老齢化、がんや糖尿病など体を衰弱させるような疾患、ステロイドなど免疫力を低下させるような治療などによって抵抗力が落ちたりすると再活性化して、帯状疱疹として再発します。
症状としては、感覚神経の走行に一致してビリビリとした痛みや違和感が始めにみられ、引き続いて赤い発疹が出現し、さらに小水疱がみられて強い神経痛のような疼痛が伴います。髄膜炎や脳炎に進展する恐れもあります。
また、顔面神経領域にできた場合、耳介周囲や外耳道に小水砲を伴って顔面神経麻痺にめまいや難聴なども加わってRamsay Hunt症候群という疾患を発症します。
ヘルペス脳炎を発症するメカニズム
ヘルペス脳炎が発症する感染経路は2通り考えられています。
一つは上気道感染から鼻粘膜さらに嗅神経という経路をたどって感染するか、あるいはウイルス血症となって脳内へウイルスが侵入していきます。もう一つは、口内炎などにかかった後、ウイルスが口腔内の感覚神経である三叉神経の三叉神経節という部分などに潜んでいて何かの拍子に再燃して脳炎を発症します。
この脳炎の特徴は病変部位が側頭葉や辺縁系といった部分に左右非対称性に見られることが多く、しかも出血や壊死などを起こして脳の破壊を引き起こしてかなり重篤な脳炎となることが多いと言われています。
ヘルペス脳炎の症状
小児期に単純ヘルペス脳炎を発症すると、発熱や吐き気、嘔吐、頭痛、けいれん、意識レベルの低下などの症状を呈します。成人に比べると病状の進展が早く、急速な経過で重篤化することがあります。
単純ヘルペス脳炎は致死率が高い疾患であると同時に、神経学的な後遺症を残すことも懸念される疾患です。成長・発達段階にある子どもが、病気の発症をきっかけに、それまでできていたことができなくなることもあります。また、小児の単純ヘルペス脳炎は再発することもまれではありません。
ヘルペス脳炎の治療方法
単純ヘルペス脳炎では、アシクロビルと呼ばれる抗ウイルス薬を第一選択薬として治療が行われます。
病初期においては単純ヘルペス脳炎であることが必ずしも確定できないこともありますが、もし単純ヘルペス脳炎であった場合には重篤な経過が予想されてしまいます。そのため、診断が確定していない状況であっても疑わしい場合には治療薬が投与されることがあります。
単純ヘルペス脳炎では、呼吸障害や脱水、けいれんなどを伴うこともあります。そのため、補液や抗けいれん薬の投与などの対症療法的な支持療法も行われることがあります。
急性期の治療が奏功した場合でも、神経学的な後遺症を残すことがあり、この場合には、リハビリテーションや(発達支援)など、必要に応じた治療介入が検討されます。
いかがでしたでしょうか。ヘルペスウイルスが引き起こすヘルペス脳炎は早期に素早く治療しないと死に至る重篤な病気です。繰り返すけいれんや発熱、嘔吐、意識レベルの低下などが見られる場合には、早急に医療機関を受診して治療を始めましょう。