種類別に解説!鎮痛剤の効果の特徴と副作用
痛い時にどうしても使いたくなる痛み止め。しかし、胃に悪いなどの話しを聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。鎮痛剤を用いるときは副作用が出ないか心配になります。
ここでは、鎮痛剤にはどのような種類があり、それぞれどのような特徴や副作用があるのかを解説します。
目次
痛みの大まかな分類
痛み止めとひと口に言っても作用機序はさまざまです。それを理解するには痛みの機序について知っておく必要があります。
まず、痛みを大まかに3つに分類します。
体性痛
1つ目が体性痛です。体性痛というのは身体の筋肉や骨、皮膚など身体の表面に近い部分で感じる痛みを指します。体性痛は皮膚や筋肉などにある痛みを感じるセンサーが一定以上の力が加わったことを感じると、それを痛みとして感じる仕組みになっています。触っただけでは痛くないのに、強い力で押されたりたたかれたりすると痛いと感じるのはそのためです。
それだけではありません。皮膚や筋肉が傷つくと、それを修復しようとして炎症反応が起こります。炎症反応が起こると、センサーが敏感に反応するようになり、少し触っただけでも痛いと感じるようになってしまいます。傷口を触ると痛いと感じるのはそのためです。
内臓痛
次の痛みは内臓痛です。内臓がうまく活動できないときに痛みを感じるようになります。例えば腸炎などは、腸に炎症が起こることによって腸が過剰に動くのですが、そのことを痛みとして感知します。内臓などにあるセンサーが動きの不調を感知して痛みとして伝えます。
神経障害性疼痛
最後の痛みは神経障害性疼痛です。体性痛も内臓痛も痛みのセンサーが痛みを感じた後、神経によって脳に痛みを伝えます。その神経自体が損傷してしまうと、センサーは反応していないのに神経自体が興奮することで痛みを感じます。ジリジリ、ジンジンするような痛みが特徴です。
このように、様々な痛みがあります。痛み止めはそれぞれの痛みの機序に対して効果を発揮します。
鎮痛剤にはそれぞれ得意な痛みがあり、副作用も異なります。
NSAIDsの特徴と副作用
NSAIDsは「エヌセイズ」と読みます。Non-steroidal anti-inflammatory Drugsの略で、日本語に翻訳すると非ステロイド性抗炎症薬と言います。ステロイドではない炎症を抑える薬になります。
NSAIDsは体内に入ると、シクロオキシゲナーゼという酵素の働きをブロックします。このことによって炎症反応を抑え、解熱鎮痛作用を発揮します。
効果の特徴
NSAIDsは体性痛によく効く薬になります。体性痛の機序で炎症によって痛みのセンサーが過剰に反応する事を紹介したのですが、この炎症を抑えることによって痛みのセンサーが過剰に反応することを防ぎ、触れたり少し動かしたりしたぐらいでは痛みを感じないようにすることができます。
体内に入ると速やかにこの作用が出てきますから、投与すると比較的早く効果が出るというのも特徴です。筋肉や骨、皮膚が痛いときに使用すると早くすーっと痛みが消える、といったイメージになります。
NSAIDsにはさまざまな種類の薬剤があります。主なものとしてイブプロフェン、ロキソプロフェン、ボルタレン、セレコキシブなどがあります。市販の痛み止めも多くはこれらの成分が含まれており、最もよく使われる痛み止めといって良いでしょう。
副作用
NSAIDsの欠点は、副作用の多さです。シクロオキシゲナーゼを阻害するという作用機序に関係しています。実はシクロオキシゲナーゼは胃粘膜を保護する成分を合成するのにも使用される酵素になります。そのため、NSAIDsを投与してシクロオキシゲナーゼが阻害されると、胃粘膜が荒れやすくなってしまいます。
また、腎機能も低下させることが分かっています。特に腎機能に問題無い人では安全に使用できますが、腎機能が低下してきている人にとっては不可逆的な腎機能低下を来し、一気に腎機能が悪くなってしまうこともあります。
このようなことから、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の既往のある人、腎機能が悪いと分かっている人には使用ができません。高齢者になるとこのような傾向が強くなるので、高齢者でも使用が困難です。
また妊娠中も胎児に移行するとよくありませんので使用ができません。
アセトアミノフェンの特徴と副作用
アセトアミノフェンは元来小児や妊婦など、NSAIDsが使えない人に対する解熱薬あるいは痛み止めとして使用されてきました。弱い抗炎症作用があるため、NSAIDsが使用できない場合に代わりに使用する薬という位置づけでした。
しかし、近年の研究でアセトアミノフェンは体内の様々な場所で作用しているという事が分かってきました。そのため、用量を増加する事で十分な鎮痛効果を発揮でき、保険適応の用量が増加されたこともあり、小児や妊婦に限らず多くの人に使用されるようになってきています。
効果の特徴
作用機序が炎症を抑えることによらないことからも分かるように、体性痛だけではなく内臓痛にもよく効く薬剤として使用されています。市販の薬剤としては一部の痛み止めの薬ではアセトアミノフェン単剤で発売されていますが、痛み止めの薬に追加で配合されていることが多くあります。また解熱作用を期待でき、風邪薬にもよく混合されています。
副作用
アセトアミノフェンは副作用が少なく、安全な薬として知られています。
唯一ある副作用が肝障害です。大量にアセトアミノフェンを摂取すると肝障害が起こり、特に重篤な場合は不可逆的な肝硬変を来すことが分かっています。
ただし、通常使用量であればまず問題ありません。術後など一時的に強い痛みがある場合に使用される上限量が1日4000mgですが、肝障害が起こる用量は10000mg以上とされています。市販の痛み止めの用法用量を守っていれば肝障害が起こることはまずありません。
ただし、前述のように様々な薬剤にアセトアミノフェンは混合されています。複数の薬を内服していると気づかないうちにアセトアミノフェンが高用量となっている場合がありますから注意が必要です。
オピオイド製剤の特徴と副作用
オピオイドはいわゆる麻薬の一種になります。投与されると脳や脊髄にあるオピオイド受容体という部分に結合し、痛みの伝達をブロックします。少量でも非常に強力に痛みの伝達をブロックしますし、オピオイドの最大の特徴として天井効果が無いという特徴もあります。
効果の特徴
天井効果というのは、ある一定量以上の薬を投与しても、それ以上効果が出ないという用量のことを言います。NSAIDsやアセトアミノフェンをはじめとして、多くの薬はこの天井効果が存在しています。そのため痛み止めを内服してもまだ痛いと言うときに、追加で内服しても痛みがそれ以上あまり変わらないということが起こってきます。
しかしオピオイドには天井効果がありませんから、痛ければ痛いだけ追加投与すれば痛みが抑えられることになります。
副作用
痛みを強力に抑えてくれるオピオイドですが、副作用が非常に多く、また非常に危険な副作用もあるため注意が必要となります。
多く起こるのが、吐き気や嘔吐です。オピオイドを使用すると多くの人でこの副作用が起こってきます。そのため、痛みを抑えるためにオピオイドを使用する場合には吐き気止めを併用する事も多くあります。
また、消化管運動の低下から便秘も起こりやすくなります。便秘の薬も同時に内服する薬としてよく使用されます。
重篤な副作用としては呼吸抑制があります。使用をしているとだんだんと呼吸の回数が減少してきて、一定量を超えると呼吸が止まってしまうのです。
オピオイドの副作用の怖いところは、個人差が大きいこと、そして必要量と危険量の差があまりことです。痛みがあるから少し増量すると急に副作用が出てくることもよくありますから、調整が非常に難しくなります。
慢性疼痛治療薬の特徴と副作用
慢性疼痛治療薬には複数の種類があります。
神経障害性疼痛に対してよく使われるものに、カルシウムチャネル阻害薬であるリリカがよく使われます。神経障害性疼痛が生じると痛み刺激を伝える神経伝達物質が過剰に出ていますから、その痛み刺激を受け取るのを阻害する事で鎮痛効果を発揮します。
抗うつ薬である選択的セロトニン・ノルアドレナリン再吸収阻害薬は脳から痛みを抑えようとするシステムである下行抑制系を強めることで、痛みをあまり感じないようにする薬となります。
デュロキセチンも弱くなってしまった下行抑制系を強めることで慢性疼痛を改善させる薬になります。
副作用
これらの薬は比較的副作用は少ないですが、めまいや眠気、ふらつきなどの症状が出ることがあります。注意して使用する必要がある薬になります。