唾石症とは?唾液腺が腫れる原因と治す方法
唾液を作る唾液腺が腫れてしまうことがあります。様々な病気で腫れてくることがありますが、一番多いのは唾石症という病気です。
唾石症とはどのような病気なのでしょうか。また、唾液腺が腫れる原因には他にどのようなものがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
唾液腺とは
唾液腺は、血液から水分と様々な物質を抽出することによって、唾液を作る腺組織です。唾液腺で作られた唾液は、唾液腺管という管を通って口の中に流れでできます。
唾液腺にはいくつもの種類があります。
唾液腺の中でも、大きいものを、大唾液腺と言います。大唾液腺には、耳下腺、顎下腺、舌下腺の3種類があります。いずれも左右一対あり、合わせて6個あります。耳下腺は耳の下に、顎下腺は顎の下に、舌下腺は舌の下にあります。
小唾液腺については、大きさが5mmよりも小さいことがほとんどです。唇や頬の粘膜、上顎などに存在しています。小唾液腺は、非常に数が多く、口の中にたくさん散在しています。
唾液腺に起こる病気は、ほとんどが耳下腺と顎下腺に発生します。
唾液腺が腫れる原因
唾液腺が腫れる原因にはどのようなものがあるのでしょうか。主なものを紹介します。
唾石症
唾石症は、唾液中に含まれるカルシウムが固まってできた石が唾液管を狭窄させたり閉塞させることによって起こります。この石のことを唾石と言います。唾液の流れがその部分で滞りますから、それよりも上流である唾液腺が腫れてくることが多いです。
唾液腺であればどこでもできることにはなりますが、ほとんどの場合には顎下腺でできます。顎下腺は、できた唾液を分泌する唾液腺管が他の唾液腺に比べても長い上に、作られる唾液がやや粘稠性の高い唾液であることも原因となります。流れが滞りやすいことによって、そこで結石ができやすいのです。
唾石症では、唾液腺が痛みを伴って腫れます。痛みや腫れの症状は、食事をした際に目立ちます。食事をする時に唾液腺は多く唾液を作ります。しかし、作られた唾液が流れ出ていかないことで唾液腺がより腫脹し、痛みを伴ってくるのです。こうした痛みや腫脹は食後しばらくすると軽くなってきます。
唾液腺が腫れるほど唾液の流れが滞ってしまう大きな唾石症の場合には、自然に石が溶けたり、石が取れたりすることはなかなかないです。多くの場合、口の中から唾液の出口を切開して石を取り出すことになります。しかし、石が大きい場合にはそれも難しく、手術によって顎下腺ごと全体を取り出すこともあります。
シェーグレン症候群
シェーグレン症候群は自己免疫疾患の1つです。自己免疫疾患というのは、自分自身の免疫が、自分自身を敵とみなして攻撃してしまうことによって起こってくる病気になります。
シェーグレン症候群の場合には、涙や唾液を分泌する腺組織に対して攻撃が起こり、様々な反応が出てくることになります。
涙を分泌する腺組織が攻撃され破壊されることによって涙の分泌が滞り、目の乾燥の症状が出てきます。
同じように、唾液腺が攻撃されることによって唾液の分泌が低下し、口の中が乾く症状が出てきます。口の中が乾くせいで、咀嚼に問題が出たり、嚥下障害が出たり、会話もなかなかできなくなってしまいます。味覚の障害も出てくることがあります。乾燥に伴って、感染症が起こりやすく、口腔カンジダ症になることもよくあります。
こうした免疫反応の最中に、唾液腺の腫脹が起こってくることがあり、触ると痛みを伴います。原因は不明で根本的な治療はなく、対症療法を行います。
唾液腺腫瘍
唾液腺腫瘍は、耳下腺に最も多く起こります。それに続いて、顎下腺、小唾液腺に発生します。舌下腺に生じることは稀です。ほとんどは良性腫瘍ですが、時々悪性腫瘍も発生します。
良性腫瘍としては、多形腺腫や、ワルチン腫瘍などがあります。これらの腫瘍は、耳下腺の中にある腺組織や、唾液腺管などから発生します。良性腫瘍ですので、周囲に浸潤したり、転移したりすることはなく、その場所で大きくなるだけです。
大きくなっても様子を見ることも可能ですが、表面に出てくることによって見た目上の問題から手術で摘出することになります。
悪性腫瘍は、いわゆるがんのことです。様々な種類のものがあり、悪性度の低いものから高いものまで存在します。進行するに従って痛みや神経麻痺が生じてきます。
特に耳下腺は、中を顔面神経という神経が通過しています。この神経は、顔面の運動を司る神経ですので、腫瘍の浸潤によって神経の機能が落ちて、顔面の片側の運動ができなくなることがあります。手術によって摘出するのが基本で、化学療法や放射線療法を併用することもあります。
唾液腺炎
唾液腺炎は、細菌やウイルスによって唾液腺に炎症が生じる病気です。唾液腺で活発に炎症が起こりますから、炎症細胞が増加し、腫れてきます。炎症を反映して、唾液腺自体の痛みや熱感が生じてくるほか、全身症状として発熱が見られることもあります。
細菌による感染が原因で起こるものを化膿性唾液腺炎、ウイルスによる感染が原因で起こるものをウイルス性唾液腺炎と言います。
化膿性唾液腺炎は、多くの場合、口の中の常在菌が原因となります。口の中にもともといる細菌たちが、唾液腺管を逆流して唾液腺までいたり、そこで感染を起こすことによります。年齢としては、50歳から60歳ぐらいの人に多く、口の中が乾燥している唾液の分泌が少ない時によく発生します。シェーグレン症候群に伴って発症することもあります。
典型的な症状としては、発熱に加えて、片側だけの唾液腺に痛みや腫れが起きます。感染が進むと、唾液腺の出口から膿が出てくることがよくあります。多く起こるのは、耳下腺や顎下腺です。
ウイルス性唾液腺炎は、ムンプスウイルスというウイルスに感染することによって起こってくるものです。ムンプスウイルスは飛沫感染によって感染します。代表的なのは、おたふく風邪です。医学的には流行性耳下腺炎と言います。ほとんどの場合、3歳から6歳の子供に見られます。しかし時折、大人にも感染することがあります。全身性の発熱に加えて、片側もしくは両側の耳下腺の痛みや腫れが見られるようになります。
他の唾液腺炎としては、反復性耳下腺炎があります。これは感染症によるものではなく、原因はよく分かっていません。耳下腺の腫れや痛みを数週間から数年おきに繰り返す病気で、1歳から小学生ぐらいの子供に見られることが多いです。
唾液腺炎を治す方法
唾石症、シェーグレン症候群、腫瘍はいずれも専門的な治療が必要な病気になります。では唾液腺炎はどのような治療をするのでしょうか。
安静にする
唾液腺炎は、自己免疫力によって、自然治癒する場合があります。免疫力を最大限に高めることが、治療への第一歩となります。
免疫力を高める方法は様々ありますが、取り組みやすいのは安静にすることです。安静にすることで、免疫力を最大限発揮し、できる限り早く治せるようにします。
特にウイルス性の唾液腺炎の場合には、抗生剤などの特異的な治療法はありません。自分自身の免疫力に頼ることが一番になりますので、安静にすることで治癒を待ちます。
うがい薬を活用する
唾液腺炎の厄介なところは、感染した場所を無菌にすることができないことです。例えば皮膚の傷口が化膿してしまった場合には、清潔に洗うことで、かなり菌が少ない状態を維持することができます。しかし、口の中は常在菌がたくさんいる場所になりますので、化膿性唾液腺炎の場合には、さらに感染がひどくなる可能性があるのです。
感染を落ち着かせるために、うがい薬を使用します。うがい薬は市販のものでもいいのですが、医療薬ではクロルヘキシジンといううがい薬があります。これによって、口腔内を清潔に保つことができます。
また、うがい薬だけではなく、人工唾液も使用されることがあります。口腔内が乾燥すると、常在菌が繁殖しやすくなります。それを防ぐために、人工唾液によって口腔内を乾燥しないように保ち、清潔な状態を維持しやすくするのです。
抗生物質を服用する
ウイルス性の唾液腺炎や、その他の唾液腺炎では適用になりませんが、化膿性唾液腺炎の場合には抗生物質を使用することもあります。特に化膿性唾液腺炎を引き起こす黄色ブドウ球菌に対して効果が高い抗生物質である、ジクロキサシリンやセファクロル、クリンダマイシンなどを内服します。
基本的にはウイルス性の場合には適用になりませんが、化膿性唾液腺炎との鑑別が難しい場合や、混合して発症していることが疑われる場合などには抗生剤が使用されることもあります。