子どもの膝の痛みの原因に?骨の肉腫の種類と良性骨腫瘍

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骨肉腫は骨のがんと言える病気で、子どもにも発症します。お子様に何か症状があって骨肉腫ではないかと不安に思われる方もいらっしゃることでしょう。ここでは骨肉腫でどのような症状が起こるのかを解説します。

骨の肉腫と軟部肉腫

そもそも肉腫とは何なのでしょうか。

人の体は、常に古い細胞が活動をやめて壊死し、一方で細胞分裂が起こることで新しい細胞を増殖させることで細胞の数を維持することで形と機能を保っています。このバランスが崩れると体の構造や機能に異常を来してしまいますから、細胞の壊死や細胞分裂はどちらかがおこりすぎないようにコントロールされています。

しかし何らかの原因で細胞分裂のコントロールが外れてしまい、細胞分裂が異常に亢進して特定の細胞が多く増えていってしまう場合があります。これが腫瘍です。簡単に言うと腫瘍の中でも、単に増殖していくだけで塊が大きくなっていくだけのものを良性腫瘍、増殖していく中で周りの細胞を破壊しながらどんどんと進展していったり、血液などの流れに乗って細胞が移動し、そこでも増殖を始めるものを悪性腫瘍と言います。

悪性腫瘍の多くは、臓器の粘膜や皮膚など、細胞分裂が活発な表面の細胞から出現します。これらをがんと言います。一方で、臓器の粘膜などを構成する細胞以外からも悪性腫瘍は発生します。例えば血液の細胞が悪性化すると白血病やリンパ腫となります。

骨や皮下組織にも細胞があり、それらの細胞が悪性腫瘍となったものが肉腫となります。骨から発生したものが骨肉腫、軟部組織から発生したものは軟部肉腫です。

さて、骨にできる腫瘍で最も多いのはがんの骨転移です。骨の中でも骨髄は血液を作る組織ですから、血流が非常に豊富なため、がんが転移するときによくたどり着くのです。

一方で、骨を構成する細胞ががん化することによってできてくる腫瘍もあります。これらの腫瘍のことを、原発性骨腫瘍と呼び、がんの骨転移など他の場所のがんが原因でおこってくる骨腫瘍である続発性骨腫瘍とは区別して治療します。

他に骨にできる腫瘍としては骨軟骨腫、内軟骨腫など、良性の骨腫瘍が多くあります。骨肉腫は骨にできる腫瘍の中で約6%を占めているとされています。

子どもに発症することも? 骨や関連組織の肉腫の種類

ここからは骨や骨周囲に発生する肉腫の種類と特徴について解説しましょう。

骨肉腫

もっとも多く、そしてやっかいな悪性の原発性骨腫瘍です。好発年齢は10歳から30歳と、若年者に多いことも特徴です。

多くの場合、大腿骨の下端か、脛骨上端におこります。つまり、膝の上下のどちらかで起こることが多いです。ただし、好発場所がこの場所と言うだけで、骨がある場所であればどこでも発生します。

レントゲンで撮影すると、非常に多くのパターンが診られます。というのは、骨というのはもともと骨破壊と骨新生という二つの活動を続けているからです。骨は硬く、そのまま存在しているかのように思えますが、実際には常に骨の細胞を壊す(これを溶骨と言います)一方で、新しい骨の細胞を作る(これを造骨と言います)ことで、常に新陳代謝を行っています。骨肉腫の細胞も同じように造骨と溶骨を繰り返していますから、そのバランスの違いによって見え方が変わってくるのです。

血液検査を行うと、骨の細胞の中に多く含まれる、アルカリフォスファターゼ(ALP)という値が顕著に上昇します。この値は、溶骨によって骨細胞の中からALPが血液に放出されることを反映しています。ですので、腫瘍の活動性によってALPの値が上下すると言う特徴もあります。

骨肉腫と疑われた場合は、CTやMRIを撮影し、腫瘍の広がりを確認します。また、骨シンチグラフィや全身の種々の範囲のCT撮影、PET撮影などで転移の有無などを調べていきます。

骨は代謝が非常に活発な細胞でできていますから、骨の細胞が悪性化した骨肉腫自体も非常に細胞分裂が活発で、腫瘍の発達や転移速度も非常に速く、見つかったときにはすでに肺転移を起こしている場合も少なくありません。

早期であれば手術によって全摘出できることもありますが、なかなか難しいことが多いです。化学療法も併用されますが、治療効果に乏しいことも少なくありません。

軟骨肉腫

骨の細胞が悪性化したものが骨肉腫ですが、軟骨の細胞が悪性化したものが軟骨肉腫です。こちらも若年者に多くみられるのが特徴で、だいたい20~40歳頃にみられます。男性にやや多くなります。

軟骨肉腫と名前がついていますが、骨の中にもできることが多くあります。また、骨軟骨腫や内軟骨腫という良性の軟骨原発腫瘍が、突然に悪性化することもあり、これらの病気を持っている人は慎重に経過を見る必要があります。

治療は手術を行った後、化学療法や放射線療法が行われます。骨肉腫よりも化学療法や放射線療法は効きにくいですが、生存率は骨肉腫より良いとされています。

ユーイング肉腫

こちらも骨肉腫と同じように若年者にみられる骨腫瘍です。ただし、骨肉腫よりやや若年に多く、4歳から20歳ぐらいに診られます。よく発生するのは骨盤部で、他には上腕骨や大腿骨の骨幹部にみられます。

骨肉腫との違いははっきりと分かっていません。骨の何らかの細胞が悪性腫瘍となったものと思われていますが、もともとどの細胞が悪性化したものなのかが分かっていないのです。

しかし、臨床像は骨肉腫と異なりますし、また顕微鏡で見ても明らかに細胞の形は異なり、骨肉腫とは区別されます。

ユーイング肉腫は細胞の増殖が主となりますから、周囲にどんどんと進展し、局所の痛みだけではなく、全身の炎症に伴う発熱や貧血などもみられます。

骨の肉腫が疑われる症状をチェック

骨肉腫など、骨の悪性腫瘍はどのような症状がみられるのでしょうか。

本当の初期のうちは、なかなか症状はみられませんが、腫瘍の増大に伴ってまず痛みや腫れが出てきます。特に、骨肉腫の場合は膝の上か下にみられることが多くなります。最初は動かした時に痛みを感じますが、進行すると安静時にも痛みがみられるようになってきます。

膝関節は、病気がなかったとしても運動をしていると痛んでくることはよくあります。しかしその痛みは安静にすると症状は治まってきますし、膝関節自体が痛んでいることがほとんどです。しかし骨肉腫をはじめとした悪性の骨腫瘍であれば骨自体が痛み、また安静時にも痛いというのが特徴になります。

また、通常の関節痛であれば安静にしているとだんだんと改善してくるはずですが、このような症状が長く続くというのも腫瘍性の痛みを疑わせます。数か月から半年以上痛みがあり、悪化する場合には悪性腫瘍を疑います。

骨肉腫が進行すると、病的骨折を起こすことがあります。これは、腫瘍によって骨がもろくなってしまい、普通であれば骨折しない程度の負荷が骨にかかることで起こってくる骨折です。骨肉腫は初期にはなかなか症状が現れませんから、病的骨折によって初めて見つかることも多くあります。

このように、骨肉腫をはじめとする悪性の骨腫瘍は、初期にはあまり症状が無く、だんだんと痛みが強くなってくるというのが特徴です。もし、安静にしても治まらない痛みがあるようなら一度整形外科を受診されるのが良いでしょう。

膝の痛みの原因になる良性骨腫瘍

膝の痛みの原因として腫瘍があるとしても、悪性の骨肉腫であることは実はそこまで多くありません。多くの場合良性の骨腫瘍であることが多いです。良性の骨腫瘍とはどのようなものなのでしょうか。

良性骨腫瘍とは

良性骨腫瘍とは、骨に発生した腫瘍のうち、骨肉腫などのように転移をしたり他の組織に浸潤したりして生命に悪影響を及ぼすようなことがないものの総称です。いくつか種類があり、概ね20種類ぐらいあると言われています。

良性骨腫瘍の中で最も多いのが、外骨腫と呼ばれるもので、関節周囲の骨が出っ張ってくるものです。外骨腫は正式な病名ではなく、いくつかの腫瘍を総称してそう呼びます。

外骨腫の中でも多いのが、骨軟骨腫、もしくは軟骨性外骨腫と呼ばれるものです。この外骨腫は、骨から出っ張ってきのこのように生えているものが多いですから、レントゲンで見るとすぐわかります。1箇所だけの場合と多発する場合があり、多発するものは遺伝性のものであることがあります。また大人になってから悪性化することもありますから、注意しなければなりません。

他の良性骨腫瘍としては、骨の中にできて、骨自体がだんだんと弱くなっていくものがあります。骨が薄くなることによって、折れやすくなるのです。骨嚢腫や線維性骨異形成、内軟骨腫などが挙げられます。レントゲンで見ると、その部分が薄く見えるので、診断がつきます。

レントゲンで見るとその場所が薄くなる場合として、線維性骨皮質欠損があります。これは、大腿骨遠位の膝の内側が丸く抜けて見えるもので、幼児に見られます。成長に伴ってそう見えているものですから、骨腫瘍とは異なり気にする必要はありません。

良性骨腫瘍に痛みはある?

多くの場合、良性骨腫瘍ではあまり痛みを伴いません。症状が出てくるのは、腫瘍が大きくなってきて周りの組織を物理的に圧迫することによります。その途中で、違和感を感じるだけという人もいます。

骨がだんだんと出っ張ってくると、周りの組織を圧迫する痛みも感じますし、神経を圧迫することによって痛みやしびれが出てくることがあります。他には関節の動きにくさなどの症状を伴うことがあります。

良性骨腫瘍と骨肉腫の違い

良性骨腫瘍は、前述のように、周りに浸潤したり、遠隔転移を起こしたりしないことから良性の腫瘍とされています。骨肉腫はその反対で、周りに浸潤したり、遠隔転移を起こしてくることがあります。

自覚症状としては、早期にはあまり差がないことがほとんどです。いずれもあまり症状を感じません。しかし進行してくると、特に骨肉腫では痛みが強く感じられることが多いです。これは、骨という正常組織をどんどんと蝕んでいくからで、特定の体勢を取った時に痛みが強くなるということはなく、安静時にも痛みを感じることが多くなります。

良性骨腫瘍の治療は必要?

良性骨腫瘍には、治療が必要なものと治療が必要ないものがあります。

一番多い外骨腫は、骨の成長が止まるのと同時に、腫瘍自体の成長も止まりますから手術をせずに経過観察することもあります。ただし、体の成長が止まった後も腫瘍自体が大きくなっていく場合には悪性化している可能性があるために、手術を行う場合があります。

他の骨腫瘍に関しては、場合によっては腫瘍自体を掻爬(掻き出すこと)する治療が行われる場合があります。

いずれの腫瘍についても放射線治療や化学療法が効果的な場合はほとんどなく、選択されません。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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