喉が詰まる感じや息苦しさの原因…病院を受診した方がよい場合とは
息苦しさや喉が詰まるような感覚は、さまざまな病気の症状として現れます。気管支、心臓、自律神経、精神的な要因など、原因はまちまちです。ここでは息苦しさや喉が詰まるような感覚の原因として考えられる代表的な病気について見ていきましょう。
喉が詰まる感じ、息苦しさの原因
喉が詰まる感じや、息苦しさの原因としては次のようなものが考えられます。
風邪
喉のつまる感じは、風邪の初期兆候でもおこります。
風邪による喉のつまる感じは、2日から3日程度で治まりますが、風邪の場合は、喉のつまる感じに加えて、たいてい鼻水や鼻づまりなどの他の風邪の症状が現れます。
また、扁桃炎や咽頭炎などの喉の感染症も、喉のつまる感じや痛みを引きおこす場合がありますし、それ以外にも発熱や息苦しさ、耳の痛み、頭痛、声が出しづらい、嘔気などの症状を認める場合があります。
気管支喘息・過換気症候群
気管支喘息とは、空気の通り道である気管支や気道の領域で慢性的に繰り返して炎症反応を引き起こすことによって気管支が物理的に狭くなり、呼吸をする際にゼーゼーといった喘鳴を認めて呼吸困難などの症状が生じる疾患です。
気管支喘息の人の気道は、血液中に存在する5種類の白血球のひとつでアレルギーと密接な関係にある好酸球が気道に炎症を起こすカスケードに関連しています。
好酸球が気道に集簇(しゅうぞく)すると、気道の表面を覆っている細胞がはがれ落ちて周囲細胞を過剰に遊走させるサイトカインと呼ばれる物質が放出され、気道領域がさまざまな刺激に過敏反応して息苦しさや咳嗽などの呼吸器症状が出現しやすくなります。
気管支喘息では、ハウスダスト・花粉・動物との接触、あるいは気温や気圧の変化、たばこや線香の煙などさまざまなきっかけを契機として、喉に乾燥や違和感を自覚して喉が詰まる感じや呼吸困難などの症状が出現する傾向が認められます。
また、過換気症候群は、精神的な不安や緊張などを感じているときに、自分の意思とは無関係に呼吸回数が通常よりも多くなってしまう状態のことです。
一度発症すると、急激に手足にしびれ症状や筋肉のけいれんをきたすようになり思い通りに動けなくなってしまう病気であり、一般的には、男性よりも女性に多く、特に若い方にみることが多い疾患です。
過換気症候群を発症すると、自分自身でも混乱してしまい不安が助長されて悪循環に陥って、うまく発作を止めることができなくなることが多いです。
過換気症候群では、症状として突然発症する息苦しさや異常な過呼吸が出現します。
これらの発作の誘因は不安や緊張、興奮状態などであり、きっかけとなる場面に遭遇したときに過呼吸が発症することが往々にしてあります。
発作を自覚すると呼吸ができなくなることへの強い不安を感じることに繋がり、悪循環的に
呼吸回数が増加します。
呼吸回数が増加すると、肺からの二酸化炭素の排泄がより増加し、血液中の二酸化炭素が正常よりも低下することでさまざまな症状が引き起こされます。
またそれらの症状を発現すると同時に、交感神経も亢進して過剰に働く状態になることから、手足のしびれや筋肉の収縮、あるいは硬直症状(筋肉が固まること)、頻脈、血圧上昇などの交感神経優位症状が出現します。
咽喉頭異常感症
咽喉頭異常感症とは、咽頭喉頭に異常な感じる状態であり、原因を特定することができない真性咽喉頭異常感症(真性)、そして原因が特定可能な症候性咽喉頭異常感症(症候性)があります。
咽喉頭異常感症は「咽頭喉頭に異常な感じがある症状」を訴える症候群であり、特定することが可能な症候性咽喉頭異常感症には咽喉頭酸逆流症、喉頭アレルギー、咽頭癌・口腔がんなどの腫瘍性病変、鉄欠乏性貧血、うつ、不安障害など多岐に渡る疾患が含まれます。
真性の咽喉頭異常感症では、明確な発症原因の同定はできませんが、慢性的な不安や緊張感、疲弊などのストレスからくる自律神経の乱れも関連性があり、自律神経のバランスが崩れて交感神経が優位になると、食道付近の筋肉が過剰に収縮して症状が出やすくなります。
咽頭等異常感症の代表的な症状としては、喉の異常な感じが出現し、場合によっては何かがのどに引っ掛かって圧迫感やイガイガ感を自覚するケースもありますが、実際の食事や呼吸にはほとんど問題がありません。
自律神経失調症
自律神経失調症は何らかの原因で自律神経に関連するあらゆる機能が乱れることによって起こります。
自律神経は、交感神経と副交感神経と呼ばれる2つの反対の作用をもつ神経から構成されていて、一般的に交感神経は体を活発に動かすときに作用して、副交感神経はリラックスしているときに働く特徴があります。
健康な人では、正反対の役割を持つこれらの神経がバランスを取りながら正常な状態を保つことができますが、ストレスやホルモンバランスの乱れによって片方の神経が過剰に興奮した状態が不均衡に続くと、さまざまな症状が現れるようになります。
自律神経失調症の症状はさまざまで、個々によって現れやすい症状がそれぞれで異なり、息苦しさを訴える場合もあれば、お腹が痛くなりやすい人は下痢や腹痛などのお腹の症状が現れやすく、肩がこりやすい人はひどい肩こりが起こりやすくなる傾向があります。
また、複数の症状が一度に現れたり、いったん治ったと思ったら別の症状が再び現れたりすることもあります。
逆流性食道炎
逆流性食道炎は、従来では日本人に少ない病気でした。
ところが食生活の変化などによって、最近患者数が増加しています。強い酸性を呈する胃液や胃で消化される段階である食べ物が食道に逆流して炎症を引き起こすことによって息苦しさやのどの違和感、胸やけや胸痛などいろいろな症状を自覚します。
逆流性食道炎は成人の約15%前後が罹患していると推定されており、特に中高年や高齢者に多く発症し、適切な治療を受けない場合は胸やけ症状などが持続することで日常生活に少なからず支障をきたすようになります。
逆流性食道炎は、下部食道括約筋の機能が低下することで、胃酸が逆流を起こして食道に炎症が広がるのみならず、食道の蠕動運動が悪くなると胃の内容物が一時的に逆流した際に迅速に胃に送ることが困難となり食道にさらに炎症を惹起させることに繋がります。
逆流性食道炎は、加齢・食事の内容・肥満・姿勢などによって、食道を逆流から守る仕組みが弱まるか、胃酸が増えすぎることで胃液が逆流するために起こりますし、脂肪分や蛋白質の多い食事内容を日常的に食べ過ぎることで胃酸が過剰に増加すると考えられています。
狭心症
狭心症という病気は、心臓の筋肉組織に重要な酸素成分や栄養要素を供給する冠動脈という血管と多大に関与しています。
狭心症では、冠動脈の内側に微小な血栓やコレステロール成分が貯留することで血管の内径が狭くなると、当然のことながら血液の流れが悪くなることで心臓に十分な栄養分を供給できなくなることで息苦しさや胸痛、胸部圧迫感などの症状が出現します。
狭心症が発症する原因は、そのほとんどのケースにおいて生活習慣病や動脈硬化が関連していることが知られています。
加齢に伴って誰にでも発症する可能性がある病気であり、症状発作の現れる様式や胸部症状が出現する頻度やタイミングなどによって主に労作性狭心症・異型狭心症(冠攣縮性狭心症)・不安定狭心症・微小血管狭心症の4種類に分類することができます。
カンジダ性食道炎
カンジダ症はカビ菌の一種が体の表面に感染し、赤みやかゆみ、痛み、腫れなどが生じる病気であり、発症する部位が多様なほか、乳児から高齢者までの幅広い年代に発症します。
カンジダ性食道炎は、食道内に発症するカンジダ症で、内視鏡検査で食道の粘膜表面に白い苔状の付着物が確認できます。
代表的な症状に、のどが詰まる感じ、息苦しさ、胸焼け、胸の痛み、食べ物を飲み込む時の痛みなどがありますが、無症状である場合も多く、内視鏡検査で偶然発見されるケースも少なくありません。
症状が出現した部位に応じた診療科を受診します。例えば、口の中の場合は歯科・口腔外科、カンジダ性食道炎の場合は内科・消化器科、皮膚の場合は皮膚科、外陰・膣の場合は婦人科を受診しましょう。
好酸球性食道炎
好酸球性食道炎とは、好酸球というアレルギー反応に関与する白血球が、食道にたくさん集まって慢性的な炎症を生じさせる病気です。
炎症が持続することによって食道の動きが悪くなり、食事が通りにくくなる、のどが詰まってつかえる感じや胸やけ、胸の痛みなどの症状を生じます。
さらに進行すると食道が狭くなって、食事が詰まってしまうこともあります。
好酸球が食道だけに集まった場合に好酸球性食道炎と呼び、胃や腸にも集まって炎症が起きている場合には、好酸球性胃腸炎と診断されます。
甲状腺疾患
喉が詰まる感じ、違和感が続く場合に考えられる病気として甲状腺疾患が挙げられます。
甲状腺は喉の下あたりにある、蝶が羽を広げたような形をしている器官であり、甲状腺ではヨウ素を材料として甲状腺ホルモンを作り出しています。
この甲状腺ホルモンは、体の発育や成長、新陳代謝などに欠かせない大切な役割を担っています。
甲状腺の病気は、血液中の甲状腺ホルモンが多いバセドウ病、血液中の甲状腺ホルモンが少ない橋本病、甲状腺に腫瘤ができる甲状腺腫瘍などに大きく分かれています。
特に、バセドウ病は甲状腺機能亢進症の代表的な病気であり、特徴的な症状は甲状腺の腫大、眼球突出、頻脈、喉が詰まる感じ、息苦しさなどがあります。
バセドウ病は、女性に多くみられる病気で、遺伝性があり、家族や親せきにバセドウ病を罹患されている方がいる場合は注意が必要です。
病院を受診した方がよい場合
喉が詰まる感じや息苦しさなどの症状に加えて、強い胸の痛みや冷や汗、ひどい咳などを伴う、あるいは安静にしても症状が改善しないなどの場合には心臓や肺の病気をはじめとする危険な病気が潜んでいる可能性がありますので、早急に医療機関を受診しましょう。
それ以外にも、意識障害があって呼びかけに反応しない、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった呼吸音の異常がある、異物や食べ物を飲み込んで窒息した疑いがある際にも、救急車を呼んでできる限り早く救急医療機関を受診することが大切です。
また、呼吸器症状などが軽微で他の症状も伴わずに家庭内や仕事面で生活に重大な支障がない場合には、待機的にかかりつけの医療機関や一般的な総合内科を受診して相談しましょう。
まとめ
これまで、喉が詰まる感じはどうして起こるのか、息苦しさの原因や病院を受診した方が良い場合などを中心に解説してきました。
息苦しさや呼吸がしにくい症状、喉が詰まる感じを自覚している際には、気管支喘息や過換気症候群、咽喉頭異常感症、自律神経失調症、逆流性食道炎、狭心症などの病気を疑います。
心臓病や肺の疾患、消化器関連の病気や精神的な原因でも息苦しさなどの症状を感じることがありますので、心配であれば最寄りの内科やかかりつけの医療機関でまずは相談して適切な診療科を紹介してもらいましょう。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。