子供の血圧は成人とは異なる?高血圧になる原因

高血圧というと中年以降に増えるものというイメージがあります。実は、子供のときから血圧が高いケースが一定数あり、そうした子供は成人してから高血圧になるリスクが高いことが分かっています。ここでは子供の血圧や高血圧の問題について解説します。
目次
成人との違いは?子供の血圧の特徴

高血圧はしばしば小児期に始まり、世界全体では、小児の約4%が高血圧を有すると推定されています。
日本でも、小児の高血圧の割合は増えつつあるとみられますが、これはおそらく、過体重または肥満の小児が増えているためと考えられます。
子供の血圧に基準はある?
13歳未満の小児では、高値とみなされる血圧値が性別、年齢、および身長によって異なるため、すべての小児にとって高血圧を明確に規定する血圧の値は存在せず、性別、年齢、身長が同じである小児のうちの90%の血圧値より高い場合に、高値血圧と診断されます。
血圧は年齢、身長、体重に伴って高くなるため、小児では成人より低く、成人のようにひとつの基準値で高い、正常などと決めることができません。
小児用の年齢、性、身長別の基準表があり、それを参照して判定します。
小児が血圧測定する際にも、体の大きさに合ったカフ(腕にまく帯)を選ぶ必要があります。
子供は、泣いたり、暴れたり、緊張すると高くなりますので、低年齢のお子さんでは特に繰り返して血圧を測定する必要があります。
健康な小児でも血圧の測定が必要ですし、3歳以上のお子さんは、何かの機会で受診する際には最低1年に1回は血圧を測ってもらうようにしましょう。
青年の基準
青年(13歳以上)では、血圧は成人と同様に、正常血圧は収縮期血圧が120未満かつ拡張期血圧が80未満、正常高値血圧は収縮期血圧が120~129かつ拡張期血圧が80未満、I度(軽症)高血圧は130/80~139/89、II度高血圧は140/90以上と分類されています。
子供の高血圧と成人本態性高血圧の関係

「小児に高血圧なんて本当にあるのか」と思われるかもしれませんが、成人でみられる本態性高血圧(明確な原因がない高血圧)は、子どものときからすでに始まっていることが知られています。
高血圧は脳卒中、心筋梗塞などの生活習慣病の最も重要な原因であり、早い時期から予防、治療することが大事であり、成人と同様に、小児においても高血圧のほとんどが本態性高血圧であり、肥満との関連が強く、肥満の増加に伴って高血圧も増加するといわれています。
小児の高血圧では臓器障害の進行、および成人の高血圧への移行(トラッキング)が問題になるため、小児期からの適切な管理が重要となります。
中学時代の血圧と20年後の血圧を比較した研究では、中学時代に正常血圧で20年後に高血圧となった人の割合が5%程度であったのに対して、中学時代に高血圧であった人が20年後も高血圧だった割合は約20%だったとしています。
子供は血圧測定の機会が少ないので注意

日本では高血圧有病率が高く、小児期からの高血圧予防が注目されつつありますが、小児には高血圧の頻度は低く、実際に血圧の測定に際しても、安静を保つことが困難であることが多く見受けられます。
体格によるカフサイズを変更する必要があるなど測定に手間がかかる上、性別や年齢、体格により血圧基準値が変わるため、小児の血圧測定がほとんど行われていないのが実情です。
高血圧有病率は年齢が高いほど高くなりますが、成人高血圧発症の起源は小児期に端を発すると考えられており、近年メタボリックシンドロームの概念の普及とともに高血圧をはじめとする生活習慣病予防に対する国民の意識が高まりつつあります。
小児においても生活習慣病と関連疾患の診断基準が整備されて、一部の地域では小児生活習慣病予防健診が実施されていますが、高血圧に関しては、実際に小児の血圧を測定する機会は限られており、正常値を設定するための基礎データすら十分集積されていません。
特に成人期以降の高血圧を減少させるためには、比較的少ない高血圧の小児に対してのみでなく、全小児を対象とした高血圧の一次予防が必要であり、広く小児を対象とした学校健診などにおける血圧測定は、健康教育にもつながると考えられます。
子供の高血圧の原因

子供の高血圧の原因としては次のものが挙げられます。
肥満の影響
小児の高血圧は成人と異なり、腎臓、内分泌、心臓、神経などの異常が原因であることが多いといわれていますが、実は本態性高血圧が最も多く、肥満の増加に伴い増加しています。
子供が過食することによって、過剰な塩分摂取やインスリン分泌が行われ、肝臓に脂肪が溜まった時に生じる神経信号が血圧上昇に関わっていることが判明してきています。
小児の本態性高血圧も成人同様に肥満との関連が強いといわれています。
肥満度が増すほど高血圧の有病率も高くなることが明らかになっており、その原因として内臓脂肪の蓄積によってインスリン抵抗性が高まることや、脂肪細胞から分泌されるレプチンが作用することが考えられています。
遺伝的な要因
高血圧の発症には家族性要因が60%程度存在すると報告されていて、これは遺伝的要因だけでなく、濃い味付けを好む、偏食・過食による肥満が多い、運動不足など家族で同じような生活環境であることが関与していると考えられています。
両親、おじいさん、おばあさんが高血圧であったり、こども本人が肥満であったりすると血圧が高くなるリスクが上がります。
一般的に、遺伝的な要因が関連している場合には、思春期を過ぎたころに血圧が高くなって発見されることが多いのですが、太っている場合はもっと若いときに診断されます。
食生活に問題がある
通常、塩分の摂りすぎは高血圧を招いて血管や心臓の負担を増大させて、動脈硬化や心肥大につながり、脳卒中・認知症・心筋梗塞・心不全・腎不全などの発症要因となります。
小児期からの健康的な生活習慣が健やかな成長のために重要であり、特に、肥満のある子どもでは、適切なエネルギー摂取や栄養バランスのよい減塩された食事を心がけるとともに、早食いや丸飲み等、肥満につながる食べ方を是正することが大切です。
病気の影響
急性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎、先天性腎尿路異常、腎盂腎炎、腎動脈狭窄、多発性嚢胞腎などの腎臓病が小児の高血圧の原因になることがあります。
尿細管異常で血圧が高くなるまれな病気もありますし、腎臓の腫瘍が原因で高血圧になることがあります。
内分泌の病気として、ホルモンが出すぎて血圧が高くなる病気には、甲状腺機能亢進症、クッシング症候群、褐色細胞腫などがあります。
また、神経線維腫症という神経を含む種々の臓器に異常を来す病気も、腎動脈狭窄、褐色細胞腫などに伴って、高血圧になることがあるので、定期的な血圧測定が必要です。
心臓大血管においては、高血圧になる代表的な病気として、生まれつきのものでは大動脈縮窄症、後天性のものでは大動脈が侵される大動脈症候群という病気があります。
新生児期に高血圧になる場合は、腎動静脈血栓、先天性腎尿路異常、先天性心疾患、慢性肺疾患など特徴的な原因があります。
二次性高血圧のうち、約80%が腎炎などの腎実質性高血圧であり、検尿異常を契機に発見されることがあります。
二次性高血圧では、非常に高い血圧を示すことがあり、速やかに医療機関へ受診することが必要となります。
まとめ
高血圧は、成人だけでなく小児にもみられる疾患です。
日本においては健常な小中学生の約0.1~3%が高血圧に該当すると推定されています。
年齢が低い場合などには、他の疾患に起因する二次性高血圧が疑われることもありますが、小児においても成人と同様、ほとんどの場合が原因不明の本態性高血圧であると考えられます。
心配であれば、小児科や循環器内科など専門医療機関を受診してください。
今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。