ニコチンとタールの違いは?タバコに含まれる有害物質と健康被害

タバコが体に悪いということは誰しもが知っている事実だと思います。その中でも、ニコチンとかタールとかいう物質については名前を聞いたことはよくあると思います。それぞれどのように悪影響を及ぼすのか、解説します。
タバコに含まれる有害物質

タバコにはどのような有害物質が含まれているのでしょうか。実はタバコの煙には5300種類もの化学物質が含まれており、その中には約70種類の発がん性物質が含まれていると言われています。
中でも3大有害物質と呼ばれるものが、ニコチンとタールと一酸化炭素です。それぞれの物質について見ていきましょう。
ニコチン
ニコチンは、タバコの依存性の主たる成分になります。化学物質としては毒物に指定されています。
ニコチンは、そのものがタバコの葉っぱに含まれており、燃焼させて吸い込むことによって体の中に入り込みます。肺の中に入ったニコチンは、血液中に取り込まれ、血液中のニコチンは急速に全身に広がります。
特に依存性の原因となるのが、中枢神経系にあるニコチン性アセチルコリン受容体です。受容体というのは、化学物質が結合することによって様々な作用を発揮する体の構造ですが、この受容体にニコチンが結合することによって、快楽に関わる脳内神経伝達物質であるドーパミンが大量に放出されます。ドーパミンだけではなく、ノルアドレナリンやセロトニン、アセチルコリンなど、様々な物質が放出されるのが特徴です。
もともと神経伝達物質の調節は体が自動的に行っているものですが、喫煙をすることによってニコチンが神経伝達物質を放出する刺激を与えるようになると、体の自動調節機能がなくなり、ニコチンがないと神経伝達物質が放出されなくなってしまいます。
このようにして、タバコを吸わないとドーパミンなどの神経伝達物質が分泌されないのでイライラが起こってくるのです。これがニコチンによるタバコの依存の原因になります。
ニコチンがさらに問題となるのは、ニコチン自体に強い血管収縮作用があることです。血管が収縮すると、血圧が上昇します。それによって、様々な合併症が起こってくることがあります。
また子供にとっては、非常に強い劇物になります。中毒性があり、誤って口にすると中毒を起こし、生死にかかわります。
ニコチンそのものは発がん性ははっきりと分かっていませんが、ニコチンが分解代謝されることによって生み出される、ニトロソアミン類には発がん性があることも分かっています。
タール
タバコのヤニと呼ばれる成分で、タバコの煙のうち、一酸化炭素やガス成分を除いた粒子状の成分のことを言います。タバコの煙に含まれているもので、不完全燃焼によって発生する燃焼副生成物の総称です。タールの中には、発がん性物質が約70種類含まれていると言われています。
タールは粘着性が高いですから、タバコの煙として吸い込んだ時に肺の中に付着して、じわじわと悪影響を及ぼします。タバコを吸うと肺が黒くなるというのはタールが付着しているからです。
一酸化炭素
物質が燃焼すると二酸化炭素が発生します。しかし、不完全な燃焼を起こすと、一酸化炭素が発生します。
一酸化炭素が体に対して悪影響を及ぼすのは、酸素の運搬です。酸素は血液中のヘモグロビンという物質に結合することによって運ばれます。しかし、一酸化炭素というのは酸素の数百倍ヘモグロビンと結びつきやすい性質を持っているため、一酸化炭素を吸入してしまうと、ヘモグロビンが一酸化炭素に結びつき、酸素が運搬できなくなります。
このことによって、体中への酸素の運搬が不安定となり、酸素不足の症状を起こしてしまいます。
一酸化炭素がヘモグロビンに結びついた状態はすぐに改善しません。一般に普通の空気を吸った状態では、3時間から4時間程度血液中で結合したままになると言われています。その間は酸素欠乏になりますから、特に頻回に喫煙する人は体中が酸素不足となっています。
体はそれに対して、様々な反応を示します。まず、酸素が結合できるヘモグロビンが不足しますから、ヘモグロビンの量を増やしていきます。それによって多血症と呼ばれる状態になることがあります。多血症の状態を放置すると、血液の流れが悪くなり、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが上昇することがあります。
また血管にも影響が起こります。一酸化炭素は血管の動脈硬化を促進するとも言われていて、これによっても脳梗塞や心筋梗塞などが起こってくることがあります。
ニコチンとタールの違い

ニコチンもタールも、体に対して悪い影響を及ぼします。大まかに言うと、ニコチンは依存性の原因物質です。体への影響も少しはあります。
一方、様々な病気を引き起こす原因物質としてはタールの方が影響が大きいと言えるでしょう。
タバコによる健康被害の一例

タバコが健康に与える悪影響はいくつも考えられます。中でもCOPD、赤ちゃんへの影響、がんなどはタバコの害として広く知られています。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
タバコを吸い続けていて発生してくる病気が慢性閉塞性肺疾患です。
肺はもともと、肺胞と呼ばれる小さな袋がたくさん集まっている構造をしています。肺胞と肺胞は、肺胞壁と呼ばれる壁で接していて、その壁の中には毛細血管や、弾性繊維と呼ばれる引っ張ったら縮む繊維質で満たされています。
しかし、タバコを吸っていると、タバコの煙の中にある有害な成分によって、肺胞壁が壊されてしまいます。それによって、酸素の血液中への取り込みが阻害されるだけではなく、肺が縮む動きも阻害されてしまいます。そのため、酸素が不足して息苦しいのに、なかなか呼吸ができないという非常に苦しい状態に陥ってしまいます。
また、毛細血管がなくなることによって、心臓にも負担がかかります。
生まれてくる赤ちゃんへの影響
妊娠している人がタバコを吸うと、ニコチンの影響によって胎盤への血流が低下し、さらに一酸化炭素の影響によって、酸素の供給量が低下します。生まれてきた子供には低身長や低体重の子供が多いことが分かっていますし、口唇・口蓋裂や先天性心疾患など、様々な先天異常が起こりやすくなってくることが分かっています。
がん
タバコの中には発がん性物質が含まれています。タバコの影響で発症しやすいがんとしては、肺がんや鼻腔や副鼻腔の癌、食道がん、胃がん、膀胱がん、乳がんなどがあります。
これらのタバコによる影響は、喫煙者ももちろんですが、喫煙者の近くで生活する人、すなわち受動喫煙者にも起こってきます。周りの人の健康に悪影響を与えない配慮が求められます。