尿の色でわかる脱水症状…脱水が疑われるサインとは

暑くなって汗をかく季節になってくると、脱水症が気になります。脱水とはどのような状態で、どのように判断すればよいのでしょうか。脱水の状態では尿の色が変わるといわれているのも気になるところでしょう。ここでは脱水症状について詳しく見ていきましょう。
体内の水の働きと脱水

人の体は多くの水でできています。年齢によっても変わってきますが、乳児で体重の約70%、成人で約60%、高齢者で約50%が水分です。
体内の水分のうち、3分の2の量が細胞の中に蓄えられています。残りの3分の1が細胞の外に存在しています。細胞の外にある水分の中で、おおよそ4分の1が血管の中にあり、残りの4分の3が血管の外に存在します。
体重が60kgの成人で考えると、60%が水分ですから36Lの水が体の中には存在します。そのうち細胞の中に24Lが存在し、12Lが細胞の外です。細胞の外にある水分のうち、3Lが血管の中を常に流れているということになります。
体内の水分を考えるとき、こうした細胞の中と外の区別、血管の中と外の区別は重要です。
細胞の中と外は細胞膜という膜によって隔てられています。 この膜は水分を自由に通すことのない 構造をした膜になります。細胞の中の環境は、常に一定に保たなければなりませんから、トランスポーターという特殊な構造が膜に存在し、必要な水分だけを出し入れするようにしているのです。
一方で、血管の中と外を隔てるのが血管壁です。血管壁は、実は穴ぼこだらけになっていて、水や電解質は自由に行き来することができます。そのため、細胞の中と外では電解質の濃度は大きく異なりますが、血管の中と外では電解質の濃度はほとんど差がないのです。
体の中で水分は非常に重要な役割を果たしています。例えば酸素や栄養素を運搬する役割を担っているのも水分です。体の中で様々な物質が作られたり分解されたりといった代謝にも水が使用されます。汗をかくことで体温を一定に保つのも水の役割です。
人だけではなく、ほとんどの生物はこのように重要な水を体の外から摂取して、一部は老廃物を排出するために体から排出することで一定の量に保っています。
また水分を維持するために、ナトリウムを忘れてはなりません。体の中の水は真水ではなく、薄くナトリウムが溶けた状態の水が使われています。140mEq/L という濃度のナトリウムが混じった水のことを、等張性の水と呼びます。これが標準の状態というわけです。
しかし、このような必要な水分と電解質、特にナトリウムが不足すると、体の機能が落ちてしまいます。生命維持に欠かせない水分は体重の約1%か2%程度の減少であっても、機能が落ちてしまうと言われています。このように、必要なだけの水分が体の中にない状態のことを脱水症というのです。
脱水症状の種類

脱水症には高張性脱水、等張性脱水、低張性脱水があります。これらは、細胞の中の水分がどのようになっているのかによって分類され、原因や症状も異なります。
高張性脱水
高張性脱水は、細胞の中の水が濃くなってしまうことを言います。化学でいうと、浸透圧が高い状態です。
このような脱水が起こるのは、特に水が飲めない状態にある人に起こってきます。喉の渇きの訴えが弱くなっている高齢者や、あまり喉の渇きを訴えられない子供、あるいは喉の渇きを感じる脳の部分が障害されていてダメージを受けてるような人が当てはまります。
この脱水は発汗や水分摂取の低下などから始まります。このようなことが起こると、細胞外の水分がどんどんと失われていきます。通常であれば水を飲むことによって細胞外の水分が補充されますが、この状態でも水を飲まないと、細胞外のナトリウム濃度が非常に高くなってしまいます。すると、ナトリウムの濃度を維持しようとして細胞の中から水分だけが血管の外に出てしまうのです。
こうなってくると細胞の中も浸透圧が高くなり、高張性の脱水になってしまうのです。
高張性脱水が怖いのは、細胞の中の浸透圧が変わってしまうことです。前述の通り、細胞の中の水分はナトリウムの濃度も含めて非常に厳密にコントロールすることによって、細胞の働きを助けています。これが狂ってしまうわけですから、様々な症状が出てきます。
一般的な脱水で起こってくるような口の乾きや倦怠感、脱力だけではなくて、興奮であったり傾眠であったりといったような精神症状が起こってきたり、痙攣や意識障害が起こってきたりすることがあります。高齢者や子供は、特に注意が必要です。
等張性脱水
等張性脱水は、出血や下痢、熱傷など、急速に細胞外液が失われる時に起こってきます。ナトリウムと水同時に血管の外へ出てしまうため、浸透圧自体は変化しません。そのため、細胞の中から水分が出ることもないために、細胞の中の浸透圧も変化しません。
このような脱水の時には、倦怠感や脱力だけではなく、立ちくらみやめまい、意識障害など、血液の循環がうまくいっていないことによる症状が起こってきます。
低張性脱水
低張性脱水は比較的まれな状態です。主に嘔吐や下痢によって起こってきます。嘔吐や下痢といった症状の場合には、体から出ていく水分の中に電解質が多く含まれていますから、水分の喪失以上に電解質が失われてくることによって、体の中の水分が余り、浸透圧が低くなります。
こうなってしまうと、細胞外の水分を保つことができなくなってしまいますから、水分が細胞の中へと移動します。それによって、血液の巡りが不十分となり、立ちくらみやめまいの他、細胞内の浸透圧が下がることによって吐き気や痙攣、意識障害を起こすることがあります。
尿の色でわかる脱水症状

脱水を見極めるポイントは色々ありますが、最も簡便にわかるのが尿の色です。
余分な水分や体に必要なくなった物質は腎臓で処理されて、尿として排出されます。この時、腎臓はかなり多くの物質や水分を尿として作り、必要なものを再吸収します。
再吸収する時に、体の中の物質や水分の必要量を判断し、必要な分量だけを再吸収することによって、体の中の濃度を維持しています。
そのため、体内に水分がたくさんある時には腎臓が余分な水分を尿にして排出する一方で、水分が少ない脱水の状態では、水分をあまり体の外に出さないようにします。そのため、尿の水分の量が減少します。排出される尿の量は少なくなり、尿に含まれる物質の濃度が高くなりますから、尿の色が濃くなってきます。
水分量が正常な場合には、尿の色は薄い黄色です。しかし、水分量が不足していくと、尿の黄色味は濃くなっていって、オレンジ色や茶褐色へと色が変化します。
尿の色が濃い場合にはすぐに水分を取った方がいいでしょう。水分をとっても尿の色が変化しない場合には、 他の原因によって尿の色が変わっている可能性がありますから、病院で精査をする必要があります。
他にもある脱水が疑われるサイン

他にも脱水を疑うポイントがいくつかあるので紹介しましょう。
1つ目は、爪の循環です。爪の色はもともとピンク色ですが指で押さえると白くなります。白くなった状態から指を離すと、 ピンク色が戻ってきます。この戻ってくる時間が、だいたい2秒以内が正常です。2秒以上経つ場合には、何らかの循環不全があると思われますので、まずは脱水を疑って水分を取るのがいいでしょう。
皮膚の張りもポイントです。手の甲の皮膚をつまんでみて、その形から3秒以上元に戻らない時にも脱水症の疑いがあります。あるいは、手が冷たくなるのも脱水の症状になります。
また、舌や脇が乾燥しているのも脱水のサインになります。
脱水を防ぐには?

脱水になると水分を取ってもすぐに改善しないことが多いです。そのため、脱水にならないように気をつけるのが重要です。
水分をこまめに取ることはもちろん、直射日光になるべく当たらないようにして日陰を選ぶ、休憩をなるべく取る、風通しの良い服を着るなど、一般的な脱水を防ぐような行動を取ることが重要です。