黒、白、緑色?便の色の種類と体調の関係とは

お悩み

普段、あまり自分の便を見ることは無いかもしれませんが、便には身体の調子を知るヒントが色々と隠されています。

ここでは便の色に注目し、健康的な便の特徴や、便の色が変わる原因、便の色から推測できる健康状態などについて解説します。

健康的な便の特徴

便は自分の体調や健康状態を知る上でのひとつの大事なバロメーターとなります。

健康的な便とは、茶色~黄土色の色合いをしていて、バナナ型(太く、ブツブツ切れていない)であり、排便時に無理にいきまなくてもスムーズに出てくる状態を指しています。

一般的に、植物性の食物を多く食べる人では量が多く軟らかい便で、肉類を多く食べる人では乾燥した少ない便をする傾向があります。

1日の量の平均は100~200gぐらいで、重さの3分の2が水分、3分の1は腸内細菌、セルロースや不消化物、胃や腸の分泌物や剥離した細胞から構成されています。

便回数については、1日3回~1週3回程度の回数なら正常範囲内です。

便の色が変わる原因

便の色が変わる原因はいくつも考えられます。

胆汁が上手く働いていない場合

消化液である胆汁の中にあるビリルビンは、赤血球の分解物から産生される胆汁の色素です。

ビリルビンは肝臓でグルクロン酸抱合という変化を受けて胆汁の中に流れ、十二指腸に排泄されてウロビリノーゲン(一部は再吸収されて胆汁中に再分泌される)、そして橙色のウロビリン(大半が便中に排泄される)に代謝されます。

これらの胆汁色素が典型的な便の色素となっていて、胆汁が上手く働いていない場合には、ビリルビンが変化を起こして、便の色が変わる場合があります。

ビリルビンによって色がつかない場合には、白っぽい便になります。

胆汁が十二指腸に流れて来ない胆管癌、総胆管結石などによる狭窄や閉塞、急性肝炎などによる強い肝機能障害などがあれば、便が変色する可能性があります。

血液やバリウムなどの色が混ざる場合

一部の薬剤や、胃や腸などの消化管からの出血による血液が混ざった場合には、便の色が変わる可能性があります。

例えば、健康診断などでバリウムを飲んだ後は白い便が出ますが、心配はありません。

また、貧血のために鉄剤を内服していると黒い便が出ますし、イカ墨パスタを摂取すれば黒い便が出ても不思議はありません。

便の色の種類と体調の関係

トリアージと救急車

便の色から健康状態を推測することができます。便の色ごとに傾向を確認しましょう。

黄色の便

黄色の便は下痢便などで見られます。例えば、牛乳の多飲、下剤の服用や脂肪便の時でも黄色の便が見られます。

乳製品の過剰摂取、下剤の服用などが黄色の便の原因になっている場合には、原因を排除することで改善します。下痢が続く場合には胃腸での感染や疾患が疑われますので、医療機関を受診しましょう。

赤色の便

血便といわれる赤色の血液が混じった便、もしくは表面についた便が出たときは通常、小腸や大腸などの下部消化管や肛門からの出血を疑います。

上部消化管出血でも出血量が多く、急速に腸管を通過するような場合には、便の色が赤くなる場合もあります。

血液が混じったように見える便や赤黒い感じの便は比較的上部消化管の方からの出血、便の表面に血液が付着しているような場合や鮮やかな赤色の血便は比較的肛門に近い部分からの出血など、ある程度の推測ができます。

赤い血液が出てきている、粘液や膿が混じっているといった場合は、直腸やS状結腸などの炎症が疑われ、新鮮血の場合は痔核などの肛門からの出血が疑われます。

血便をきたすような病気には、腸管出血性大腸菌による出血性腸炎などの感染性腸炎、大腸憩室からの出血、大腸がんや大腸ポリープなどの腫瘍からの出血、虚血性大腸炎、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患、痔核や切れ痔といわれる裂肛などが挙げられます。

黒色の便(タール便)

消化管出血による黒色便は血液が胃酸と混じって変化を起こし、便が黒色(タール便)に変化します。

この場合は主に上部消化管である食道、胃、十二指腸からの出血を疑います。代表的な疾患として、食道癌、逆流性食道炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃癌、十二指腸癌、急性胃粘膜病変などが原因として挙げられます。

黒色便になるには約100〜200mlの上部消化管出血が必要といわれています。典型的な場合は、タール便といわれるコールタールのようなべったりした感じの便の性状になることが多いです。

緑色の便

母乳の赤ちゃんの便や緑色を呈したクロロフィルを多く含む緑色野菜を大量に食べる人の便は緑色調になります。

クロロフィルを含む緑黄色野菜の多量摂取や母乳を飲む赤ちゃん以外にも、急性腸炎、胃腸の消化不良を原因とする場合も散見されます。

緑色の便の場合には、胆汁の排泄に関連していることがあり、胆汁の流れや消化管の運動異常、食物摂取の影響などが原因となる場合があります。

一般的には食物の影響であることが多く、通常は短期間で自然に改善します。

灰白色の便

便が灰白色の場合、胆汁の流出が悪いか、胃透視時のバリウムによるものが考えられます。

バリウム検査を受けたケースは例外ですが、便が白っぽいもしくは、灰白色の場合は、胆汁色素の流れが低下している可能性があり、腸結核や膵疾患などが疑われます。

病院を受診した方がよい便の色は?

乳白色~薄黄色の便で、油の成分が出ており、水に浮いている場合、脂肪便の可能性があります。

脂肪便が時折出る程度であれば心配する必要はありませんが、1週間以上連続して続く場合は、慢性膵炎の疑いがありますので、早急に病院を受診することをおすすめします。

慢性膵炎は、膵臓が長期間にわたって炎症を起こしている状態です。脂肪便以外にも背中やみぞおちの痛み、食欲低下などの症状が現れることがあります。

膵臓は消化酵素を分泌する役割を持っていますが、慢性膵炎では消化酵素の分泌が低下し、消化不良や糖尿病を引き起こす可能性もあります。

また、膵臓がんの場合も脂肪便が出現することがあります。膵臓がんは早期に発見するのが難しいため、症状が現れた時点での早期診断が重要です。早めに専門医療機関を受診しましょう。

まとめ

これまで便の色の種類と体調の関係などを中心に解説してきました。

便通の異常とひとくちに言っても、頻度、硬さ、ゆるさなどの性状、色、臭いなど、さまざまな異常があります。

その性状や色やにおいから今の自分の体調を理解して、変化があった時には身体のどこかの不調を考慮して、何らかの病気の存在に早く気付く契機になります。

下痢や便秘は、ある程度の自分の感覚で分かりますが、便の色や性状については、意識して見なければ分かりませんので、ご自身の便の状態を確認する習慣を身につけておきましょう。

特に1日5回を超える排便の方や1週間に1~2回しか排便の無い方、極端な下痢症、排便の色が異常である場合には、消化器内科など専門医に相談することをお勧めします。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

プロフィール

関連記事