感染性心内膜炎の症状と原因…脳梗塞などの合併症はなぜ起きる?

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感染性心内膜炎は心臓内に生じる感染症です。すでに心臓に問題がある人に発症するほか、健康な人でも口腔内や皮膚の感染症がきっかけで発症することがあります。また、感染性心内膜炎の合併症として脳梗塞などが知られています。感染性心内膜炎はどのような病気なのか見ていきましょう。

感染性心内膜炎はどんな病気?

感染性心内膜炎は、心臓の中にある弁、腱索、心臓の壁に細菌が付着して感染を引き起こす病気です。

比較的まれな病気ですが、細菌が付着した部位が心臓の内部ということでなんらかの治療をしなければ命に直結します。

疫学的には、1年間に10万人に2人~6人の発症割合と言われていて、主に心臓弁膜症、先天性心疾患を有する方に発症しやすいと考えられています。

また、普段から口腔内の衛生状態が不良の場合、長年の透析患者、後天性免疫不全症候群など免疫不全者、糖尿病患者などの場合にも感染性心内膜炎に罹患しやすいと言われています。

ほかにも、人工弁を体内に有する患者さんも感染性心内膜炎を発症する危険性があります。感染性心内膜炎のおよそ10~20%前後は人工弁置換術後の患者さんであり、1年間で人工弁患者さん10万人のなかで1人の割合で感染性心内膜炎を発症するとされています。

感染性心内膜炎の症状

感染性心内膜炎の症状は、患者によって現れ方に個人差があります。

一般的には原因となる医療行為を行った後に微熱が続き、感染症状、心臓関連症状、塞栓症状に分けられています。

感染性心内膜炎の症状は病原体の種類や感染部位・炎症の程度などによって異なります。

感染性心内膜炎のほとんどの人は、発熱症状が出ますし、それ以外にも寒気・全身のだるさ・食欲不振など一般的な感染症に似た症状が現れる場合が多いです。

また、徐脈(心拍数が遅い)・頻脈(心拍数が速い)・息切れ・胸痛・動悸などの心臓に関係する症状が現れる場合もあります。

皮膚には体のあちこちに小さな出血点が現れたり、手足に痛みやしびれ・赤い斑点や結節が現れたりします。

したがって、これらの症状が現れた場合は早期に専門医師の診察を受け適切な治療を行うことが大切です。

特に、発熱や全身のだるさが続く場合や、心臓に関連する症状がある場合は早急に専門医療機関を受診することをおすすめします。

感染性心内膜炎の原因

感染性心内膜炎の原因としては次のものが挙げられます。

歯周病や歯科治療

感染性心内膜炎は、口腔内から細菌が侵入することが発症原因となることも多いため、日常生活で気をつける点は、口腔衛生の徹底です。

毎日の歯磨きやうがいを徹底し、虫歯や歯周病を予防するために歯医者へ定期的に通って、歯科治療を確実に行うようにしましょう。

感染性心内膜炎にかかりやすい人が、抜歯などの歯科医療処置を受ける際は、事前にかかりつけ医や担当の医師に相談しましょう。

処置を受ける際に抗菌薬を服用することで、感染性心内膜炎の発症予防につながります。

皮膚の感染症

感染性心内膜炎は、感染症によって体内に細菌やウイルスが侵入し、血液中を循環して心臓に到達することで発症することが多いです。

その中でも感染性心内膜炎は、皮膚の感染症がある場合にさまざまな病原体が原因で発症することがあります。

感染性心内膜炎の代表的な原因菌としてはストレプトコッカス(連鎖球菌)がもっとも多いといわれています。

最近では、黄色ブドウ球菌や腸球菌、真菌などさまざまな病原体が、感染性心内膜炎の原因として検出されています。

細菌の種類の違いによって、病状が緩徐に進行したり、反対に急激に悪化したりします。

心臓の手術

心臓の弁膜症や心筋梗塞・心臓手術後など、心臓にすでに問題がある場合にも、感染性心内膜炎を発症する可能性が高いといわれています。

また、心臓に人工弁(生体弁、機械弁)が入っている、心室中隔欠損症や動脈管開存症など生まれつきの心臓病がある、ペースメーカーや植込み型除細動器などを使用している場合には、感染性心内膜炎を発症しやすいと考えられています。

脳梗塞などの合併症はなぜ起きる?

感染性心内膜炎は治療が適切でなかったり、早期に対処しないと、重篤な合併症を引き起こす可能性があります。

例えば、心臓の内側の膜が炎症を起こすと、心臓の機能に影響を与えるので、心筋梗塞や心臓弁膜症のような合併症を起こすことがあります。また、心臓から脳に塞栓が飛び移ることで脳梗塞や脳出血を発生させることもあります。

血栓や脂肪、細菌などで血管がふさがった状態を塞栓と呼び、心臓で発生した感染巣が血流に乗って体の各部位に散らばると、さまざまな塞栓症状が生じる恐れがあります。

感染性心内膜炎における代表的な塞栓症状のひとつとして、脳梗塞が挙げられます。

脳梗塞は、脳の主要血管が詰まることで脳に酸素や栄養が届かなくなり、運動障害や感覚障害、言語障害などが起こる病気であり、発症時は片側の顔や手足の脱力、呂律が回らない、片目が見えない、体がふらつくなどの症状がみられます。

細菌が心臓から全身に飛んでいく塞栓症状も感染性心内膜炎の患者例の約半数に認められると言われています。

また、脾臓、腎臓、腸管領域に塞栓する場合もあり、それぞれの臓器レベルで機能障害や感染所見を引き起こすこともあります。

まとめ

これまで、感染性心内膜炎に脳出血はなぜ合併するのか、感染性心内膜炎の症状と原因などを中心に解説してきました。

感染性心内膜炎は、何らかの原因で血液中に病原体が入り込み、その血液が心臓に流れ込んで心臓内に菌塊や疣贅を形成します。そして、心臓の機能を妨げる、あるいは血液とともに別の部位に流れて、脳血管や末梢血管を閉塞させる場合があります。

感染性心内膜炎は感染症が原因で発症する場合が多く、健康な人でも発症する可能性があります。例えば、歯周病や虫歯から身体の中に菌が入ることで発症することもあるため、普段から口の中を清潔に保つことが重要となります。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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