足の付け根のできものは何?化膿性汗腺炎の特徴と治し方

足の付け根に何かできものができて困ったことはないでしょうか。様々な病気によって、足の付け根にできものができてきますが、もしかしたら化膿性汗腺炎かもしれません。ここでは化膿性汗腺炎の特徴や治し方について解説します。
化膿性汗腺炎はどんな病気?

化膿性汗腺炎は、赤く腫れ上がり痛みを伴うおできが繰り返しできる皮膚の病気です。
化膿性汗腺炎には結節、膿腫、瘻孔(ろうこう)、瘢痕(はんこん)があります。
結節は、しこりやこぶのようなもので触ると硬いのが特徴です。経過を見ているうちに赤く腫れてくることもあります。
膿腫は、皮膚の下に膿が溜まったもので、触るとややぶよぶよとした感じがします。皮膚が破れると、中の膿が流れてくる場合もあります。これを瘻孔といいます。
結節や膿腫、瘻孔を繰り返していると、だんだんと皮膚が分厚くなってきて硬くなってきます。このような状態を瘢痕といい、この状態になると状態が落ち着いてきます。
毛穴との関係
化膿性汗腺炎が起こりやすいのは、概ね20歳から40歳ぐらいです。よく起こるのが足の付け根です。他には乳房の下や、脇の下など、皮膚が擦れる場所によくできます。
化膿性汗腺炎ができる原因として言われているのが、毛穴の詰まりです。
皮膚はもともと、表皮の中でも一番深い層にある基底層の細胞が細胞分裂を起こすことによって増殖します。増殖した細胞はだんだんと浅い層へと移動し、一番浅い層にたどり着くと、フケとしてパラパラと落ちていくのです。これを皮膚のターンオーバーと言います。
この皮膚のターンオーバーが、何らかの原因でうまくいかなくなると、異常な細胞が多くでき、フケが増えます。同じようにして、毛穴もどんどん詰まっていくのです。このような状況が起こるのは、加齢の影響や、ホルモンの影響が考えられます。
毛穴が詰まると、その中に毛が閉じ込められます。その状態で周辺に力が加わったり摩擦が起きたりすると、毛を包んでいる袋が破れて内容物が漏れ出して炎症が起こります。
この炎症が進行することによって、前述の様々な状態が起こってくるのです。
毛穴との関係
化膿性汗腺炎が発症には、大きく4つの要素が関わっていると言われています。
喫煙
タバコに含まれるニコチンによって毛穴が狭まると考えられています。実際、化膿性汗腺炎を発症した患者さんでは、喫煙者の方が禁煙者に比べて2倍患者数が多いとも言われています。
肥満
肥満は肌の擦れることによる刺激が起こりやすく、化膿性汗腺炎の悪化につながります。また、炎症を悪化させるTNFαという物質の産生が肥満の人には多いと言われています。
遺伝
詳しい遺伝の形式については分かっていませんが、少なくとも30%~40%程度の患者さんが遺伝的な素因を持っていると言われています。
食事
乳製品や経口避妊薬などは毛穴の詰まりを引き起こすアンドロゲンという物質を含んでいるため、化膿性汗腺炎を引き起こしやすいのではないかと言われています。
化膿性汗腺炎の症状の特徴

前述のように、化膿性汗腺炎は様々な状態を示します。それらは独立したものではなく、順々に変化していくことが多いです。
最初に起こりやすいのが結節です。毛穴が詰まったせいでその部分の細胞の数が多くなり、硬くなります。時間が経つにつれてどんどんと大きくなってきます。そこに膿がたまったものが膿腫です。
膿腫が広がると炎症を生じてきて、隣同士の膿腫が繋がることがあります。これが瘻孔です。さらに炎症を拡大し、再発も繰り返すことによって皮膚が熱くなって傷跡が残るのが瘢痕です。このような症状が悪化すればするほど、慢性化したり傷跡が残る可能性が大きくなります。
初期の膿腫ぐらいの場合であれば、痛みを伴うおできがいくつかできる程度です。しかし、悪化すると擦れることで痛みが生じ、長時間座っているのが苦痛になったり、表面に膿が出ることによって臭いが生じてきたりと、生活に支障が出ます。
化膿性汗腺炎の治療

化膿性汗腺炎の治療は、大きく分けて内科的な治療と、外科的な治療に分かれます。それぞれ単体で行うこともありますが、重症度合いによっては複合して行うことも少なくありません。
内科的治療
内科的治療は、注射薬、飲み薬、塗り薬などがあります。特によく使用されるのは、ヒュミラという薬です。
ヒュミラの作用機序としては、免疫疾患の炎症反応に関わるTNFαというタンパク質が合成されるのを阻害することによって、炎症を抑えることにあります。関節リウマチや強直性脊椎炎などの自己免疫疾患によく使用される薬です。
2週間に1回程度皮下注射をすることによって効果を発揮します。副作用として、免疫系に異常をきたしますから、頭痛や上気道感染、咳や発疹、かゆみや発熱などがあります。
外科的治療
外科的治療としては、病変部を含めて少し広い範囲の皮膚を切除します。化膿性汗腺炎が発症した部位に、皮膚がんが発生することがあると言われていますから、炎症部分を含めて少しマージンをとって広い範囲をとるのが一般的です。範囲が広く、縫い合わせることが困難な場合には、植皮を行うこともあります。
まだ初期の段階で、硬くなっていない状態であれば、中の膿を排出するだけの目的で切開することもあります。もう少し負担が少ない方法としてレーザー治療があります。
他にもある足の付け根のできもの

足の付け根にできるできものには他にも種類があります。
粉瘤
粉瘤は、本来剥がれ落ちる垢や皮脂といった老廃物が、排泄されずに皮膚の内部に蓄積されることで生じる、良性の腫瘍です。最初は小さいものですが、老廃物が蓄積するに従ってだんだんと大きくなっていきます。
粉瘤の場合、特徴的なのは、小さな穴が開いていることです。この穴から細菌が侵入して感染を引き起こすことがあります。また膿が出てくることもありますので、化膿性汗腺炎と似た経過と言えます。
大きくなれば外科的な切除が必要となりますが、初期であれば抗生物質による治療が可能です。
毛包炎
毛包炎は、毛穴の奥の毛根の部分、すなわち毛包に炎症が起こる皮膚感染症の一種です。毛穴のある部分であれば全身どこでも発症する可能性がありますが、特に顔や背中、陰部などに起こりやすいと言われています。毛包部にできた小さな傷から細菌が感染して発症する場合もありますし、マラセチアと呼ばれる皮膚の常在菌が毛包の中で増殖することによっても起こってきます。
症状としては赤みを帯びた発疹や、膿疱を形成してくることが特徴です。
症状が軽度であれば、皮膚を清潔に保つことで通常は1週間ほどで軽快します。しかし、赤みが強い場合や悪化していく場合などは早めに皮膚科を受診して治療することが勧められます。
ニキビ
ニキビも同じように足の付け根にできることによって、痛い皮疹を作ることがあります。
ニキビはそもそも毛穴に皮脂がたまって炎症を起こした発疹のことです。皮脂腺が発達して皮脂が多すぎたり、毛穴の出口が詰まったりすることによって、毛穴の外に皮脂が出られずにたまることで発症します。
ニキビの進行具合によって種類が変化し、白ニキビ、黒ニキビ、赤ニキビ、黄ニキビなどがあります。