嘔吐物が緑色になる胆汁性嘔吐とは?胃液の色から分かること

嘔吐は、胃の強い収縮によって、胃の内容物が食道に押し上げられて口から出るものです。極めて不快な症状で、日常生活に少なからず支障をきたします。
嘔吐物が緑色だった場合には、何が起きたのかと慌ててしまうかもしれません。嘔吐物の色からどのようなことが分かるのでしょうか? ここでは嘔吐物が緑色になる胆汁性嘔吐を中心に解説します。
嘔吐物が緑色になることがある

嘔吐中枢は、頭・⾸の付け根の後部に位置する延髄にあり、胃や腸、⼼臓、肺などの内臓からの刺激を受けて、吐き気や嘔吐反応を⽣じさせます。
例えば、胃腸炎、頭痛、尿管結⽯などで、痛みが続くことで嘔吐中枢が刺激され、吐き気や嘔吐が認められます。気持ちの悪いものを⾒たり、嫌なにおいを嗅ぐことで、視覚や嗅覚が刺激されて、嘔吐反応を催すこともあります。
「吐き気がする、胸がむかむかする」などの症状がある場合は約7割が、逆流性食道炎、慢性胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などを含む消化器の疾患が原因と考えられています。
緑色の嘔吐物が、消化器疾患由来のものなのか、消化器以外の疾患が原因なのかを判断する必要があります。
消化器疾患には、例えば、急性胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃がん、虫垂炎、腸閉塞などが想定されます。
また、消化器疾患以外では、くも膜下出血、脳出血、脳腫瘍、心疾患(心筋梗塞等)など緊急性を要する疾患を鑑別します。
それ以外にも、薬剤の副作用、食中毒、ストレス(精神的嘔吐)などが考えられます。
嘔吐物が緑色になっている場合にも、⾼度の脱⽔状態を引き起こすリスクもあるため、専門医療機関を受診するように心がけましょう。
嘔吐物が緑色になる胆汁性嘔吐

嘔吐した際に、吐物が緑⾊の液体であった場合、胆汁を吐いている状態であり、胆汁が混じっている嘔吐物は苦味があり、通常黄緑色をしています。
特に嘔吐物が緑色の場合を胆汁性嘔吐と呼びます。胆汁性嘔吐の場合には、特徴的な濃い黄緑色の胆汁とともに放出されます。
通常、嘔吐物に含まれる胆汁の色は、胆汁が胃内部で留まっている時間に応じて、黄色から濃い緑色に変化します。胆汁が緑色の場合には、最近摂取した食品自体が原因の場合も考えられます。
胆汁性嘔吐を引き起こす主な原因は、二日酔いや食中毒、腸閉塞などの消化器疾患が考えられます。
嘔吐物(胃液)の色から分かること

嘔吐物(胃液)の色を観察することで、健康状態や病気の有無を推測できることがあります。
黄色の嘔吐物
嘔吐とは、食道を逆流して吐物が口から出ることです。
胆汁が混じっている嘔吐物は黄緑色をしていますし、黄色の嘔吐は主に胆汁の放出によって引き起こされるといわれています。
黄色の嘔吐物を引き起こす主な原因は、消化管の一部が狭窄を起こすことで、特定の物質が正常に通過できなくなることであると考えられます。
一般的に、胃の出口の部分である幽門部から腸の内容物が胃に逆流することは通常はありません。
腸液は胆汁のために黄色の色調を呈しているので、もし吐物の色が黄色の場合は腸から逆流していることになります。
嘔吐反応が強くて腸の消化液が少し混じることもありますが、腹部が張って強い腹痛を伴っている場合は腸閉塞などの病態を起こしている可能性があるので、早急に専門医療機関を受診しましょう。
茶色の嘔吐物
嘔吐物の色が茶色である場合は、大腸壁が閉塞所見を起こしている疑いがあります。
主に、慢性便秘や胆石、大腸ポリポーシス、大腸がんなどの腫瘍などが発症原因と考えられます。
通常、腸閉塞を起こすと、体内で生成された糞便物質が肛門へ排出することができずに、糞便性嘔吐を引き起こす場合があります。
傾向として、糞便性嘔吐物が液体で明るい茶色であればあるほど、消化管の閉塞度合いが強い状態であるといえます。
赤い嘔吐物
嘔吐物が真っ赤な血で染まる嘔吐反応(吐血)は、内出血した血液が凝固せずに嘔吐物に混入することが原因となります。
赤い嘔吐物を認める場合、胃や食道の潰瘍からの出血、あるいは食道静脈瘤が破裂した場合にもしばしば発生しますし、肝硬変などの慢性肝疾患の合併症であるケースが多く見受けられます。
黒色の嘔吐物の際よりも血液に近い赤色の吐物を認めた場合は、多量の出血を来している可能性があり、より緊急性が高い状態と考えられます。
万が一、鮮紅色の吐物に伴って、意識が遠くなって失神を起こす場合、動悸や冷汗を自覚する場合は、早急に救急要請をして、専門医療機関を受診しましょう。
黒い嘔吐物
真っ⾚な鮮⾎が出た場合と同様に、海苔の佃煮のような⿊い嘔吐物を認めた場合には、⾷道や胃、⼗⼆指腸など上部消化管からの出⾎を疑って、できるだけ早い段階で上部内視鏡検査を⾏う必要があります。
血液の成分である赤血球にはヘモグロビンが含まれますが、ヘモグロビンは鉄分を材料にして作られており、胃酸と混ざると酸化されて、自然と黒く変色します。
上部消化管の領域(食道、胃、十二指腸)から出血所見が起こった場合、血液が長く胃にとどまっているほど、胃酸で酸化されて、吐物は黒く変色して、コーヒーや炭、コールタールのような色合いになります。
病院を受診した方がいい嘔吐物の特徴

嘔吐があっても、必ずしも直ちに病院を受診する必要があるわけではありませんが、警戒すべき徴候や特定の症状には格段の注意が必要です。
具体的には、脱水の徴候(のどの渇き、口腔乾燥、尿が少量かまったく出ない、筋力低下や疲労感など)、頭痛、項部硬直、錯乱、意識レベルの低下、持続性の腹痛、腹部に触れたときの圧痛、腹部膨隆などです。
子供が嘔吐する際にも、激しく腹部を痛がっている、嘔吐物に血が混じっている、嘔吐物の色が濃い緑色である(胆汁性嘔吐)などの場合には、危険な兆候と考えられます。
それ以外にも、重篤な状態である可能性として、子供の顔色が悪い、意識が普段と比べておかしい、眠ってばかりいる際には、早急に最寄りのクリニックなどに問い合わせする必要度が上がります。
通常、嘔吐反応が頻回に引き起こされる、嘔吐のみならず下痢症状を伴っている場合には、脱水症になりやすくなり、脱水症になると顔色が悪くなり、尿量が自然と減少します。
嘔吐の合間に、少量ずつ何回かに分けてイオン飲料などの水分を与えることが大切であり、水分が十分摂取できずに、いつもと比較して明らかにぐったりしている状態であるようならば、病院で点滴治療を受けましょう。
突然嘔吐すると、迷⾛神経反射や起⽴性低⾎圧を合併して引き起こす可能性があり、窒息しないような体位で、すぐに横になって安静を保持することが重要です。
それでも嘔吐が続く場合には、精密検査や点滴治療などが必要となりますので、専門医療機関へ受診しましょう。
まとめ
嘔吐は⽇常的によくみられる症状のひとつですが、持続する場合や突然発症した場合には、思わぬ病気が隠れている可能性がありますし、十分に⽔分や栄養が取れなくなることで、命に関わる場合も少なくありません。
特に、気分が悪くて、吐いたら、嘔吐物がコーヒーや炭、コールタールのような黒色だった、あるいは新鮮な鮮紅色の血を吐いたという場合には、上部消化管(食道、胃、十二指腸)などの領域に出血を来す疾患がある可能性が高いと考えられます。
このような場合には自己判断で様子を見たりせず、早急に消化器内科など専門医療機関を受診して、症状の原因を調べてもらいましょう。
今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。