【漢方薬の解説】甘草の効能・副作用
甘草は私たちの日々の暮らしに深く根付いている身近な生薬で、多くの漢方薬にも配合されています。その一方で、甘草による副作用は漢方薬のなかではよく知られたものであり、また気を付けるべき副作用の1つでもあります。
そこでその効能だけでなく、副作用の重要性についても解説していきたいと思います。
目次
甘草の由来
甘草は、中国やヨーロッパに生息し、洋の東西を問わず紀元前から使われていました。別名「リコリス」とも呼ばれています。甘草は名前に「甘」という文字が含まれている通り、砂糖の150倍も甘いとされ、漢方薬のみならず甘味料、調味料としてお菓子などの食品にも使用されているのです。
意外と幅広い!甘草の効能
まずは甘草の効能を挙げてみましょう。
- 抗炎症作用
- 抗アレルギー作用
- 解毒作用
- 鎮痛作用
- 去痰作用
このように様々な作用があるため多くの漢方薬に含まれているのが特徴です。日本国内で販売されている漢方薬の約7割以上に含まれているほどです。
抗炎症作用があるのはなぜ?
甘草の主成分はグリチルリチンと呼ばれ、グルチルリチンは腸内細菌によってグリチルレチン酸に変化し吸収されます。グリチルレチン酸は体の中で分泌されるコルチゾールというステロイドホルモンを増加させます。このコルチゾールは、ストレスを受けた時に分泌されることで知られているストレスホルモンで、強力な抗炎症作用があります。そのため甘草にも抗炎症作用があるのです。
代表的な副作用は『偽アルドステロン症』
甘草の代表的な副作用としては、「偽アルドステロン症」が有名です。漢方薬の副作用の中でも頻度が高いとされています。偽アルドステロン症はアルドステロンというホルモンが増加していないにも関わらず、あたかもアルドステロンが出ているような症状が現れる病態です。
アルドステロンには、食塩であるナトリウムを溜め込み、カリウムを体の外に排泄する働きがあります。先に触れたコルチゾールが増えると、このアルドスロテン受容体に働き、アルドステロンと同じような働きをするため「偽アルドステロン症」と呼ばれているのです。
有名な副作用!偽アルドステロン症の主な症状
主な症状としては以下のものが挙げられます。
- むくみ
- 体重増加
- 血圧上昇
- 低カリウム血症
症状は服用後すぐに出る場合もあれば、3日程度または長期連用後に起こるなど様々なケースがあります。これらの症状が少しでも見られたら、すぐに服用を中止し医師や薬剤師にご相談ください。
知っておくと役立つ!低カリウム血症の症状
低カリウム血症の症状には、以下のものが挙げられます。
- 全身倦怠感
- 脱力感
- 高血圧
- 浮腫
- 動悸
- 息切れ
- 筋肉痛
- 筋力低下
- 四肢痙攣
- 手足のしびれ
また、循環器にも影響を及ぼすことがあり、不整脈に繋がる可能性もあります。さらに病院で処方される利尿剤にも低カリウム血症を起こすものがあるので、併用には気を付けましょう。発生頻度としては、長期連用や高齢者などで高くなる傾向にあります。定期的な血液検査をすることが副作用の早期発見につながりますので、きちんと受けるように心掛けましょう。
意外と知らない甘草の過剰摂取
漢方薬には甘草が含まれているものが複数あるため、数種類の漢方薬を併用する際には、甘草の量に注意を払う必要があります。また、甘草の量が少ないからと言って副作用が起こらないというわけではありません。甘草の副作用は、少量でも起こることが知られていますので注意しましょう。また風邪薬や胃腸薬などの市販薬に配合されていたり、さらには甘草エキス成分や抽出物は健康食品や食品の甘味料として醤油や菓子類などにも幅広く利用されています。漢方薬を含め、甘草を含む製品を気づかないうちに多量に摂取し、過剰摂取となっている可能性もあるので要注意です。
甘草は肌に良い!?
最近では甘草に美肌作用があることもわかってきおり、甘草に含まれるフラボノイドを抽出した成分が多くの化粧品に配合されています。また先に触れた甘草のグリチルリチン酸には抗炎症作用があるため、ニキビや肌荒れなどの炎症を抑える予防を目的として医薬部外品にも配合されています。
甘草が多く含まれている漢方
以下の漢方薬は、甘草が特に多く含まれる方剤です。何種類かを組み合わせて服用する際には注意しましょう。
・「甘草湯」
・「芍薬甘草湯」
・「甘麦大棗湯」
甘草の効能と副作用を理解して正しく服用しよう!
以上のように、甘草は古くから世界各地で使用され、多種多様な作用を有することから、漢方薬をはじめ様々な製品に配合されています。最近では内服のみならず外用としてもその活躍の場を広げています。利用価値がとても高い一方で、「偽アルドステロン症」のような注意を要する副作用があるのも事実です。そのため効能だけでなく、副作用についてもしっかりとした知識を頭に入れ、副作用と思われる症状が少しでも現れたら、自己判断せず早めに医師や薬剤師に相談しましょう。