小青竜湯(しょうせいりゅうとう)とは

漢方事典

「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)は花粉症、透明な鼻水のでる感冒によく使われます」

処方のポイント

発汗で寒気を体外排出する麻黄・桂皮、からだを温める細辛・乾姜、からだの潤い維持と止痛の芍薬・五味子、痰を除く半夏、消化墨を保護する甘草で構成されています。感冒初期のくしゃみ、透明の鼻水等の鼻症状に適応です。服用しても眠くならないので花粉症にも効きます。甘辛味で、温服が効果的です。

小青竜湯が適応となる病名・病態

保険適応病名・病態

効能または効果

1)下記疾患における水様の痰、水様鼻汁、鼻閉、くしゃみ、喘鳴、咳嗽、流涙。気管支喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、感冒。

2)気管支炎。

漢方的適応病態

1)表寒による寒痰の喘咳。

2)風水。すなわち、突然発生する全身浮腫と尿量減少で、表証を伴うことがあります。

小青竜湯の組成や効能について

組成

麻黄9白芍薬9細辛3乾姜3炙甘草6桂枝6五味子3半夏9

効能

解表散寒・温肺化飲

主治

外感風寒・水飲内停

温肺化飲

肺に停滞している寒性の水飲を除去する治法です。温薬を用いて肺を温め、寒飲を化す意味を指します。

中国では、東の方角に春の神様「青竜」がいると信じられていました。小青竜湯は、その名前にちなんだ漢方薬。春の雪解け水のような、さらさらとした鼻みずを治す働きがあります。アレルギーなどによる鼻みずや鼻づまりは、漢方では水のめぐりが悪くなることにより、みぞおちあたりの冷えとともに起こると考えられています。

小青竜湯は、交感神経を刺激して鼻づまりを改善する麻黄、体を温める生美、みぞおちに滞った水を排出する半夏、桂皮と組んで血行を促進する芳薬など、8種類の生薬からなる漢方処方です。

花粉症やアレルギーなどによる鼻炎症状に

小青竜湯は体を温めながら、発汗を促して水のめぐりをよくし、鼻水や鼻づまりなどの鼻炎症状を改善する効果があります。最近は、体がもっている防御機能に作用してアレルギー反応を抑えたり、鼻の粘膜の欠陥を収縮させて鼻づまりを改善することがわかってきました。

アレルギー性鼻炎や花粉症のなかでも、体力中程度またはやや虚弱で、薄い水様のたんを伴うせきや鼻みずが出るタイプに向いています。抗ヒスタミン剤など、眠くなる成分は入っていません。

端息など、主として肺症状に用いるが、高熱、空咳、黄痰などの肺熱症状には禁忌です。

小青竜湯は飲み始めてどれぐらいで効くの?

漢方薬には比較的短期間で効果があらわれやすいタイプと、徐々に症状の原因を抑え、じっくり症状を改善するタイプがあります。たとえば、鼻炎症状を抑えたい小青竜湯はすぐに効果があらわれやすいタイプ。女性の生理周期を整える温経湯などは、じっくり症状を改善するタイプといえるでしょう。

小青竜湯はいつまで飲めばいいの?

比較的短期間で効果があらわれやすいタイプは、症状が治れば服用をやめます。じっくり症状を改善するタイプは、まず1週間が目安。「とくに副作用もなく、なんとなく効いている」と感じたら、もう少し続けてみては。効果が感じられても、長期にわたり服用するかどうかは、医師または薬剤師に相談下さい。

解説

小青竜湯は体表に侵入した風寒の邪気を解表散寒法によって追い払うと同時に、体内の痰飲を温肺化飲法で取り除く働きをもつ処方です。

小青竜湯の命名

青竜は東方を守る木神で雨を招き万物を発育させることができます。大青竜湯は雨をよびよせるように、大いに発汗させる効能を持っている。小青竜湯は波浪の中に潜って体内の痰飲を取り除く力があります。本方は「大青竜湯」にくらべ発汗作用が劣るため、「小青竜湯」と名付けられました。

適応症状

◇悪寒・発熱・口不渇・無汗

外感風寒の代表的な症状であります。凝滞を主る寒邪が体表に滞って腠理を閉じると、体表をおおうべき陽気の流通が塞がれ、温煦作用が低下するため強い悪寒症状が現れます。無汗も腠理が閉塞されるため汗が外へ出られなくなる症状で、外邪(風寒)の侵入を示す特徴的な症状であります。正気と邪気が抗争するため、発熱の症状を軽く感じます。寒邪が津液を損傷することはまずないので、囗渴症状は現れません。

  • 腠理:主に皮膚と筋肉の間を指しており、汗の分泌を管理している組織です。
  • 邪気と正気:邪気とは外部から侵入する疾病の病因であり、外邪ともいう。この邪気に対する人体の防御力、抵抗力、再生力を正気と呼びます。

◇身痛・身重

寒は疼痛を主る邪気であります。寒邪が体表にあって気血の流れを留めると、「不通則痛で痛みが現れます。体内に痰飲が停滞していると、身体が重く感じられます。

◇浮腫

風寒の邪気が侵入すると肺の宣粛機能が失調し、水飲が皮膚、筋肉に溢れ出て浮腫がおこります。

◇胸痞

痰飲が胸部に滞って気機(気の運動)を塞ぐため、つかえ感、不快感があります。

◇咳嗽・喘息

表寒と水飲が肺の宣発・粛降機能を阻害し、気道をふさぐため、咳嗽、喘息、呼吸困難の症状が現れます。

◇舌苔白

陰邪の停滞を示す舌象であります。

◇脈浮

表証の存在を示す脈象であります。

小青竜湯は「麻黄湯」と「桂枝湯」を合方したものから、杏仁、生姜、大棗を除いて、乾姜、細辛、半夏、五味子を加えた処方です。麻黄と桂枝は「麻黄湯」の主な組成部分で、辛温の性質によって体表に停滞している風寒の邪気を発散させます。麻黄は宣肺作用によって喘をしずめ、利尿作用によって体内の水飲を除去します。生麻黄は解表散寒作用が強いです。表証(悪寒、発熱、無汗)がみられない咳嗽や喘息には、蜜炙麻黄を選ぶことが多いです。麻黄の使用量は9gとなっていますが、少量(3g)から徐々に増量していく方がよいです。

白芍薬と桂枝は、「桂枝湯」の主な組成部分です。両薬が協調して体表の陰陽を調節し、調和営衛の働きを果たします。桂枝は陽薬、白芍薬は陰薬で、防御機能を高めれば邪気の侵入を防ぐことができます。芍薬には収斂(しゅうれん)作用もあり、麻黄と桂枝による発汗の過多を抑えます。乾姜は大辛大熱の薬です。細辛との併用により陰性の痰飲をとり除くことができ、温裏薬として肺寒によって生じる咳嗽、薄くて多量の痰などの症状に対して効能があります。細辛は解表薬で、鼻竅を開く力が強く、鼻の症状をともなう表寒証に優先的に使われます。また麻黄、桂枝の解表作用を増強するほか、温肺化飲できるので、表証がみられなくても肺寒の痰飲に有効です。

原文では細辛の量は9gになっているが、「細辛(の使用量)は一銭(3g)を過ぎず」といわれ、煎じ薬の場合は3g以内に抑えた方がよいです。五味子は酸温の楽性を持つ収斂薬です。肺に帰経し、肺を収斂(肺気が消耗しないようにひきしめる)し、咳をしずめる、強い咳、慢性の咳嗽、喘息に用いることが多いです。五味子、白芍薬で収斂し、麻黄、桂枝で発散します。この4味によって収と散を制約しあい、肺の宣発・粛降機能を調節します。半夏は化痰の常用楽で、特に寒痰に対して配合されることが多いです。体内の痰飲を苦温の性質で乾燥させて除去します。大景の痰飲に適しております。甘草は主に諸薬を訥する目的で蜜炙したものを使用します。

誤和営衛

営衛不和に対して使用される治法です。営は汗などの陰液、衛は体表を防衛する陽気を示します。営と衛の関係が失調すると風邪をひきやすく、汗をかきやすいなどの症状がみられます。

臨床応用

◇外感風寒証

辛温解表薬の麻黄、桂技とともに温肺化飲薬も多く配合されており、痰飲をともなった表証(悪寒・発熱のある咳嗽、喘息)に適しています。

◇咳嗽・喘息

肺と気管支の症状に用います。表証がみられなくても使用できます。痰の色は白く質が薄く量が多い寒痰に適しています。温剤であるため黄色く粘った熱痰の症状には用いてはなりません。本方は慢性の咳嗽ばかりでなく、解表薬が配合されているので、急性発作の喘息にも対処できます。老年性の慢性気管支炎には麻黄を蜜炙することが多いです。

喘息がひどく、発熱、痰黄、舌紅など化熱症状があるとき+「五虎湯」(清肺平喘)

◇鼻炎

麻黄、細辛は宣肺開竅作用があるので肺気不宣による鼻塞を治療でき、桂枝、芍薬は営衛を調和することによって鼻炎の発作を予防できます。臨床では、特にアレルギー性鼻炎(大量の透明な鼻水、クシャミ、鼻塞など)に用いられます。ただし、方剤の組織が温性であるため、黄色い鼻水、口渇、舌紅、苔黄など肺熱による鼻疾患には適していません。

注意事項

本方剤は辛温、燥の特徴があるので、長期使用は避けるべきです。服用していて、咽痛、虛汗、口鼻の熱感、動悸、眩暈、のぼせ、イライラ、便秘など虚火上炎の症状が現れたときは停止しなければなりません。

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