更年期の頭痛は「気血」の巡りが原因?漢方を取り入れた対処法
更年期に多く見られる症状の一つに「頭痛」があり、同時に「のぼせ」「肩こり」「イライラ」などを伴うことも多いです。ひどくなると仕事や家事にも悪影響を及ぼすこともあり、何度も繰り返す場合もあるため困った症状の一つです。
このような更年期に起こりやすい頭痛の症状を改善するためには漢方を使う方法もあります。今回は更年期の頭痛について漢方的な解説とともに、漢方の上手な取り入れ方についても紹介していきます。
目次
更年期に起こりやすい頭痛とは?
50歳前後の閉経を迎える時期に訪れる更年期にはさまざまな不快な症状が現れます。
その症状の中でも頭痛はよく見られる症状の一つであり、主に次のタイプの頭痛に分けることができます。
①緊張性頭痛
②片頭痛
それぞれの原因と症状の特徴について簡単に確認しておきましょう。
①緊張性頭痛
緊張性頭痛とは頭の筋肉が緊張することで頭が締め付けられるような痛みがあります。脈を打つような痛みはなく、日常動作や光に反応して悪化するような特徴もありません。リラックスしたり、軽めの運動、入浴など温まることによって症状が和らぐことも多いです。
原因としては筋肉による血行不良が痛みを引き起こすと考えられ、首や肩のコリも伴うことがあります。特に更年期の身体の変化に起因するわけではなく、疲労、血行不良、親の介護や仕事のストレスなどを抱えていることが症状を悪化させる要因になっている可能性があります。
②片頭痛
偏頭痛の場合には頭の片側が痛むことが多いのが特徴で、血管が脈打つような症状や吐き気などを伴うことも多いです。日常的な動作や光などに反応して悪化することも特徴です。また女性の場合には月経との関連が深く、月経前になると悪化する人もいます。エストロゲン分泌と関係があり、閉経後には改善すること多いと言われています。
漢方的に考える更年期に多い頭痛の原因
頭痛の原因について、漢方では「気血水」の異常として捉えます。「気血水」のいずれの要素に異常が起きても頭痛が起きることがありますが、特に更年期に多く見られるのが「気」が逆流した状態の「気逆」による頭痛や「血」の巡りが悪くなっている「血瘀」による頭痛です。
「気逆」による頭痛
「気」は上から下へ巡っているのが正常な状態ですが、ストレスなどによって「気」が上の方へ逆流している状態を「気逆」といいます。「気逆」では頭痛の他にもイライラする、のぼせ、めまいなどの症状が起きることがあります。
「肝」が乱れると「気」の巡りも悪くなりがちであり、片頭痛は「肝」のトラブルによる症状として捉えることができます。
「血瘀」による頭痛
一方で、「血瘀」は血の巡りが悪くなっている状態です。血が部分的に滞っているため、頭痛の他に肩こりやシミが多い、アザができる、月経痛などを伴いやすいという特徴があります。血の巡りの悪さが原因であるため、ストレッチなどにより血行を促すことで改善することが多いです。緊張性頭痛も「血瘀」が絡んでいると考えることができます。
更年期の頭痛の対処法
頭痛が起きた時には痛み止めを飲んで痛みを抑えるという方法もありますが、セルフケアを行うことも大切です。頭痛のタイプによって対処法が異なるので、間違わないようにすることが大切です。
緊張性頭痛の場合は血行不良を改善し、筋肉をほぐすようなセルフケアが効果的です。同じ姿勢が長時間続いているようならばストレッチを行なったり、日常的に軽めの運動を取り入れるのもおすすめです。痛みが落ち着いている時であれば、ゆっくりと入浴して体を温めるだけでも筋肉の緊張が和らぐでしょう。
一方で、片頭痛の場合には体を動かすのは逆効果です。暗くて静かな部屋で安静に過ごしましょう。アルコールやカフェインの摂取は控えるようにして、痛む部位を冷やしてあげると良いでしょう。どうしても辛い場合は専用の頭痛薬や漢方薬を使うことが勧められます。
更年期の頭痛を改善する漢方薬
更年期は約10年ほど続くこともあり、繰り返す頭痛に悩まされることも多いです。このような慢性的な状態を改善するには漢方薬も役に立ちます。西洋薬の痛み止めと併用して使うこともできるので、痛みをコントロールするために取り入れるのも手です。
効果を高めるには体質や頭痛のタイプによって適した漢方薬を選ぶことが大事です。具体的に頭痛によく使われる漢方薬の一部を紹介します。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
冷え、肩こり、めまい、頭重感などの症状ある場合に用いられる、婦人科系の漢方の代表的な処方です。「血」と「水」の巡りが悪い状態を改善します。生理不順や生理中に貧血になりやすい人などにも適しています。
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
イライラして、便秘がち、のぼせ、高血圧などの症状がある人に用いられる漢方薬です。「気逆」を改善することで、イライラを鎮め、また血の巡りを良くすることで「血瘀」によって起こる頭痛や便秘などの症状も改善します。生理前や生理中に痛みが出やすい人にも適していて、生理痛を軽減する効果も期待できます。
葛根湯(かっこんとう)
更年期に限らず筋肉のコリによる頭痛を改善する効果があります。風邪の初期症状によく用いられることで知られていますが、筋肉のコリを温めてほぐす効果がある漢方薬です。
半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
体力があまり無いタイプで、胃腸が虚弱な方の頭痛、めまい、立ちくらみに効果のある漢方薬です。むくみや冷えなどの水はけの悪い「痰湿」がある人に適しています。
呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
身体の内部が冷えてしまい「気」や「血」「水」の巡りを邪魔していることが原因の頭痛に対して用いられる漢方薬です。冷えが入りやすい側頭部や身体の側面の痛みに効果があり、側頭部を中心に症状がでやすく、吐き気を伴いやすい片頭痛にも処方されることがあります。胃腸のはたらきを整える作用もあるため胃腸が弱い方に向いています。
セルフケアと漢方で更年期を乗り越えよう
頭痛の症状が辛くて何も手に付かないという状況に悩んでいるのだとすれば、一刻も早く何かしらの対処を始めることが必要です。頭痛のせいで色々なことを諦めてしまう前に、自分の体質や症状を元に原因の把握をしてみましょう。
簡単なセルフケアで改善できる場合もあれば、漢方薬や西洋薬の痛み止めを上手に取り入れることで症状をコントロールしやすくなることもあります。辛い症状を我慢せずに早めの対策を行なって、更年期をうまく乗り切っていきましょう。