いらいらして便秘がちの人に桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
「桃核承気湯はいらいらして便秘がちの人によく使われます」
処方のポイント
血行阻害物質とたまった熱を大便により体外排出する桃仁。大黄の組合せを中心に、からだを温め血行を促す桂皮、瀉下作用の芒硝、消化器系を保護する甘草で構成されます。生理痛、便秘、のぼせ等の症状に適応します。男女問わず、圧迫すると痛みが増す下腹部痛にも。甘苦味で、温服が効果的です。
目次
桃核承気湯が適応となる病名・病態
保険適応病名・病態
効能または効果
比較的体力があり、のぼせて便秘しがちなものの次の諸症:月経不順、月経困難症、月経時や産後の精神不安、腰痛、便秘、高血圧の随伴症状(頭痛、めまい、肩こり)。
漢方的適応病態
1)下焦の血瘀。すなわち、下腹部の痛みや圧痛あるは抵抗、不正性器出血、月経困難、便秘などの症候があり、下肢の冷え、下腿部静脈怒張、外痔核など、あるいはのぼせ、頭痛、肩こり、鼻出血、不眠、動悸などを伴うこともあります。
2)太陽病蓄血症。すなわち、発熱性疾患の経過にみられます。下腹部がかたく脹つて痛みます。圧痛、抵抗、便秘あるいはタール便、尿は正常か血尿不正性器出血などの症候で熱は夜間に高くなり、甚だしい場合には意識障害や狂躁状態を呈します。
桃核承気湯の組成や効能について
組成
大黄12芒硝6炙甘草6桃仁12桂枝6
効能
破血下
主治
下焦瘀血
〇破血下瘀:瘀血を下から力強く除去する治法です。破血は活血、化瘀よりも作用が強いです。
解説
桃核承気湯は瘀血と熱邪が下焦に蘊結した病証を治療する主要処方です。
適応症状
◇少腹疼痛
瘀血と熱邪が結合して少腹部(下腹部の両側)に停滞することにより、「不通則痛」で疼痛が現れます。
◇無月経・生理痛
瘀血が凝滞して「不通則痛」となり、月経痛が見れます。瘀血が強いときには無月経になります。
◇便秘
亢進した熱邪が体内の津液を損傷するため腸燥便秘が現れます。
◇脈沈渋実
沈脈は疾病の部位が下部であることを示し、渋脈は瘀血により血行が悪くなっていることを示し、実脈は邪気の亢進を示します。桃核承気湯は寒熱併用の処方ですが、寒性薬が主です。「調胃承気湯」の構成薬は通便作用により三焦の瘀熱を下から除去します。大黄は桃仁の活血作用を増強することができ、芒硝は軟堅散結作用により停滞している便を軟らかくし、大黄を補佐しています。芒硝には潤燥作用もあり、乾燥している腸を潤し通便させます。炙甘草は胃を保護し、本方主成分の強烈な性味を緩和します。桃仁は主薬です。通便作用がある強力な破血行瘀の薬で、瘀血と便秘が同時にみられる症状に最優先されます。桂枝はその温性によって、瘀血を動かし、血脈の運行を改善します。
臨床応用
◇瘀血証
活血破瘀の作用に優れているので、瘀血が存在する実証の諾病状(打撲損傷、月経、、順、子宮筋腫、無月経、生理痛、急性内性器炎など)に用いられます。腹痛を主症状として考えられた組成であり、病因に応じて他の処方を併用します。
〇腹脹する(気滞とき+「四逆散」(疏肝理気)
〇月経の量が少なく、色が薄い(血虚)とき+「四物湯」(養血活血)
〇帯下が黄色く、濃い(湿熱內蘊)とき+「竜胆瀉肝湯」(清肝瀉火、利湿)
◇出血証
瘀血と血熱によって生じた出血症状(例えば鼻血など)に用いる。瘀血を取り除き新血を生み出し、血の運行を正常化して出血を治療します。
◇便秘
通便作用と活血作用があるので特に月経不順、生理痛、腹痛、舌が暗いなどの瘀血症状をともなう便秘に用いることができます。
◇頭痛
桃核承気湯の下降の効能を利用して、瘀血、または邪熱の上昇による頭痛、眩暈、目の充血、歯痛などを治療できます。
注意事項
桃核承気湯は攻下の作用が強いので妊婦あるいは脾虚による下痢の患者には禁忌です。