シニア世代の女性を襲う舌のしびれと灼熱感の症状…「舌痛症」って何?

体験談

なんだか舌がピリピリ、ヒリヒリとして舌が焼けるようなしびれや痛みを感じることがある、舌がしびれる不快な症状が続いて味覚を感じづらくなってしまった…。
閉経後の50〜60代の世代の女性のなかには、このような「舌のしびれ」に悩んでいる方も少なくないのではないでしょうか。

こうした自分ではどうにもならないつらい症状の緩和や体質改善には、漢方薬がよく効くことをご存知でしたか? 
「健タメ!」では、読者からの体験談をもとに、お悩みに関する原因や対処法を医師や薬剤師がお答えしていきます。

今回は「舌のしびれ」をテーマに、薬剤師の竹田由子先生にお話を伺ってみました。 

ピリピリ、ヒリヒリ…焼け付くような舌のしびれと痛みが起こる原因は?

芳江さん(62歳女性)、主婦の方からご質問をいただきました。

数年前からでしょうか、なんだか舌がピリピリとしびれるような妙な刺激を感じるようになったんです。
最初は食事のときに舌をうっかり噛んでしまったのか、もしかしたら口内炎ができているのかな、などと考えてあまり気にしないようにしていました。でもそのうちに、更年期以降ダラダラとひきずっている気持ちの落ち込みや焦燥感も相まって、何か大変な病気の前兆なのではないかと、急に気にかかり始めたんです。
慌てて内科や皮膚科、歯科医に診察してもらうも何も異常なし。納得できなくて少し遠くの口腔内科まで行くと、「もしかしたら舌痛症かもしれませんね」とのこと。
ようやく診断名らしきものを教えていただいたことで心が落ち着いたのもつかの間、この舌のしびれは精神的な面からの影響の強い症状だそうで、治療というよりはストレスを溜めないことや生活改善の指導を受けるばかりで、あまり解決にはならず…。
最近ではピリピリとしたしびれに加えて、舌の中央が熱を持ったように痛むこともあって、つらくて仕方がありません。
どうにかしてこの症状を改善したいのですが、何か良い方法はないものでしょうか?

ご質問ありがとうございます。
舌痛症による舌の痺れが起こるメカニズムはまだ解明されていない部分も多く、症状を感じるにもかかわらず明確な治療法がないため、つらい気持ちになってしまいがちですよね。
今回は舌のしびれの原因や改善方法について詳しくお伝えしていきましょう。

精神的ストレスや自律神経の乱れが舌のしびれの原因に

明らかな疾病がないにもかかわらず、舌がピリピリとしびれるような症状がある場合、それは中高年女性に多く見られる「舌痛症」によるものかもしれません。
舌痛症とは、舌そのものや神経、脳に異常がないにもかかわらず痛みやしびれなどの不快な感覚が繰り返し生じるものです。
発症のメカニズムは解明されていないものの、精神的なストレスや強いショック、ホルモンバランスの乱れからくる自律神経の失調など、さまざまな要因が関与していると考えられています。
また、舌のしびれは舌痛症以外にも、ガンや脳疾患など重篤な病気のサインである可能性もあります。舌に異変を感じたりその他の全身症状をともなう場合は自己判断せず、必ず医師の診断を受けるようにしましょう。

東洋医学では、舌痛症の症状は五臓のうちの自律神経をつかさどる「肝(かん)」や胃腸の衰えから体に「熱邪(ねつじゃ)」が侵入して生じると考えられています。

次の章ではこのような「舌のしびれ」を改善するための具体的な方法をお伝えしていきます。

舌のしびれを改善するセルフケア3選

1.生活のリズムを整えて心身の健康を保つ

舌痛症による舌のしびれや痛みは、精神的ストレスやホルモンバランスの変化による自律神経失調による影響が大きいと考えられています。
症状を改善するためには、過労やストレスを避けて十分な休養と栄養バランスのとれた食事をとることや、適度な運動を心がけて生活のリズムを整えることが重要です。
さまざまな悩みによって心身の疲労が激しいときには、ひとりで抱え込まず、家族や身近な方に相談し、心の負荷を軽減するようにしてみましょう。

2.栄養不足や貧血を改善する食生活を!

50〜60代の閉経期以降の世代では、貧血やストレスによる食欲の低下などから、健康の維持に必要な栄養素が足りなくなることで舌のしびれの症状や味覚異常、口内環境の悪化が生じることがあります。
タンパク質やミネラル、ビタミンをバランス良く取り入れるのはもちろん、特に亜鉛や鉄分、ビタミンB12などの栄養素を意識して補い、貧血や口内の乾燥、味覚異常の改善をサポートするように心がけましょう。

3.口内の乾燥を避け、噛み締め癖を改善する

舌痛症による舌のしびれや痛みがある場合、口の中が乾燥するドライマウスの症状をともなうことが多いようです。こまめな水分補給で口内の潤いを保ち、定期的に歯科検診を行なって歯科疾患の予防を心がけ、口腔内を清潔に保つようにしましょう。
また、歯のかみしめや食いしばりの癖があると、舌が緊張したり歯が舌に当たって刺激してしまい、舌に痛みが出る場合があります。こうした癖がある場合は、日頃から歯を噛み締めていないか意識して癖を改善することも症状の悪化を防ぐのに有効です。

根本的な体質改善には漢方薬が効果的!

舌のしびれを改善するためには、セルフケアや医療機関での治療に加えて、体質の改善を目的としている漢方薬の服用もオススメです。

特に、今回の相談者様のような症状に悩む方に適した漢方薬は、白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)です。体の熱を冷まして口の渇きを改善し症状を和らげていきます。
また、また、ストレスが強く、舌の痛みに加えて口の中に苦みも感じるようであれば、柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)が体の中の熱を冷まして、心を落ち着けてくれるのでオススメです。
一方、舌の痛みに加えてげっぷやしゃっくりなどの胃腸症状も伴い、ストレスも感じているようであれば、胃腸の働きを整えるだけでなく、不安や不眠などにも用いられる半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)が良いでしょう。

心身の疲労を解消して生活のリズムを整えましょう

今回は、舌のしびれの改善方法や漢方薬をご紹介してきました。
ストレスや自律神経失調の影響が現れやすい舌のしびれの症状を改善するには、心身の疲労を溜め込まず、しっかり休養して栄養バランスのとれた食事をすることが大切です。
生活のリズムを整え、口腔内の環境を整えることを意識して生活しましょう。

こうした舌のしびれにまつわる悩みには、漢方薬が大きな効果を発揮した例もたくさんあります。セルフケアを試してもなかなか改善しない場合は、ぜひお近くの漢方医や漢方薬局に相談してみてくださいね。

竹田由子

薬剤師 竹田由子(たけだゆうこ) 臨床薬学専門。病院で10年以上医薬品情報室に長年従事し、医薬品に関する情報に精通。 元漢方・生薬認定薬剤師、薬膳漢方マイスター。 漢方の活用で月経痛時の鎮痛剤を減量できた自身の経験から「日常の不調はまず漢方」をモットーに体の不調を我慢する女性へ対し情報発信している。

プロフィール

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