目の充血は病気のサイン?考えられる脳の疾患とは

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目が充血してもすぐに病院に行こうとはならないはずです。なぜなら目の充血は自然に治ることが多いからです。

ただし、目の充血が短期間で頻繁に起きる場合は注意が必要になってきます。ここでは充血などの目のトラブルに関連した脳の病気について詳しく見ていきましょう。

目の異常は脳の病気のサイン?

目の充血は、疲労や目の打撲、目に刺激があった場合や、アレルギーなどが原因で起こります。しかし、これらの目の充血は自然に治るものが多いです。

目の充血などのトラブルが短期間で何度も繰り返す場合は注意が必要です。例えば、次のような病気のサインの可能性もあります。

硬膜動静脈瘻

硬膜動静脈瘻は、硬膜の動脈と静脈が、毛細血管を介さずに直接つながってしまった状態をいいます。圧が高い血流が動脈から静脈へと直接流れるために、静脈の圧が上がってしまい、脳へ血液が逆流してしまいます。

脳の血管に逆流すると脳がうっ血して腫れ上がったり、脳梗塞になってしまうことがあります。重度になると脳出血をきたすこともあります。

硬膜動静脈瘻は脳動静脈奇形の一種であり、人口10万人あたり年間0.15人の発生率となっています。発生部位によって分類され、欧米では横・S状静脈洞が発生部位として多いですが、日本では海綿静脈洞部が多いです。

内頸動脈海綿静脈洞瘻

眼窩の後ろ、脳の下側に海綿静脈洞と呼ばれる、脳からの静脈が集まってくる部分があります。

この海綿静脈洞には眼球と眼窩の静脈も流れ込んでいます。この海綿静脈洞の内部を通る内頸動脈に硬膜動静脈瘻が発生すると発症します。症状としては拍動性眼球突出、結膜充血・浮腫、拍動性耳鳴が三徴として有名です。

複視や頭痛も高頻度に見られます。結膜充血は結膜炎のときに見られるような毛細血管の充血ではなく、結膜静脈の怒張であるため、よく観察すると1本1本の静脈が累々と拡張しているのがわかります。

また、結膜浮腫は結膜が水ぶくれのように透明なゼリー状に膨隆した状態で、充血とはまったく異なる症候となります。

時に結膜症状がなく外転神経麻痺や動眼神経麻痺が単独で生じることもあり、複視がみられます。これらの眼球突出や結膜充血・浮腫は海綿静脈洞圧が亢進することによって生じます。

静脈血の逆流が強くなると、脳出血や失明などの重篤な症状を引き起こす可能性もあります。症状が重い場合は血管内治療や放射線治療が必要となります。

くも膜下出血

脳出血の一つであるくも膜下出血は、発症すると死亡率が非常に高いとても怖い病気です。処置が遅れると再出血の危険性もあり、また後遺症などのリスクもあります。

くも膜下出血が発症する原因としては脳動脈瘤と言われる血管の膨らみがある日突然破裂することです。頻度は人口10万人あたり年約20人発症するとされており、好発年齢は50〜60歳で、女性が多いです。

危険因子として高血圧・喫煙・多量の飲酒・家族歴が挙げられます。近年、くも膜下出血には特徴的な前兆がいくつかあることがわかっています。

くも膜下出血の前兆の特徴的な症状として、血圧が激しく上がった下がったりすることがあります。また、急な頭痛を自覚する人も多く、警告頭痛とも呼ばれます。これは起こらないこともありますし、その強さもさまざまです。

他にも目の痛みやものが二重に見える複視、まぶたが下がるなど、めまい、吐き気を催す人もいます。頭のなかに違和感を覚える人もいます。

こうした前兆症状はしばらくすると治ってしまいます。しかし、その数日後に大きさくも膜下出血をきたすことも少なくありません。頭の中で何か異様なことが起こっていると感じたり、前兆症状があったら、すぐに収まってしまった場合も、できるだけ早く医療機関を受診するようにしましょう。

脳梗塞

全ての脳梗塞に前兆が現れるわけではありませんが、脳梗塞が発症する前兆が現れることがあります。それを一過性脳虚血発作と言います。

一過性脳虚血発作は、一時的に血液の流れが悪くなることで運動・感覚麻痺やしびれ、呂律がうまく回らない、視覚障害などの症状が一時的に現れ、症状は24時間以内に改善します。

この一過性脳虚血発作で現れる症状の一つに一過性黒内障という目の異常があります。一過性黒内障は、突然左右どちらかの視野に黒い点がいくつか出現して、視野の一部が欠損したり、左右どちらかにカーテンが降りるように視力が急に低下したりする発作のことです。

この他にも目の異常として、左右どちらかの視野が見えなくなる半盲や、両目で見ると物が二重に見える複視が現れることもあります。この一過性脳虚血発作が発症しても放置しておくと、脳梗塞を発症するリスクが高いと言われています。一過性脳虚血が発症した場合も、急性期脳梗塞と同じように治療をする必要があります。

群発頭痛

群発頭痛は慢性頭痛のうちのひとつとされています。慢性頭痛としては主に片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛に分かれます。

群発頭痛はこの3つの中でも発症率が特に低い頭痛となっており、有病率は0.056%から0.4%程度(1000人に1人程度)と報告されています。特に20~40代の男性で多く見られます。

群発頭痛では、どちらか片方の眼の奥がえぐられるような激痛が起こります。眼の充血、涙や鼻水が止まらないほどの症状を伴うこともあります。自殺頭痛という別名もあるほどの頭痛で激痛です。

症状は1~2か月間ほど毎日のように起こり、この期間を群発期と呼びます。群発期が終わると数か月から数年にわたって痛みがない時期が続きます。

頭痛が起きやすいタイミングとしては、アルコールを摂取したとき、喫煙をした時、刺激物を摂取したとき、ヒスタミンやニトログリセリンなどの薬を内服した際などが挙げられます。

いかがでしたでしょうか。目の充血が自然に治るのであれば、医療機関を受診する必要はないですが、目の充血が頻繁に起きたり、目の充血と同時に頭痛や痛み、複視などが出現した際は、すぐに医療機関を受診して検査を行いましょう。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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